倉庫業の登録が必要な場合

他人から物品を預かり、保管の対価を得る事業を行う場合、倉庫業の登録が必要になります。いわゆる営業倉庫です。

一方、自社の荷物を保管する自家用倉庫や、運送に付随する一時的な保管は扱いが異なります。自社の運用がどちらに当たるかは、実態で判断されます。「一時保管のつもりだったが、実質的には保管業務だった」というケースもあるため、判断に迷う場合は確認してください。

登録の対象になるもの

登録は倉庫ごとに行います。倉庫の種類(普通倉庫、冷蔵倉庫、水面倉庫など)によって、求められる施設の基準が異なります。

普通倉庫の場合、次のような観点で基準が定められています。

  • 建物の構造(強度、防火、防水、防湿)
  • 防犯・防鼠の設備
  • 照明、消火設備
  • 土地の条件

冷蔵倉庫では、温度管理に関する基準が加わります。具体的な基準と必要書類は、管轄の地方運輸局または行政書士に確認してください。

倉庫管理主任者

倉庫ごとに、倉庫管理主任者の選任が必要です。運送業の運行管理者・整備管理者と同様、資格要件があるため急には代われません

社長や特定の一人が兼務している場合、承継の際に問題になります。倉庫管理主任者の要件で詳しく整理しています。

承継での扱い

株式譲渡の場合

会社が変わらないため、登録はそのまま維持されます。ただし、役員変更などに伴う届出が必要になります。倉庫管理主任者を交代する場合は、その手続きも必要です。

事業譲渡・会社分割の場合

登録は自動的には移りません。譲受側が新たに登録を受ける必要が生じるか、承継の手続きが必要になります。運送業の許可とは別の手続きであるため、両方の期間を見込んでスケジュールを組む必要があります。

これは、倉庫を持つ会社で株式譲渡が選ばれやすい理由のひとつです。株式譲渡と事業譲渡の違い認可にかかる期間の目安をご覧ください。

相続の場合

個人事業として営んでいる場合、相続時の手続きが必要になります。法人であれば、株式の相続として扱われます。

M&Aでの評価

倉庫を持つことの価値

  • 収益が安定する:保管料は輸送より変動が小さい
  • 荷主との関係が深くなる:在庫を預かる関係は切り替えにくい
  • 一貫受託ができる:保管+流通加工+配送で単価が上がる
  • 不動産としての価値:自社所有であれば、資産価値も加わります

買い手から見ると、輸送だけの会社より評価されやすい要素です。買い手は運送会社のどこを見るかをご覧ください。

買い手が確認すること

  • 登録の有無と、対象倉庫の範囲
  • 実際に保管している場所が、登録された倉庫と一致しているか
  • 倉庫管理主任者の選任状況
  • 保管している貨物の種類と、施設の適合性
  • 寄託契約の内容(責任の範囲、料率、期間)
  • 火災保険・貨物保険の加入状況
  • 倉庫の稼働率と収益性

登録外の場所で保管しているという状態は、実務で見つかることがあります。デューデリジェンスで指摘される前に確認してください。

倉庫の収益を見せる

運送と倉庫を分けて数字が出ていない会社が多くあります。買い手が評価するには、倉庫事業単独の収益が見える必要があります。

  • 保管料・荷役料・流通加工料の内訳
  • 倉庫別・荷主別の売上
  • 坪あたりの収益
  • 稼働率の推移

これらを出せると、倉庫事業の価値が正しく評価されます。直近3期の数字をどう見せるかをご覧ください。

承継前に確認しておくこと

  1. 登録証の原本と、登録内容(倉庫の所在、種類、面積)
  2. 実際の使用状況との一致
  3. 倉庫管理主任者の選任と、後任の見通し
  4. 建物の所有形態(自社所有か賃借か、賃借なら契約期間)
  5. 寄託契約書の有無と内容
  6. 消防設備の点検記録

倉庫業の事業承継で、承継全体の流れを整理しています。

一時保管のつもりが保管業務になる

自社の運用がどちらに当たるかは実態で判断される、という点は、この論点で最も注意が要る部分です。

運送に付随する一時的な保管として始めたものが、いつの間にか継続的な保管になっていることがあります。荷主から「少しの間だけ置いておいてほしい」と頼まれ、それが常態化する。あるいは、方面別の仕分けのために一晩置くつもりが、数日になる。

