なぜ配車をシステム化するのか

効率化より、属人化の解消のほうが重要です。承継・M&Aの観点では特にそうです。

属人化の解消が効率化より重要だという点は、少し説明が要ります。配車が上手な人がいれば、日々の運行は回ります。効率としては、その人が手で組むほうが良いことすらあります。

問題は、その人が抜けたときです。頭のなかにある情報は引き継げません。どの荷主が何時までに着くことを求めているか、どのドライバーがどの現場を知っているか、どの車がどの荷物に向いているか。これらが失われれば、同じ運行が組めなくなります。

だから、仕組みにする目的は、速く組むことではなく、他の人でも組めるようにすることです。この違いを理解していないと、導入の判断も評価もずれます。

業態によって必要な機能が違う

業態重視する機能
長距離・幹線拘束時間の管理、中継・交替の管理、実車率
ルート配送訪問順の管理、多頻度の受注処理、配送順の最適化
地場・スポット受注から配車までの速さ、車両の空き状況
倉庫併設WMSとの連携、出荷データからの自動取り込み
引越作業員の配置、繁忙期の日程管理

自社の業態に合わない製品を選ぶと、使われません。 同業態での導入実績を必ず確認してください。

この表を使うときは、自社がどの型に当てはまるかを確かめてください。複数の業態を持つ会社では、どちらを優先するかの判断が要ります。

合わない製品を入れると、現場で使われなくなります。使われなければ、情報も溜まらず、属人化も解消しません。費用だけが残ります。

だから、選ぶときは同じ業態での実績を必ず聞いてください。導入した会社の話が聞けるなら、なお良いでしょう。何が良くて何が足りなかったかは、使ってみないとわからない部分です。

自動配車の実力

「AIが自動で配車する」機能を持つ製品もあります。実力を正しく理解してください。

  • 向いている:訪問先が多く、条件が定型的なルート配送
  • 向いていない:条件が複雑で、例外が多い運行

運送業の配車には、数値化しにくい判断が多く含まれます。「この荷主にはあのドライバーを」「この日は無理をさせない」といった判断です。

現実的な使い方は、システムが案を出し、人が調整する形です。ゼロから組む手間が減るだけでも価値があります。

数値化しにくい判断が多いという点は、この業態の特徴です。人と人の関係、現場ごとの事情、その日の体調。こうした要素は、条件として入力しにくいものです。

だから、案を出してもらって人が調整する形が現実的になります。ゼロから組む手間が省ければ、それだけで価値があります。

ただし、調整の余地が大きすぎると、結局は手で組み直すことになります。どこまで自動で決まり、どこから人が決めるのか。この線を導入の前に確認してください。

また、案の質は入力する条件の細かさで決まります。条件を丁寧に設定するほど良い案が出ますが、設定の手間もかかります。この釣り合いも、実際に試してみないとわかりません。

選定の手順

  1. 解決したい課題を書き出す:3つ以内に絞る
  2. 今のやり方を整理する:誰が、いつ、何を見て決めているか
  3. 複数社から情報を集める:3社程度
  4. デモを見る実際に配車する人が触る
  5. 自社のデータで試す:可能なら実際の運行で
  6. 費用を比較する:初期、月額、追加費用
  7. 導入支援の内容を確認する

4番目を経営者だけで済ませないでください。 使う人が「これなら使える」と思わなければ、定着しません。

五つ目の「自社のデータで試す」は、可能なら必ずやってください。デモの画面は整った例で作られています。自社の実際の運行を入れてみると、想定していなかった条件が出てきます。

試すときは、いちばん複雑な日を選んでください。うまくいく日で試しても、実力はわかりません。荷物が多く、条件が重なる日で回せるなら、日常でも使えます。

七つ目の導入支援については、どこまでやってもらえるかを具体的に確認してください。設定を代わりにやってくれるのか、助言だけなのか。この差で、導入にかかる自社の負担が変わります。

確認すべき費用

  • 初期費用(導入支援、マスタ作成)
  • 月額(車両台数・ユーザー数による課金か)
  • 車両を増やしたときの費用
  • カスタマイズの費用
  • 他システムとの連携費用
  • サポート費用

六つのうち、車両を増やしたときの費用は特に確認してください。台数で料金が決まる契約だと、増車のたびに費用が上がります。将来の規模を見込んで計算しておく必要があります。

連携の費用も、後から発生することがあります。今は使っていない機器とつなぎたくなったとき、追加の費用がかかるかどうか。あらかじめ聞いておくと、後で驚きません。

連携の確認

連携できないと二重入力になり、現場の負担が増えて定着しません。

連携ができないと二重入力になるという点は、定着の成否を直接左右します。現場から見れば、新しい仕組みが増えただけで、前の作業は残っている状態です。これでは続きません。

だから、確認するときは「つながります」という回答だけで済ませないでください。どの項目が自動で移り、どの項目は手で入れるのか。具体的に聞いておく必要があります。

定着させるために

1. 移行期間を設ける

いきなり全面切り替えは危険です。ホワイトボードと並行する期間を作り、システムだけで回せることを確認してから移行してください。

2. 入力を減らす

自動で取れるデータは自動で取る。手入力が多いと続きません。

3. 使う人を巻き込む

導入を配車担当に任せきりにせず、経営者も内容を理解してください。「システムのことは分からない」では、属人化の相手が変わるだけです。

4. 見る習慣を作る

月次で、実車率・実働率・荷主別採算を確認する場を設けてください。データは見なければ意味がありません。

四つのうち、三つ目が最も見落とされます。導入を担当者に任せきりにすると、その担当者しか使い方を知らない状態になります。配車の属人化を解消するつもりが、システムの属人化に変わるだけです。

