方式別の目安

方式準備を含む全体代表交代前後の引き継ぎ
親族内承継5〜10年1〜3年
社内承継(MBO)3〜7年1〜2年
第三者承継(M&A)1〜3年6か月〜2年

親族内が最も長いのは、後継者の育成に時間がかかるためです。逆にM&Aが短いのは、買い手側にすでに経営の体制があるからです。

期間を決める4つの要素

1. 技能の集中度

特定の人にしか作れない商品があるほど、引き継ぎは長くなります。配合や火入れの判断を移すには、実際に何度も作らせて確認する必要があるからです。

逆に、多能工化が進み手順が文書化されている工場では、引き継ぎ期間は大きく短縮できます。職人の技をどう引き継ぐかへの着手が、そのまま期間の短縮につながります。

2. 取引先との関係の深さ

社長個人の信頼で成り立っている取引が多いほど、期間は長くなります。年1回しか会わない相手なら、引き継ぎに数年かかることもあります。

3. 数字の見える化の程度

品目別の原価が整備されていれば、後継者はすぐに値決めができます。整備されていないと、先代に聞きながらの期間が長く必要になります。

4. 季節性

食品製造業に特有の要素です。年間の繁閑差が大きい工場や、季節商品を扱う工場では、最低でも1年(一巡)は必要です。夏場しか作らない商品の引き継ぎは、夏を1回経験しないと終わりません。

M&Aの場合の引き継ぎ

M&Aでは、譲渡後に先代が一定期間残ることが一般的です。この期間と役割は、最終契約の中で合意します。

相場としては半年〜2年ですが、次の点で変わります。

  • 買い手が同業で、食品製造の知見があるか
  • 買い手が経営人材を送り込めるか
  • 売り手側に工場長・製造部長といった実務の中核が残るか

3番目が特に重要です。実務を担う人が残るなら、先代の残留期間は短くて済みます。買い手が最も恐れるのは、キーパーソンがまとめて抜けることです。PMIの進め方で扱っています。

長く残ればよいわけではない

期間は長ければよいというものではありません。先代が残りすぎると、後継者が決められなくなり、従業員も誰の指示を聞くか迷います。

むしろ重要なのは、期間の終わりを最初に決めておくことです。「2年間、週2日、対外の同行が中心」といった形で具体化しておけば、双方が動きやすくなります。設計の仕方は引退後に会社へどう関わるかにまとめました。

期間を短縮したいとき

健康上の理由などで時間が取れない場合、次の順で手を打ちます。

  1. 止まると困る情報(配合・工程条件・取引条件)を最優先で文書化する
  2. 工場長・製造部長を強化し、実務の中核を厚くする
  3. 取引先への同行を集中的に行う(半年で全先を回る)
  4. 外部の顧問や専門家を置いて、後継者を補う体制をつくる

1番目が最も効果的です。文書があれば、口頭での引き継ぎに要する時間は大きく減ります。引き継ぎ資料の作り方を参照してください。