判断の手がかりになるのは、期間と対価と場所です。どれくらいの期間置いているのか、その対価を受け取っているのか、専用の場所を確保しているのか。

だから、まず自社の実態を書き出してください。どの荷主の、どの荷物を、どこに、どれくらいの期間置いていて、料金をどう受け取っているのか。

書き出したうえで、判断に迷うものがあれば所管に確認してください。自己判断で「一時保管だから大丈夫」としていると、後で問題になります。

登録外の場所で保管していないか

登録外の場所で保管しているという状態が実務で見つかることがある、という指摘は重要です。

生じる経緯は、たいてい荷量の増加です。登録した倉庫が満杯になり、近くの空いている場所に置く。急ぎの対応なので手続きは後回しになり、そのまま続きます。

あるいは、新しい荷主を受けたときに、別の場所を借りて対応する。運送の延長として扱っているうちに、実質的な保管になっています。

だから、棚卸しのときは、登録の内容と実際に荷物を置いている場所を突き合わせてください。所在地ごとに、登録の有無と、置いている荷物の種類と量を並べます。

ずれが見つかったら、所管に相談して是正の方法を決めます。登録を追加するのか、運用を変えるのか。是正には時間がかかることがあるので、承継の話が具体化する前に着手してください。

倉庫の種類と保管品目が合っているか

保管している貨物の種類と施設の適合性が確認される、という点を補足します。

倉庫の種類ごとに求められる施設の基準が違うので、登録した種類で扱える品目にも範囲があります。ところが、荷主の求めに応じて扱う品目が広がると、当初の想定から離れていきます。

常温の倉庫で、温度管理が必要なものを預かっていないか。危険物に当たるものを、通常の倉庫に置いていないか。

確認の方法は、保管している品目の一覧を作ることです。荷主ごと、倉庫ごとに、何を預かっているかを並べる。そのうえで、登録の内容と照らします。

荷主から安全に関する情報の書面を受け取っている場合は、それも保管してください。品目の性質が分かれば、扱いの判断もできます。

寄託契約の中身を確認する

契約の内容が確認されるという点は、責任の所在に直結します。

読むべきは、責任の範囲と上限、免責となる場合、申し出の期限、そして料率と改定の仕組みです。

とくに責任の範囲は重要になります。保管中に荷物が傷んだ場合、どこまで負うのか。定めがなければ、そのつど交渉になります。倉庫では保管期間が長いぶん、経年による変化なのか保管の問題なのかが分かりにくく、争いになりやすい部分です。

料率については、長年据え置かれていないかを確認してください。人件費も光熱費も上がっているのに、保管料だけが同じという会社は珍しくありません。

そして、契約書がない取引もあります。その場合は、運用がどうなっているかを整理しておいてください。書面がないこと自体より、説明できないことが問題になります。

倉庫の数字を分けて出す

運送と倉庫を分けて数字が出ていない会社が多い、という点は、評価に直接響きます。

合算した数字だけでは、何で稼いでいる会社なのかが読めません。倉庫が実質的に運送を支えているのか、その逆なのかも分かりません。

買い手の関心が片方に偏ることもあります。倉庫の立地と設備が目当ての相手、運送の許可とドライバーが目当ての相手。その場合、部門別の数字が交渉の前提になります。

出すべきは、保管料と荷役料と流通加工料の内訳、倉庫別と荷主別の売上、面積あたりの収益、そして稼働率の推移です。

費用の側も分ける必要があります。人件費、光熱費、フォークリフトの費用、修繕。共通の費用をどう配賦するかを決めておいてください。配賦の基準が説明できれば、数字に説得力が出ます。

