まず台帳を作る
意外に、フォークリフトの台帳がない会社があります。次を一覧にしてください。
- 機種、能力(積載荷重)、揚高
- 動力(エンジン式/バッテリー式)
- 導入年月、稼働時間(アワーメーター)
- 所有形態(購入/リース)とリース満了時期
- 年間の整備費
- 設置場所
稼働時間が更新判断の重要な指標になります。走行距離ではなく、時間で管理してください。
稼働時間で管理する理由は、フォークリフトの傷み方が使った時間に比例するからです。同じ年式でも、一日中動いている機体と、たまにしか使わない機体では状態がまったく違います。年式だけで判断すると、まだ使える機体を更新したり、限界の機体を使い続けたりします。
台帳を作るときは、稼働時間を記録する仕組みも一緒に決めてください。月に一度、担当者が各機のメーターを読んで記録する。この程度で足ります。数か月続けると、月あたりどれだけ使っているかがわかります。
月あたりの稼働がわかると、更新の時期も読めるようになります。この使い方なら何年後に何時間になる、という見通しが立ちます。見通しがあれば、資金の準備もできます。
更新の判断
- 整備費が増えている:年間の修理費が上昇傾向
- 故障で止まる回数が増えた:作業への影響
- 部品の供給:古い機種は部品の入手が難しくなります
- 安全機能:新しい機種は安全装備が充実しています
- 作業内容の変化:荷物の重量・棚の高さが変わった
車両と同じく、「整備費+止まった損失」が更新後の月額負担を超えたらが目安です。整備費と車両更新計画をご覧ください。
五つの目安のうち、経営の判断として重いのは二つ目の「止まった回数」です。整備費そのものより、止まったことで作業が滞った損失のほうが大きいことがあります。
だから、故障で止まった記録を残しておいてください。いつ、どの機体が、何時間止まったか。この記録があると、更新の判断に説得力が出ます。整備費の推移と合わせて見れば、いつが替え時かが見えます。
部品の供給については、あらかじめ確認しておく価値があります。整備を頼んでいる業者に、この機種の部品がいつまで手に入りそうかを聞いてみてください。入手が難しくなると、故障したときに止まる時間が長くなります。
作業内容が変わったときも、見直しの機会です。扱う荷物が重くなった、棚を高くした。今の機体で対応できているかを確認してください。無理に使うと、事故につながります。
エンジン式とバッテリー式
| エンジン式 | バッテリー式 | |
|---|---|---|
| 排出ガス | あり(屋内では換気が必要) | なし |
| 騒音 | 大きい | 小さい |
| 稼働時間 | 給油で継続可能 | 充電が必要 |
| 力 | 強い(重量物、屋外) | 機種による |
| ランニングコスト | 燃料費 | 電気代(一般に安い) |
| 初期費用 | 比較的安い | 高い(バッテリー含む) |
| バッテリー交換 | — | 数年ごとに必要(費用が大きい) |
屋内作業が中心ならバッテリー式が基本です。食品を扱う倉庫では特に重要になります。ただし、バッテリーの交換費用を見込んでおいてください。
どちらを選ぶかは、作業の場所で決まる部分が大きくなります。屋外での荷役が中心なら、力があって給油ですぐ復帰できるエンジン式が向きます。屋内なら、排気の問題からバッテリー式が基本になります。
両方の作業がある会社では、混在させる形が実際的です。それぞれの場所に合った機体を置けば、無理なく回ります。ただし、整備や部品の管理は種類が増えるぶん手間になります。
費用の比較をするときは、導入時の額だけでなく、使い続ける費用まで含めてください。燃料代と電気代の差、整備の頻度、バッテリーの交換。数年分を並べると、どちらが安いかが見えます。
購入かリースか
- 購入:長期使用ならコストが低い。整備は自社手配
- リース:初期負担が小さい。メンテナンス込みの契約もある
- レンタル:繁忙期のみの増強に向く
繁忙期だけレンタルで増やすという使い分けは、実務でよく採られます。年間を通じた稼働率を見て判断してください。
