TMSでできること

  • 受注管理:荷主からの依頼を一元管理する
  • 配車:車両・ドライバーの割り当て、計画の作成
  • ルート設計:訪問順の最適化(機能があるものに限る)
  • 進捗管理:動態と連動した運行状況の把握
  • 実績管理:走行距離、時間、実車率
  • 原価計算:運行ごとの採算
  • 請求:実績から請求データを作成

「配車から請求までがつながる」ことが最大の価値です。転記の手間とミスがなくなります。

七つの機能が並んでいますが、すべてを使う会社は多くありません。自社に必要なのはどれかを見極めることが、選定の出発点になります。

見極める方法として、今いちばん時間がかかっている作業を挙げてみてください。請求の作成に何日もかかっているなら、実績から請求データが作れる機能が効きます。配車に時間がかかっているなら、そちらが優先です。

逆に、今困っていない部分の機能は、あっても使いません。機能が多い製品ほど価格も上がるため、使わない機能に払うことになります。

つながることが価値だという点は、裏返せば、つながらなければ価値が減るということです。だから、既存の仕組みと連携できるかは、機能の多さより重要な確認点になります。

期待できる効果

最後の項目が、承継・M&Aの観点では最も重要です。

この五つのうち、金額に換算しやすいのは上の三つです。事務の時間がいくら減るか、請求の誤りがいくら減るか、稼働が上がって売上がいくら増えるか。導入を判断するときは、この換算をしてください。

下の二つは金額にしにくいものの、会社にとっての意味は大きくなります。特に配車の属人化が解ければ、担当者が休める、辞めても回る、承継のときに引き継げる。この価値は投資額を上回ることがあります。

導入が失敗する原因

1. 目的が曖昧

「DXが必要だから」で導入すると、何も改善しません。解決したい課題を1〜3個に絞ってください。

  • 請求業務に毎月◯日かかっている → それを減らす
  • 荷主別の採算が出せない → 出せるようにする
  • 配車が1人にしかできない → 複数で回せるようにする

2. 現場が入力しない

最大の落とし穴です。ドライバーや配車担当が入力しなければ、データは溜まりません。

  • 入力項目を最小限にする
  • デジタコ・動態管理と連携させ、自動で取れるものは取る
  • 入力する意味を伝える(「あなたの働いた時間を正しく払うため」)

3. 既存のやり方に合わない

システムに合わせて業務を変える覚悟がないと、結局ホワイトボードと二重管理になります。

4. 導入して終わり

データが溜まっても、見なければ意味がありません。月次で誰が何を見るかを決めてください。

四つの原因のうち、三つ目の「既存のやり方に合わない」は、事前の準備で減らせます。導入の前に今の業務の流れを書き出しておけば、その流れが製品に合うかを確認できます。

書き出してみると、変えられる部分と変えられない部分が分かれます。荷主の要求で決まっている部分は変えられませんが、社内の習慣で続けている部分は変えられます。後者が多いなら、システムに合わせる余地があります。

四つ目の「導入して終わり」を避けるには、月次で見る場を作るのが確実です。誰が、いつ、何の数字を見るかを決める。会議の議題に入れておけば、続きます。

見る数字は絞ってください。全部を見ようとすると続きません。荷主別の採算、実車率、配車にかかった時間。三つくらいから始めて、必要に応じて増やすほうが定着します。

選定のポイント

観点確認すること
業種適合自社の業態(一般貨物、ルート配送、倉庫併設)に合うか
規模車両台数に見合った製品か。過剰でないか
連携デジタコ、動態管理、会計ソフトとつながるか
操作性配車担当が使えるか(実際に触って確認
費用初期費用、月額、カスタマイズ費用
サポート導入時の支援、その後の問い合わせ対応
実績同規模・同業態での導入事例

デモは必ず、実際に使う人が触ってください。 経営者だけが見て決めると、現場で使われません。

七つの観点のうち、見落とされやすいのが規模の適合です。大きな会社向けの製品は機能が豊富ですが、そのぶん設定も運用も重くなります。台数の少ない会社が入れると、使いこなせずに終わります。

確認するときは、同じくらいの規模の会社での導入事例を聞いてみてください。実際に使っている会社の話が聞けるなら、なお良いでしょう。想定と違う点が見つかることがあります。

操作性については、デモの時間を十分に取ってください。短い時間で説明を聞くだけでは、使いやすさはわかりません。実際の業務の場面を想定して、自分たちで操作してみる必要があります。

サポートの体制も、後になって効いてきます。導入のときだけ手厚く、その後は連絡が付きにくいということがあります。問い合わせの方法と対応の時間帯を、契約の前に確認してください。

段階的に入れる

  1. まず実績管理から(走行距離、時間の記録)
  2. 次に請求連携
  3. その後、配車機能
  4. 最後に最適化・分析

全機能を一度に使おうとしないでください。定着してから広げるほうが確実です。

この順序が実績管理から始まるのは、いちばん抵抗が少ないからです。記録を取るだけなら、今のやり方を大きく変えずに始められます。

実績が溜まると、次の段階の準備にもなります。請求と連携するには実績のデータが要り、配車を組むにも過去の実績が参考になります。だから、この順序には意味があります。

一つの段階が定着したかどうかは、記録が続いているかで判断できます。入力が滞っているなら、まだ定着していません。次に進む前に、原因を確かめてください。

全機能を一度に使わないという点は、費用の面でも意味があります。段階的に契約を広げられる製品なら、最初の負担を抑えられます。契約の形も確認しておいてください。

デジタコ・動態管理との関係

これらが連携していると効果が大きくなります。バラバラだと二重入力になります。導入前に連携の可否を確認してください。

三つの役割が分かれているということは、それぞれ別の製品を入れている会社が多いということでもあります。この場合、つながっているかどうかで手間がまったく違います。

つながっていないと、同じ情報を二度入力することになります。運行の記録を機器から読み、それを別の仕組みに打ち直す。この作業が毎日発生すれば、導入の効果が消えます。

だから、選定の段階で今使っている機器との連携を確認してください。連携できると言われた場合も、どこまで自動で移るのかを具体的に聞いておく必要があります。一部だけ自動で、残りは手入力ということもあります。