倉庫を持つことが評価される理由

輸送だけの会社より評価されやすいという点を、もう少し掘り下げます。

ひとつは、収益の変動が小さいことです。輸送は荷量に応じて売上が動きますが、保管料は預かっている量に応じるので、日々の変動が緩やかになります。

もうひとつは、取引が切り替えにくいことです。荷物を移すには手間がかかるので、いったん預かれば関係が続きます。輸送だけの取引より、代替されにくい構造です。

三つめが、単価を上げる余地です。保管に加えて、仕分け、検品、包装といった作業を担えば、その分の対価が乗ります。輸送と組み合わせれば、一貫して受託できます。

そして、自社所有であれば不動産としての価値も加わります。ただし、金額が大きくなると買える相手が限られるという面もあります。

これらの価値を評価してもらうには、数字で示せることが前提です。分けて出せない会社は、価値があっても伝わりません。

承継の形で扱いが変わる

株式を譲る形なら登録は維持され、事業を譲る形や会社分割では別途手続きが要る。この違いが、倉庫を持つ会社で株式譲渡が選ばれやすい理由のひとつです。

運送の許可と倉庫の登録は、根拠となる制度も所管も違います。だから、事業を譲る形を選ぶと、二つの手続きを並行して進めることになります。それぞれに期間がかかるので、日程が読みにくくなります。

しかも、片方が先に済んでも、もう片方が終わらなければ事業は始められません。全体の日程は、遅いほうに引きずられます。

だから、兼業している会社では、形を決める前に両方の所管に確認してください。この形で進めた場合に何が必要か、どれくらいかかるか。

そして、保有している許認可の一覧を先に作ってください。運送、倉庫、利用運送、そして自治体ごとの登録。取りこぼしがあると、実行の直前に判明します。

登録証と現況を照らす

承継前に確認しておくこととして登録証の原本を挙げましたが、運送の許可証と同じく、所在が分からなくなっている会社があります。

探して出てこない場合、再交付の手続きが必要になることがあります。時間がかかるので、実行の直前に気づくのでは間に合いません。

見つかったら、記載されている内容を現況と照らしてください。倉庫の所在地、種類、面積。増築や改修をしていれば、面積が変わっている可能性があります。

建物の所有形態も確認します。自社所有なら登記簿、借りているなら契約書。借りている場合は、残りの期間と更新の条件、そして賃借人が変わるときの扱いを見てください。

倉庫は移転が難しい施設です。使い続けられるかどうかが、事業が続くかどうかそのものになります。買い手が最も気にする点でもあります。

消防と設備の記録も揃える

確認事項に消防設備の点検記録を挙げましたが、倉庫では重みが増します。

保管している物によっては、火災の被害が大きくなります。しかも、荷物は荷主のものなので、損害の額が自社の規模を超えることもあります。

だから、設備の点検を欠かさず、記録を残してください。消火の設備、警報の装置、避難の経路。期限を管理し、実施の記録を保管します。

避難経路の確保は、日常の運用の問題です。荷物が通路に置かれて塞がっている状態は、繁忙期に起きがちです。定期的な見回りで確認してください。

保険の内容も確認しておきます。建物と設備、そして預かっている荷物。それぞれについて、どこまで補償されるのか。荷主との契約で負っている責任と、補償の範囲が対応しているかを見てください。

眠っている荷物を整理する

棚卸しの過程で、長期間動いていない荷物が見つかることがあります。連絡が取れなくなった荷主の荷物、処分の可否がはっきりしないもの。

日常の営業では棚の一角として見過ごされますが、承継の場面では扱いを決めなければなりません。保管スペースを占めるだけでなく、処分の責任が誰にあるのかという問題が残るからです。

だから、荷主ごとに在庫の一覧を作り、動いていないものについては荷主と話をつけてください。契約が生きているのか、保管料が発生しているのか、いつまで預かるのか。

整理すると、使えるスペースが増えます。稼働率が上がれば、収益にも直接効きます。承継の準備というより、日常の改善として取り組む価値があります。

まとめ

営業倉庫には運送とは別の登録が必要で、倉庫ごとに施設基準と倉庫管理主任者の選任が求められます。株式譲渡なら維持されますが、事業譲渡・会社分割では別途手続きが必要です。倉庫事業は収益の安定性で評価されるため、単独の数字を出せるようにしておいてください。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。許認可の具体的な取扱い・必要書類・審査期間は、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実際の手続きにあたっては、必ず管轄の運輸支局等および専門家にご確認ください。