リースの場合、残債はM&Aで負債として扱われます。リース残債が価格に与える影響をご覧ください。
判断の材料になるのは、年間の稼働時間です。よく使う機体は購入したほうが長期では安くなり、たまにしか使わない機体はリースやレンタルのほうが無駄がありません。
リースを選ぶ場合、整備が含まれる契約かどうかを確認してください。含まれていれば、故障のたびに手配する手間がなくなります。含まれていなければ、整備の費用を別に見込む必要があります。
契約の残り期間も把握しておいてください。承継の場面では、残っている分が負担として扱われます。一覧に満了の時期を入れておけば、更新の計画とあわせて管理できます。
安全管理
フォークリフトは倉庫で最も労働災害が起きやすい設備です。
資格
- 最大荷重に応じた技能講習または特別教育が必要です
- 資格者の一覧と、修了証の保管
- 無資格者に操作させない(「ちょっとだけ」も不可)
点検
- 作業開始前の点検
- 定期の自主検査
- 特定自主検査(有資格者または検査業者による)
- 記録の保存
検査の周期と実施者の要件は法令で定められています。最新の基準を確認してください。
作業環境
- 歩行者との動線分離:最も重要
- 通路幅の確保、見通しの改善(ミラー)
- 制限速度の設定
- 爪の高さ、後進時の確認
- ヘルメット・安全靴
安全教育の仕組み化、倉庫管理主任者の要件をご覧ください。
この業態で事故が起きるとき、多くは「いつもやっていること」の延長で起きます。急いでいた、荷物が少しはみ出していた、後ろを確認しなかった。特別なことをしたわけではありません。
だから、教育は日常の場面を題材にするのが効きます。実際にひやりとした場面を集め、それを共有する。集めるときは、報告した人が責められない仕組みにしておかないと、誰も出さなくなります。
動線の分離が最も重要なのは、人と機械がぶつかる事故が最も重大な結果につながるからです。線を引く、通路を分ける、時間帯を分ける。完全に分けられなくても、交わる場所を減らすだけで違います。
無資格者に操作させないという点は、例外を作らないことが大事です。一度でも「今日だけ」を認めると、その基準が崩れます。人手が足りない場面でも、資格のある人が対応する体制にしてください。
検査の周期や実施者の要件は法令で定められており、見直されることもあります。自社の対応が今の基準に合っているかは、整備を依頼している業者や労働基準監督署に確認してください。
補助制度の活用
省エネ性能の高い機器や、省力化のための設備投資について、支援制度が用意されることがあります。名称・要件・時期は年度によって変わるため、最新の情報を確認してください。
※ 補助金の名称・対象経費・要件・公募時期は年度によって変わります。本記事は一般的な進め方を整理したものですので、実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認ください。
承継・M&Aでの扱い
- 台数と機種、稼働時間
- リース残債
- 更新の必要時期と金額
- 資格者の人数
- 労働災害の履歴
更新が迫っている設備が多いと、買収後の投資負担として価格に反映されます。台帳と更新計画があれば、予測可能なリスクとして扱われます。評価を下げてしまう要因をご覧ください。
この五項目は、台帳があればほとんどが埋まります。だから、台帳を作ることが承継の準備を兼ねます。作っていない会社は、ここから始めてください。
資格者をどう確保するか
フォークリフトを扱える人が限られていると、その人が休んだ日に作業が回らなくなります。だから、複数の人が扱える状態にしておく必要があります。
確保の方法としては、社内で計画的に取得を進めるのが基本です。誰がいつ取るかを決め、講習の日程を業務に組み込む。費用は会社が持つのが一般的でしょう。
取得を支援する仕組みがあると、採用のときにも訴求できます。資格を取らせてもらえる会社は、これから働く人にとって選ぶ理由になります。