費用の考え方

効果を金額で試算してください。

  • 削減できる事務作業時間 × 時間あたり人件費
  • 請求ミス・請求漏れの削減額
  • 実車率改善による増収
  • 配車担当を増やさずに済む効果

導入には補助制度が用意されることがあります。名称・要件・時期は年度によって変わるため、最新の情報を確認してください。IT導入関連の支援をご覧ください。

試算するときは、控えめに見積もってください。導入すれば作業がゼロになるわけではなく、新しい作業も生まれます。効果を大きく見積もると、後で期待外れになります。

あわせて、続けるための費用も計算に入れてください。月額の利用料、保守の費用、追加の設定の費用。数年分を足すと、導入時の費用より大きくなることがあります。

承継・M&Aでの意味

TMSを使っている会社は、次の点で評価されます。

  • 数字がすぐ出せる(デューデリジェンスが速い)
  • 配車が属人化していない
  • 荷主別・車両別の採算が説明できる

一方、システムの引き継ぎには注意が必要です。ライセンス、契約、データの移行。システムを引き継ぐときの注意をご覧ください。

数字がすぐ出せることの意味は、確認の手間が減るだけではありません。数字を見て経営してきた会社だという印象につながります。同じ業績でも、説明できる会社とできない会社では受け取られ方が違います。

引き継ぎについては、契約の名義を確認しておいてください。社長個人の名義で契約しているものがあれば、法人に切り替えておく必要があります。承継の直前に気づくと、手続きが慌ただしくなります。

現場に説明するときの伝え方

新しい仕組みを入れると伝えたとき、現場が最初に感じるのは「仕事が増える」です。この感覚をそのままにしておくと、入力は形だけになります。

伝え方としては、何が減るかを具体的に示すのが効きます。この日報がなくなる、この報告が不要になる、この確認の電話が減る。減るものが見えると、受け止め方が変わります。

ドライバーに対しては、労働時間の記録が正確になることを伝えてください。働いた分が正しく残るということは、本人にとっても利点です。

配車を担当している人には、特に丁寧な説明が要ります。長年その人のやり方で回してきたなら、システムに移すことが自分の否定に感じられるかもしれません。その人の判断を仕組みに残す作業だと伝えると、協力を得やすくなります。

データが溜まったら何を見るか

記録が集まっても、見なければ何も変わりません。だから、何を見るかを先に決めておく必要があります。

最初に見たいのは、荷主別の採算です。どの取引が会社を支えていて、どこが足を引っ張っているか。これがわかると、交渉すべき相手も、増やすべき仕事も見えてきます。

次に、車両別の稼働です。動いていない車があるなら、その理由を探します。人が足りないのか、仕事がないのか、故障が多いのか。原因によって打つ手が違います。

三つ目は、配車にかかっている時間です。導入の目的が属人化の解消なら、この数字が改善しているかを見ます。担当者以外でも組めるようになったかどうかも、合わせて確認してください。

見る場は、月に一度で足ります。数字を眺めるだけでなく、前の月と比べて何が変わったか、その原因は何かまで話すと、判断につながります。

荷主とのやりとりにどう使うか

記録が整うと、荷主との話にも使えるようになります。待機の時間、付帯の作業、実際にかかっている拘束時間。これらが数字で出せると、条件を話す材料になります。

特に効くのは、時間の記録です。感覚で「最近待たされている」と言っても伝わりませんが、平均で何分待っているかを示せば、相手も社内で検討できます。

荷主に報告する資料としても使えます。運行の実績、遅延の状況、事故の有無。定期的に出していると、管理ができている会社と見られます。これは取引を続けるうえで効いてきます。

ただし、出す情報の範囲は決めておいてください。求められるままに細かい数字を出し続けると、それが当たり前になります。何を、どの頻度で出すかを取り決めておくほうが無理がありません。

導入した後の見直し

入れて終わりにしないためには、定期的な見直しが要ります。年に一度、使い方を確認する機会を作ってください。

確認するのは、使っていない機能がないか、入力が形だけになっていないか、当初の目的が達成できているかの三点です。使っていない機能があれば、契約を見直せるかもしれません。

入力が形だけになっている部分は、要注意です。数字は出ていても、実態と違っていれば判断を誤ります。実際の運行と記録が合っているかを、抜き取りで確かめてみてください。

当初の目的については、導入前に何を課題としていたかを見返します。その課題が解決したなら、次の課題に進む段階です。解決していないなら、原因が製品にあるのか運用にあるのかを見極める必要があります。

引き継ぎの観点でも、契約の内容を確認しておいてください。名義が個人になっていないか、データを取り出せるか、契約を移せるか。承継の場面で問題になる部分です。

まとめ

TMSの価値は「配車から請求までがつながる」ことです。目的を1〜3個に絞り、実際に使う人がデモを触って選んでください。デジタコ・動態管理との連携を確認し、実績管理から段階的に広げること。最大の落とし穴は、現場が入力しないことです。