基本の計算
譲渡益 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
この譲渡益に対して課税されます。非上場株式の譲渡所得は、他の所得とは分けて計算される仕組み(申告分離課税)が採られています。
税率は法令で定められており、改正されることがあります。最新の税率は税理士に確認してください。
取得費とは
その株式を取得するのに要した金額です。具体的には次のようなものです。
- 設立時に払い込んだ出資金
- 増資に応じて払い込んだ金額
- 他の株主から買い取った場合、その購入代金
- 相続・贈与で取得した場合、原則として前の所有者の取得費を引き継ぐ
取得費が分からない場合
何十年も前に設立した会社では、払込金額を証明する資料が残っていないことがあります。
この場合、譲渡価額の一定割合を取得費とみなす取扱いがあります。ただし、実際の取得費がそれより大きい場合は不利になります。
探す価値のある資料は次のとおりです。
- 設立時の定款、登記事項証明書
- 払込金保管証明書
- 過去の法人税申告書(別表二で株主構成の推移が分かる)
- 増資時の議事録
- 過去に株式を買い取った際の契約書
M&Aを検討し始めたら、まずこれらを探してください。取得費が大きいほど税負担は軽くなります。
譲渡費用とは
株式を譲渡するために直接要した費用です。M&Aアドバイザーへの報酬などが該当することがありますが、どこまでが譲渡費用に当たるかは個別の判断になります。
領収書と、何に対する費用かが分かる資料を保管しておいてください。
相続で取得した株式を譲渡する場合
相続によって取得した株式を、相続税の申告期限から一定の期間内に譲渡した場合、相続税額の一部を取得費に加算できる特例があります。
相続後にM&Aを検討する場合、この期間内に譲渡できるかどうかで税負担が変わります。時期の判断材料になります。
他の株主がいる場合
譲渡対価は持分に応じて各株主に配分され、それぞれが自分の譲渡益について申告します。
注意すべきは、株主ごとに取得費が異なることです。設立時からの株主、後から買い取った株主、相続で取得した株主。それぞれ税負担が変わります。
役員退職金との組み合わせ
M&Aでは、譲渡対価と役員退職金を組み合わせるのが一般的です。課税の仕組みが異なるため、配分によって手取り総額が変わります。
どちらが有利かは金額によって変わるため、必ず試算してください。役員退職金と譲渡対価のバランスをご覧ください。
事業譲渡との違い
事業譲渡の場合、対価は会社に入ります。会社に法人税等が課され、そこから個人に移すには配当や退職金として支払う必要があり、その都度課税されます。
一般に、個人の手取りは株式譲渡のほうが有利になりやすいとされます。事業譲渡の税務と株式譲渡と事業譲渡はどちらを選ぶかをご覧ください。
申告の時期
譲渡した年の翌年に確定申告を行います。納税の時期と、代金を受け取る時期がずれることがあるため、資金の準備が必要です。
特に、運転資本の調整やアーンアウトによって代金の一部が後から支払われる場合、受け取っていない分に対する納税が生じないよう、契約段階で確認しておいてください。運転資本の調整とアーンアウトの設計と注意をご覧ください。
事前にやること
- 取得費を裏付ける資料を探す
- 株主ごとの取得費を整理する
- 想定される譲渡価額で、税額を試算する
- 退職金との配分を検討する
- 手取り総額を把握する
交渉に入る前にここまでやっておくと、提示された金額の判断ができます。売却後の手取りをご覧ください。
※ 税率・特例の要件・取得費の取扱いは法令の改正や個別の事情によって異なります。実行にあたっては顧問税理士に必ずご確認ください。