資格者の一覧を作るときは、修了証の保管場所も決めてください。必要になったときに見つからないと、確認ができません。写しを一か所にまとめておくと管理しやすくなります。
バッテリー式を選ぶときの検討
バッテリー式は、屋内での作業に向いています。排気がなく、音も小さい。食品を扱う倉庫では、この点が決め手になります。
ただし、検討すべき点がいくつかあります。まず、充電の場所と時間です。充電中は使えないため、稼働の計画に組み込む必要があります。複数台ある場合は、充電設備の数も考えなければなりません。
次に、バッテリーの交換です。一定の年数で交換が必要になり、その費用は小さくありません。導入のときの費用だけを見て判断すると、後で想定外の支出になります。交換の時期と費用の見込みを、購入前に確認してください。
電気の設備が対応できるかも確認が要ります。充電のために必要な電力が確保できるか、配線の工事が要るか。建物の状況によっては、追加の費用が生じます。
繁忙期の増強をどう組むか
年間を通じて必要な台数と、繁忙期にだけ必要な台数は違います。繁忙期に合わせて揃えると、閑散期は遊びます。
だから、常時使う分は保有し、増える分はレンタルで賄うという組み方が実際的です。この形なら、遊ぶ設備を持たずに済みます。
レンタルを使う場合は、繁忙期に確保できるかを事前に確認してください。同じ時期に需要が集中すると、借りられないことがあります。毎年使うなら、業者と話をつけておくと確実です。
台数の判断には、稼働時間の記録が役立ちます。閑散期に何時間しか動いていない機体があれば、それは減らせるかもしれません。記録があると、こうした判断ができます。
設備の状態が承継でどう見られるか
買い手が設備を見るとき、気にするのは買った後にいくら投資が必要かです。だから、更新が迫っている設備が多いと、その分が価格に反映されます。
この影響を小さくするには、計画があることを示すのが効きます。何年後にどの機体を更新する予定で、いくらを見込んでいるか。これが一枚にまとまっていれば、予測できる負担として扱われます。
計画がないと、買い手は自分で見積もることになります。その見積りは、こちらが考えるより大きくなるのが普通です。だから、示せる材料を作っておくほうが有利になります。
あわせて、労働災害の記録も整理しておいてください。過去に起きた事故と、その後に何を変えたか。件数がゼロであることより、管理の跡が見えることのほうが評価されます。
整備をどう手配するか
フォークリフトの整備は、購入した業者に任せている会社が多いでしょう。それ自体は問題ありませんが、内容と費用を把握しておく必要があります。
把握したいのは、年間にいくらかかっているか、どういう作業をしているか、法令で求められる検査が含まれているかの三点です。請求書を見れば、おおよそわかります。
機体ごとに整備費を分けて記録しておくと、更新の判断に使えます。特定の機体だけ費用がかさんでいれば、それが替え時の合図です。まとめて計上していると、この差が見えません。
検査の記録は保存が求められます。どこに保管するかを決め、担当者が代わっても引き継がれるようにしておいてください。
作業の環境を見直す
安全の対策として動線の分離を挙げましたが、それ以外にも見直せる点があります。日々の作業のなかで、危ないと感じる場面を集めてみてください。
よく挙がるのは、見通しの悪い曲がり角、狭い通路、荷物が置かれて通れなくなる場所です。どれも、ミラーを付ける、線を引き直す、置き場を決めるといった対応で改善できます。
制限速度を決めることも効きます。決めていない会社では、急いでいる人ほど速く走ります。速度の目安を決めて掲示し、守られているかを見る。これだけで事故の危険が下がります。
見直しは、一度やって終わりにしないでください。荷物の量や配置が変わると、危ない場所も変わります。年に一度は、現場を歩いて確認する機会を作ってください。
まとめ
まず台帳を作り、稼働時間で管理してください。屋内中心ならバッテリー式が基本ですが、交換費用を見込むこと。繁忙期のレンタル併用は有効です。安全面では歩行者との動線分離が最重要で、無資格者の操作は絶対に避けてください。