なぜ効果があるのか

運送業のコストの多くは運行するだけで発生します

  • ドライバーの人件費:荷量に関係なくかかる
  • 車両費・保険・税金:固定
  • 燃料費:荷量で多少変わるが、走行距離の影響が大きい
  • 高速代:固定

つまり、同じ運行で運ぶ量を増やせれば、増えた分はほぼ利益になります

共同配送の形

1. 同業間の連携

近隣の運送会社同士で、荷物を融通し合う形です。

  • 片荷の路線を互いに埋める
  • 繁忙期・閑散期の波を相互に補う
  • エリア外の配送を委託し合う

最も始めやすい形です。トラック協会の集まりや、既存の傭車関係が入口になります。

2. 荷主主導の共同配送

複数の荷主が共同で物流を組む形に、運送会社として参加します。

  • 同じエリアへの配送をまとめる
  • 共同の物流センターを経由する
  • 納品先が同じ小売・卸である場合

荷主側にコスト削減の意欲があるため、提案が受け入れられやすい領域です。

3. 求貨求車のマッチング

システムを使って、空きスペースと荷物をマッチングする形です。スポットでの活用に向きます。

4. 中継輸送との組み合わせ

長距離を分割し、拠点で荷物を積み替える形です。中継輸送の可能性をご覧ください。

始め方

  1. 自社の空きを可視化する:どの路線の、どの便に、どれだけ余裕があるか
  2. 相手を探す:同業、荷主、業界団体
  3. 小さく試す:まず1路線、1便から
  4. 採算を検証する:手間とコストに見合うか
  5. ルールを決めて拡大する

いきなり大きく始めないことです。実務上の課題は、やってみないと見えません。

実務上の課題

1. 荷物の相性

  • 温度帯が違う(常温、冷蔵、冷凍)
  • 混載できない品目(食品と化学品など)
  • 荷姿が違う(パレット、バラ、長尺)
  • 重量と容積のバランス

2. 時間の調整

集荷・納品の時刻が合わないと成立しません。最も多い障害です。

3. 責任の所在

  • 荷物が破損したとき、誰の責任か
  • 遅延したとき、どちらの荷主に説明するか
  • 保険はどう適用されるか

事前に取り決め、書面にしてください。事故時の保険と賠償の考え方をご覧ください。

4. 荷主の同意

他社の荷物と混載することについて、荷主の了解が必要な場合があります。契約で再委託や混載が制限されていないか確認してください。荷主との契約書を整えるをご覧ください。

5. 情報の扱い

同業と組む場合、荷主名や単価といった情報が相手に見えます。どこまで開示するかを決めておいてください。個人情報・貨物情報の取扱いをご覧ください。

6. 精算の方法

  • 距離按分、重量按分、容積按分
  • 固定額での取り決め
  • 請求と支払いの流れ

計算が複雑すぎると続きません。 シンプルなルールにしてください。

許認可の確認

他社の荷物を自社が引き受けて運ぶ形になる場合、利用運送の登録が関わることがあります。取引の形態によって扱いが変わるため、事前に確認してください。貨物利用運送事業の登録をご覧ください。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。許認可の具体的な取扱い・必要書類・審査期間は、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実際の手続きにあたっては、必ず管轄の運輸支局等および専門家にご確認ください。

効果の測り方

手間が増えるぶん、効果を数字で確認してください。効果が出なければ、やり方を変えるか撤退します。

M&Aとの関係

共同配送に取り組んでいることは、効率改善に前向きな会社であることを示します。

また、同業とのM&A自体が究極の共同配送とも言えます。連携を深めた相手が、将来の統合の候補になることもあります。同業に売るか、異業種に売るか譲受側から見た運送会社M&Aの狙いをご覧ください。

空きを可視化するところから

自社の空きを可視化することを最初の段階に挙げました。ここが曖昧なまま相手を探しても、話が具体的になりません。

可視化するのは、路線と便ごとの余裕です。どの曜日の、どの方面の便に、どれだけ積めるか。重量と容積の両方で見てください。重さで余裕があっても、かさばる荷物で埋まっていれば積めません。

