食品工場でよくある個人名義の資産

  • 工場の土地・建物(最も多く、金額も大きい)
  • 倉庫、資材置場、駐車場
  • 配送用トラック、営業車
  • フォークリフト
  • 一部の製造設備(個人で購入したもの)
  • 商標・意匠
  • 電話番号、ドメイン、SNSアカウント
  • 会社が使っている自宅の一部(事務所として)

金額の小さいものでも、承継の場面では同じように問題になります

何が問題になるのか

1. 相続で分散する

個人名義である以上、相続財産です。遺言がなければ法定相続分で分かれます。会社が使い続けられる保証がありません工場・土地が個人名義のときの相続対策をご覧ください。

2. M&Aで必ず指摘される

法務デューデリジェンスで確認されます。買い手から見ると、「引き継いだ後も使い続けられるか」が不明な状態です。

多くの場合、次のいずれかが取引の条件になります。

  • クロージングまでに会社へ移転する
  • 適正な条件の賃貸借契約を締結する
  • 買い手が別途買い取る

法務デューデリジェンスで扱っています。

3. 税務上の問題が生じることがある

無償で貸している、相場と大きく異なる賃料である、といった場合、税務上の取扱いが問題になることがあります。

4. 保険や事故対応で困る

個人名義の車両を業務で使っている場合、事故が起きたときの保険の適用や責任の所在が問題になります。

洗い出しの手順

手順1:会社が使っているものを全部書き出す

工場を歩いて、事業に使っているものを列挙します。土地、建物、設備、車両、備品。

手順2:名義を確認する

  • 不動産:登記事項証明書を取得する
  • 車両:車検証を確認する
  • 設備:固定資産台帳と照合する(台帳にないものは個人名義の可能性)
  • 商標:特許情報プラットフォームで検索する
  • 電話・ドメイン:契約者名義を確認する

固定資産台帳にない設備が工場で稼働しているのは、よくある発見です。

手順3:一覧表にする

資産名義契約の有無賃料対応方針
工場土地先代個人なし契約を締結する
配送トラック2台先代個人なし会社へ名義変更
商標「◯◯」先代個人会社へ移転

対応の選択肢

選択肢1:会社に移す

売買または現物出資によって会社の資産にします。

  • 利点:相続財産から外れる。株式に含まれるため承継しやすい
  • 注意:個人に譲渡所得課税。会社に取得資金が必要。不動産なら取得税・登録免許税
  • 影響:会社の純資産が増え、株価が上がる可能性がある

車両や設備など金額の小さいものは、迷わず会社に移すのが実務的です。

選択肢2:賃貸借契約を整える

不動産のように移転コストが大きいものは、契約を整える対応が現実的です。

  • 契約書を作成する(期間、賃料、修繕負担、解約条件、更新)
  • 賃料を適正な水準にする
  • 実際に支払い、記録を残す

期間を長期にし、貸主から一方的に解約できない形にしておくと、承継やM&Aの際に事業の継続性が担保されます。工場不動産を分けて残すをご覧ください。

選択肢3:遺言で後継者に相続させる

移転もせず賃貸借も変えない場合、最低限これだけはやってください。何もしなければ分散します。遺言書の作り方を参照してください。

優先順位

  1. 商標:会社へ移転する(費用が小さく、影響が大きい)
  2. 車両・設備:会社へ名義変更する
  3. 不動産:賃貸借契約を整える(移転は税務を検討したうえで)
  4. 電話・ドメイン:契約名義を会社に変更する

1と2は数か月でできます。3は判断に時間がかかるので、まず契約を整えることから始めてください。

いつやるか

調べること自体は数日でできます。問題が見つかったときの解決に時間がかかるので、承継を考え始めた時点で着手する価値があります。

※ 資産の移転や賃貸借に関する税務・法務の取扱いは個別の事情によって異なります。実行にあたっては税理士・弁護士等の専門家に必ずご確認ください。