防ぐには、経営者も画面を見て、何がわかるようになったかを理解しておくことです。細かい操作まで覚える必要はありませんが、どういう情報が出せるかは把握しておいてください。

四つ目の見る習慣も、決めなければ続きません。月に一度、実車率と実働率と荷主別の採算を確認する場を作る。会議の議題に入れておけば、忘れません。

見た結果を、次の判断につなげることも大事です。この荷主は採算が悪い、この車は動いていない。気づいたことに手を打って初めて、導入の効果が出ます。

小さく始める選択

本格的なシステムが負担なら、次から始める方法もあります。

  • 表計算ソフトで配車表を共有する(まず情報を出す)
  • クラウドのスケジュール管理を使う
  • デジタコのデータを活用する

「頭の中から外に出す」ことが最初の一歩です。ツールは後からでも変えられます。

道具は後から変えられますが、頭のなかにある情報を外に出す作業は先送りできません。担当者が元気なうちにしかできない作業です。

補助制度

システム導入について支援制度が用意されることがあります。名称・要件・時期は年度によって変わるため、最新の情報を確認してください。IT導入関連の支援をご覧ください。

承継・M&Aでの意味

配車がシステム化されている会社は、「社長が抜けても回る」ことの証明になります。買い手が最も懸念する点への直接の答えです。

また、過去の運行データがあると、デューデリジェンスで求められる資料をすぐ出せます。実働率・実車率と収益力の見せ方システムを引き継ぐときの注意をご覧ください。

この点が評価につながるのは、買い手にとって最大の不安が社長依存だからです。配車が仕組みで回っていれば、その不安の一つが消えます。

示す材料としては、過去の運行のデータと、複数の人が組んでいる実績が挙げられます。担当が交代しても運行が乱れなかった記録があれば、説得力があります。

契約の名義やデータの引き継ぎについても、事前に確認しておいてください。承継のときに移せない契約だと、買い手が入れ直すことになります。

今のやり方を記録に残す

導入の前にやっておきたいのが、今の配車がどう決まっているかを書き出すことです。この作業自体が、属人化を解く第一歩になります。

書き出す内容は、判断の材料と手順です。何を見て決めているか、どういう順番で決めているか、迷ったときに何を優先するか。担当者に聞きながら、一つずつ言葉にしていきます。

この作業は簡単ではありません。長年やっている人ほど、無意識に判断している部分が多いためです。「なぜこの車を選んだのか」と聞かれて、すぐには答えられないこともあります。

だから、実際の配車を一日分たどりながら聞くのが効果的です。この便になぜこの車を割り当てたのか、他の選択肢はなかったのか。具体的な場面のほうが、理由を言葉にしやすくなります。

書き出したものは、システムの設定にも使えますし、新しい人を育てるときの資料にもなります。導入しない場合でも、作る価値があります。

荷主ごとの条件をどう管理するか

配車の難しさの多くは、荷主ごとの条件から生まれます。この時間までに着かなければならない、この車種でなければ入れない、この人でないと嫌がられる。

これらの条件が担当者の記憶にしかないと、他の人は組めません。だから、荷主ごとに条件を書き出しておく必要があります。

書く内容は、時間の制約、車両の制約、現場の事情、担当者の連絡先、過去にあった問題です。この五つが揃っていれば、初めての人でも大きな間違いは避けられます。

作った後は、更新の仕組みも決めてください。条件は変わります。変わったときに誰が直すかが決まっていないと、古い情報のまま使われます。

導入を判断する材料

費用に見合うかを判断するには、効果を金額にする必要があります。ただし、この分野では金額にしにくい効果のほうが大きいという特徴があります。

金額にできるのは、配車にかかる時間の削減と、請求への連動による事務の削減です。前者は、担当者が一日に何時間使っているかを測れば出ます。

金額にしにくいのは、属人化の解消です。しかし、こう考えることはできます。今の担当者が辞めたら、代わりの人を採るのにいくらかかり、育つまでに何か月かかるか。あるいは、その間に運行が乱れたらどれだけの損失になるか。

この見積りをすると、投資の意味が変わって見えることがあります。効率化のための投資ではなく、会社が続くための備えとして考える。この見方が、この分野では実態に近いでしょう。

小さく始めて広げる

本格的な仕組みが負担なら、まず情報を外に出すことから始められます。配車の予定を共有できる形にするだけでも、他の人が見られるようになります。

表計算のソフトでも構いません。大事なのは、担当者の手元にあるだけの状態をなくすことです。共有されていれば、担当者が休んだ日にも誰かが見られます。

次の段階として、荷主ごとの条件を文書にします。ここまでできれば、他の人でも組める土台ができます。仕組みを入れるのは、その後でも間に合います。

入れるときも、いきなり全面的に切り替えないでください。従来のやり方と並行する期間を作り、システムだけで回せることを確認してから移してください。導入について支援の制度が用意されることもありますが、名称も要件も年度によって変わるため、その時点の内容を確認してください。

まとめ

配車システムの本質的な価値は、属人化の解消です。業態に合った製品を選び、実際に配車する人がデモを触ってください。自動配車は「案を出して人が調整する」形が現実的です。移行期間を設け、連携を確認し、月次でデータを見る習慣を作ってください。