WMSでできること

  • 入出庫管理:いつ、何が、いくつ入り、出たか
  • 在庫管理:どこに、何が、いくつあるか(ロケーション管理)
  • ロット・賞味期限管理:先入先出の徹底
  • ピッキング指示:作業者への指示と実績記録
  • 棚卸し:作業の効率化と精度向上
  • 作業実績の集計:誰が何をどれだけやったか
  • 荷主への情報提供:在庫状況の可視化

七つの機能のうち、どこまで必要かは扱う品目で決まります。日付の管理が要る品目を扱っているなら、その機能は欠かせません。逆に、品目が少なく回転も遅い倉庫なら、入出庫の管理だけで足りることもあります。

だから、選ぶ前に自社の倉庫が何を扱っているかを整理してください。品目の数、荷姿、回転の速さ、日付の管理が要るかどうか。この四点が決まれば、必要な機能も絞れます。

期待できる効果

  • 誤出荷が減る:バーコード検品による
  • 探す時間が減る:ロケーション管理による
  • 棚卸しが速くなる
  • 作業量が見える:料金の根拠になる(倉庫の保管料と附帯作業料
  • 属人化が解消される:ベテランしか場所が分からない状態から抜ける
  • 荷主に在庫を見せられる:提案力が上がる

最後の項目が、3PLへの転換につながります。

六つのうち、金額に直結するのは誤出荷の削減です。誤って出せば、回収と再送の費用がかかり、荷主の信用も落とします。だから、導入を検討するときは、まず今の誤出荷の件数を数えてみてください。

数えていない会社が多いのですが、これがわからないと効果も測れません。月に何件あり、一件あたりどれだけの費用がかかっているか。過去半年分でも集めれば、傾向がつかめます。

探す時間の削減も、実際には大きな効果です。ベテランなら迷わない場所でも、新しい人は探します。この時間が積み上がると、繁忙期の残業につながります。

荷主に在庫を見せられるという点は、営業の面で効きます。今どれだけ在庫があるかを相手が自分で確認できると、問い合わせが減り、信頼にもつながります。新しい荷主を取るときの条件になることもあります。

導入が失敗する原因

1. ロケーション管理が定着しない

WMSの前提は「どこに何があるかをシステムが把握している」ことです。作業者が指示と違う場所に置くと、すべてが崩れます。

  • 棚番の表示を分かりやすくする
  • 置き場所を決めた理由を説明する
  • ルールを守れない原因(棚が足りない、動線が悪い)を潰す

2. 現場の作業が増える

スキャンの手間が増えると、繁忙時に飛ばされます。スキャンしやすい機器と動線を用意してください。

3. マスタ整備を甘く見る

商品マスタ、荷主マスタ、ロケーションマスタ。導入作業の大半はマスタ整備です。ここに時間と人手がかかることを見込んでください。

4. 荷主の商品情報が揃わない

商品コード、荷姿、入数、重量、サイズ。荷主から情報をもらえないと、システムが動きません。 導入前に、荷主の協力を確認してください。

四つのうち、三つ目のマスタ整備が最も見積もりを誤りやすい部分です。導入の作業の大半がここに費やされることを、事前に理解しておく必要があります。

商品の情報を一件ずつ登録し、棚の番号を決め、荷主ごとの区分を作る。取扱いの品目が多ければ、この作業だけで数か月かかることもあります。しかも、通常の業務と並行して行うことになります。

だから、人手と時間を確保してから始めてください。「空いた時間にやる」では終わりません。誰が何時間かけるかを決めて、他の業務を調整する必要があります。

四つ目の荷主の協力についても、事前の確認が要ります。商品の情報は荷主が持っているものです。もらえなければ、こちらで一つずつ計測することになります。導入を決める前に、協力が得られるかを確かめてください。