この情報は、運行の記録から拾えます。積んだ量が記録されていない場合は、しばらく記録を取ってください。おおよその割合でも構いません。

そして、時間の余裕もあわせて把握してください。積む場所に寄れるか、降ろす順番を変えられるか。空間に余裕があっても、時間が合わなければ成立しません。

一覧ができると、相手に示せる形になります。「この曜日のこの方面に、これだけの余裕があります」という提案は、漠然と協力を持ちかけるより、はるかに話が進みます。

そして、この一覧は自社の受注にも使えます。埋まっていない便が見えれば、営業の対象がはっきりします。

相手を探すときの順序

同業間の連携が最も始めやすいと書きました。相手を探す順序を具体的にしておきます。

まず、すでに傭車のやり取りがある相手です。お互いの仕事ぶりを知っているため、信頼の面で障壁がありません。話も持ちかけやすいでしょう。

次に、業界の集まりで顔を合わせる相手です。同じ地域で、方面の違う仕事をしている会社が候補になります。競合していない相手のほうが、話が早く進みます。

そして、荷主から紹介される場合もあります。同じ荷主の仕事を別のエリアで担っている会社があれば、組み合わせの余地があります。

逆に、直接の競合には慎重になってください。荷主が重なる相手と組むと、情報の扱いが難しくなります。組むにしても、開示する範囲を先に決める必要があります。

そして、最初の相手は一社に絞ってください。複数と同時に進めると、調整が複雑になります。一社で運用が回ってから、広げてください。

時間の調整が最大の壁

集荷と納品の時刻が合わないことが最も多い障害だと書きました。ここを越える工夫を挙げます。

まず、どちらの時刻に余裕があるかを確かめてください。両方が固定なら成立しませんが、片方でも動かせるなら可能性があります。多くの場合、集荷の側のほうが調整しやすいものです。

次に、荷主に相談する余地を探ってください。時刻を少しずらすことで運賃が下げられる、あるいは条件が改善するなら、応じてもらえることがあります。理由を伝えれば、検討はしてもらえます。

そして、積み替える拠点を使う方法もあります。時刻が合わない場合でも、一度置ける場所があれば、時間差を吸収できます。ただし、置き場所と積み替えの手間が費用として発生します。

どうしても合わない場合は、その便は諦めてください。無理に合わせると、どちらかの運行に無理が生じ、結局は続きません。

合う便が一つ見つかれば、そこから始められます。全部の便で組もうとしないことです。

精算をどう単純にするか

計算が複雑すぎると続きませんと書きました。単純にするための考え方を示します。

最も単純なのは、一運行あたりの固定額です。この便に積んでもらうならいくら、と決めておく。荷量が多少変わっても金額は変わりません。事務の手間がほとんどかかりません。

荷量の変動が大きい場合は、パレットの枚数のような数えやすい単位で決めてください。重量や容積で按分すると、毎回の計算が必要になります。

そして、精算の周期は月次にしてください。運行ごとに請求すると、件数が増えて事務が回りません。

相殺する形も検討してください。お互いに荷物を出し合っているなら、差額だけをやり取りする。請求と支払いの手間が半分になります。

そして、決めたルールは書面にしてください。口頭の取り決めは、担当者が代わると分からなくなります。単純なルールほど、書き残すのは簡単です。

責任の取り決めで押さえること

事前に取り決めて書面にしてくださいと書きました。何を書くべきかを具体的にしておきます。

まず、荷物が傷んだ場合です。誰が積み、誰が運び、誰が降ろしたか。工程ごとに責任の所在を決めてください。積み替えを伴う場合は、引き渡しの時点で状態を確認する手順も必要です。

次に、遅れた場合です。どちらの荷主に、誰が説明するか。混載していると、一方の遅れが他方にも及びます。連絡の順序を決めておいてください。

そして、保険の適用です。運んでいる会社の保険が、他社から預かった荷物にも及ぶかを確認してください。契約の内容によっては対象外になることがあります。始める前に、代理店に確認しておくべき点です。