選定のポイント

観点確認すること
取扱商品ロット・賞味期限管理が必要か。温度帯は
荷主数複数荷主に対応できるか(マルチテナント)
作業形態ケース、ピース、パレット。どれが中心か
機器ハンディターミナル、タブレット、プリンタ
連携荷主のシステム、TMS、会計とつながるか
費用初期、月額、荷主追加時の費用
導入支援マスタ整備とレイアウト設計を手伝ってくれるか

荷主が増えたときの費用を必ず確認してください。荷主ごとに追加費用がかかる製品もあります。

七つの観点のうち、荷主を追加したときの費用は特に確認してください。今は一社でも、増えれば費用も増えます。増え方が急な契約だと、荷主を増やすほど採算が悪くなります。

導入の支援についても、どこまでやってもらえるかを具体的に聞いてください。マスタの整備を手伝ってもらえるのか、助言だけなのか。この差は、導入にかかる負担に直結します。

連携については、荷主のシステムとつながるかが特に重要です。つながらないと、受注の情報を手で入力することになり、効果が半減します。

段階的に入れる

  1. 1荷主・1倉庫で始める
  2. 入出庫管理から
  3. ロケーション管理を加える
  4. ピッキング指示、検品
  5. 荷主への情報提供
  6. 他の荷主・倉庫へ展開

最初の荷主は、協力的で商品数が多すぎない先を選んでください。

最初の荷主を選ぶとき、協力的であることに加えて、取扱いの品目が多すぎないことが条件になります。品目が多いとマスタ整備だけで疲弊し、次に進めません。

逆に、少なすぎても学びが得られません。ある程度の量があり、日々の出入りがある荷主が適しています。実際に動かしてみて初めてわかることが多いためです。

最初の荷主で運用が固まったら、その手順を文書にしてください。次の荷主に広げるとき、この文書があれば速く進みます。ゼロから考え直すより、はるかに楽になります。

展開の途中で、最初に決めたやり方が合わない荷主が出てくることもあります。そのときは、無理に合わせるのではなく、どこまでを共通にしてどこから個別にするかを整理してください。

荷主とのデータ連携

荷主のシステムと自社のWMSをつなぐと、受注データの手入力がなくなります。連携の方法は、荷主とのEDI連携をご覧ください。

連携できると、荷主にとって切り替えにくい存在になります。取引の安定につながります。

連携ができると、受注の情報が自動で入り、在庫の状況を相手が自分で見られるようになります。問い合わせの電話が減り、その対応にかけていた時間が空きます。

ただし、連携の作り方は荷主によって違います。複数の荷主とつなぐと、それぞれの運用を覚える必要が出てきます。担当が一人だと属人化するため、手順を文書にしておいてください。

費用の考え方

  • 誤出荷による損害・再配送の削減額
  • 棚卸し作業時間の削減
  • 探す時間・問い合わせ対応の削減
  • 作業量の可視化による適正な料金収受
  • 新規荷主の獲得(システムがあることが条件になる案件)

導入には補助制度が用意されることがあります。年度によって内容が変わるため、最新の情報を確認してください。IT導入関連の支援をご覧ください。

五つの効果のうち、下の二つは金額にしにくいものの、事業の広がりに関わります。作業の量が見えると料金の話ができ、システムがあることで受けられる案件も増えます。

試算するときは、上の三つで投資を回収できるかをまず見てください。下の二つは、回収できた後の上積みと考えるほうが安全です。

マテハン機器との関係

WMSと自動倉庫・仕分け機などを組み合わせると効果が大きくなりますが、投資額も大きくなります。まずWMSで作業を標準化してから、機器を検討するのが順序です。自動倉庫・マテハン投資をご覧ください。

承継・M&Aでの意味

  • 倉庫の作業が標準化されている
  • 荷主別の作業量と採算が出せる
  • 在庫精度が高い(在庫差異は賠償リスク
  • 荷主との関係が深い(切り替えにくい)

倉庫事業の価値を正しく評価してもらうには、数字が出せることが前提です。倉庫業の登録と承継システムを引き継ぐときの注意をご覧ください。

四項目のうち、在庫の精度は数字で示せる部分です。差異がどれだけあり、どう対応してきたか。記録があれば、管理の水準がそのまま伝わります。

荷主別の作業量と採算が出せることも、強い材料になります。どの取引が支えていて、どこに改善の余地があるか。これを説明できる会社は、経営が見えている会社と評価されます。

ロケーション管理をどう定着させるか

WMSがうまくいくかどうかは、決めた場所に物が置かれるかで決まります。ここが崩れると、システムの中の情報と現物が合わなくなり、すべてが信用できなくなります。

定着させるには、まず守れないルールを作らないことです。棚が足りない、通路が狭くて置けない、指示された場所が遠い。こうした事情があれば、現場は必ず別の場所に置きます。

だから、ルールを決める前に現場を見てください。実際の作業の流れに沿った配置になっているか、よく出る物が近くにあるか。作業しやすい配置なら、ルールも守られます。

表示も工夫が要ります。棚の番号が見えにくい、似た番号が並んでいて紛らわしい。こうした点は、現場に聞けばすぐ出てきます。導入の前に一度、実際に探してもらうと問題が見つかります。

定着したかどうかは、抜き取りで確かめられます。システム上の場所に実際に物があるかを、いくつか確認する。ずれが多いなら、まだ定着していません。

在庫の差異が出たときにどうするか

在庫の数が合わないことは、どの倉庫でも起こります。大事なのは、起きたときに原因を追えるかどうかです。

追うためには、いつ誰が何をしたかの記録が要ります。入庫、出庫、移動、返品。それぞれが記録されていれば、どこでずれたかを絞り込めます。記録がなければ、原因はわかりません。

差異が出たときは、原因を分類して記録してください。数え間違い、入力の誤り、置き場所の誤り、伝票の処理漏れ。分類を続けると、どこに弱点があるかが見えてきます。

荷主に報告する基準も決めておく必要があります。どの程度のずれをいつ報告するか。決めていないと、担当者の判断でばらつきます。

在庫の差異は、預かった物に対する責任の問題でもあります。だから、承継の場面では必ず確認されます。精度が高いことと、差異が出たときの対応が決まっていることの両方が見られます。

作業量を料金に結びつける

WMSが入ると、誰が何をどれだけやったかが記録されます。この記録は、料金の話をするときの材料になります。

倉庫の仕事は、保管だけでなく入出庫の作業が伴います。この作業の量が増えているのに料金が変わらなければ、採算は悪化します。しかし、記録がなければ増えたことを示せません。

示すには、月ごとの作業の件数と、それにかかった時間を並べます。契約を結んだときと現在で、どれだけ変わったか。数字があれば、相手も検討できます。

荷主ごとの採算を出すことも、同じ記録からできます。保管の面積あたりの収入と、作業にかかった人件費。この二つを突き合わせれば、どの荷主が採算に合っているかが見えます。

機器と設備をどう選ぶか

WMSを使うには、読み取りの機器が要ります。この選び方も、定着に影響します。

確認したいのは、片手で扱えるか、読み取りが速いか、落としても壊れにくいか、電池がどれだけもつかです。現場は片手で荷物を持ちながら操作することが多いため、扱いやすさが効きます。

通信の環境も確認が要ります。倉庫の奥や金属の棚に囲まれた場所では、電波が届かないことがあります。導入の前に、実際に現場で試してみてください。

印刷の機器も、作業の流れに合った場所に置く必要があります。遠い場所にあると、そこまで往復する時間が積み上がります。

設備を大きく入れる話は、WMSで作業が標準化された後で構いません。手順が固まっていない状態で機械を入れると、合わない部分が後から出ます。導入には支援の制度が用意されることもありますが、年度によって内容が変わるため、その時点の公募の内容を確認してください。

まとめ

WMSの前提はロケーション管理の定着です。導入作業の大半はマスタ整備であり、荷主から商品情報をもらえるかが成否を分けます。1荷主・1倉庫から段階的に始めてください。荷主のシステムと連携できると、取引の安定にもつながります。