あわせて、荷物の引き渡しの記録を残す形にしてください。いつ、どこで、どの荷物を、誰から誰に渡したか。この記録があると、問題が起きたときに切り分けができます。

そして、決めたことは両社で同じ書面を持ってください。片方だけが持っている覚書では、意味が薄くなります。

荷主に伝えるかどうか

他社の荷物と混載することについて荷主の了解が必要な場合があると書きました。この確認を、始める前に済ませてください。

まず、契約書を確認します。再委託や混載について何か書かれていないか。書かれていなければ、慣行として制限されていないかを確認してください。

制限がない場合でも、伝えておくほうが安全です。後から知られると、隠していたと受け取られます。伝え方としては、効率が上がることと、それによって条件が維持できることをあわせて説明してください。

荷物の性質によっては、混載を嫌う荷主もあります。品質の管理、情報の秘匿、他社との関係。理由があるなら、その荷物は対象から外してください。

逆に、荷主の側から提案されることもあります。同じ方面に出している他社との共同化を、荷主が主導する形です。この場合は話が早く進みます。

そして、伝えた内容は記録に残してください。誰にいつ伝え、どう返ってきたか。後から確認を求められたときに必要になります。

効果が出なかったときの見切り

効果が出なければやり方を変えるか撤退すると書きました。判断の基準を決めておいてください。

見るのは、その便の一運行あたりの収入と、かかった手間です。積む量が増えても、寄り道や積み替えで時間が伸びていれば、時間あたりでは改善していないことがあります。

あわせて、事務の手間も入れてください。精算、連絡、記録。件数が少ないうちは、この手間が効果を上回ることがあります。

期間は、三か月ほど見てください。始めた直後は段取りが定まらず、効果が出にくいものです。慣れてからの数字で判断してください。

そして、効果が出ない場合でも、いきなりやめないでください。組み方を変える余地があります。便を変える、荷物の種類を絞る、精算の方法を単純にする。原因によって、直せることがあります。

やめる場合は、相手に理由を伝えてください。関係を残しておけば、条件が変わったときに再開できます。

荷主主導の枠組みに参加するとき

複数の荷主が共同で物流を組む形に参加する場合、同業間の連携とは違う注意点があります。

まず、条件が枠組みの側で決まっていることが多い点です。運賃、時刻、作業の範囲。参加する立場では、交渉の余地が限られます。だから、入る前に条件を精査してください。

次に、量の見通しです。共同化の初期は物量が読めません。想定より少ない状態が続くと、確保した車両と人が余ります。最低限の量について取り決めがあるかを確認してください。

そして、参加する会社が複数いる場合、比較されます。時間の正確さ、荷扱い、連絡の速さ。ここで評価されれば量が増え、そうでなければ減ります。始めた時点が勝負ではなく、続けた結果で決まります。

あわせて、枠組みが解消された場合にどうなるかも見ておいてください。専用の設備や人員を抱えている場合、抜けたときの負担が残ります。

それでも、荷主側にコスト削減の意欲がある領域なので、提案は受け入れられやすくなります。条件を見極めたうえで、参加する価値のある枠組みかを判断してください。

情報をどこまで見せるか

同業と組むと荷主名や単価が相手に見えると書きました。開示の範囲を、始める前に決めてください。

必要なのは、荷物の性質、量、積む場所と降ろす場所、時刻です。これがなければ運行が組めません。

一方、荷主から受け取っている運賃は、必ずしも見せる必要がありません。精算の金額は、こちらから相手に払う額として決めればよく、元の運賃とは別の話です。

荷主名についても、伝票や現場で分かってしまう場合と、そうでない場合があります。隠しきれない場面が多いため、隠すことを前提にするより、相手にも守秘の取り決めを求めるほうが現実的です。

取り決めの内容は難しくありません。この取り組みで知った情報を、目的以外に使わないこと、第三者に伝えないこと。書面にしておけば足ります。

そして、こちらも同じ義務を負います。相手の荷主に対して営業をかけるようなことは、当然避けてください。一度でもあれば、その関係は終わります。

まとめ

共同配送・混載は、増えた分がほぼ利益になる取り組みです。同業間の連携が最も始めやすく、1路線から小さく試してください。荷物の相性・時間・責任・精算方法が実務上の課題です。荷主の同意と利用運送の登録の要否は、事前に確認してください。