EDIとは

企業間で、伝票や帳票のやりとりをデータで直接行う仕組みです。運送業では、次のやりとりが対象になります。

  • 荷主 → 運送会社:配送の依頼、出荷指示
  • 運送会社 → 荷主:配車の回答、実績報告、配送完了の連絡
  • 運送会社 → 荷主:請求データ
  • 荷主 → 運送会社:支払通知

この四つのやりとりのうち、どこから手をつけるかで効果が変わります。件数がいちばん多いのは、たいてい依頼の受け取りです。だから、そこから連携できると、事務の負担がまとまって減ります。

逆に、請求のデータだけを連携しても、効果は月に一度の作業に限られます。効果の大きさは、そのやりとりが月に何回あるかで決まると考えてください。

連携でなくなる手作業

  • FAX・メールで来た依頼の手入力
  • 入力ミスの確認と修正
  • 完了報告の電話・FAX
  • 請求書の作成と送付
  • 荷主側での照合作業

事務の負担が大きく減ります。 特に件数の多いルート配送や宅配では効果が大きくなります。事務・バックオフィスの体制をご覧ください。

効果の大きさは、扱う件数に比例します。だから、まず自社の件数を数えてみてください。月に何件の依頼を受け、何件の完了報告をしているか。この数字がわかると、削減できる時間も見積もれます。

見積もり方は単純です。一件あたりの入力に何分かかっているかを測り、月の件数を掛ける。そこに時間あたりの人件費を掛ければ、月いくらの効果になるかが出ます。

入力ミスの削減も、金額に換算できます。過去一年で、入力の誤りによる手戻りが何件あったか。請求の漏れがあれば、その金額も入れてください。感覚では小さく見えても、合計すると無視できない額になることがあります。

方式の種類

方式特徴
荷主のシステムに接続荷主指定の方式。運送会社側で対応が必要
Web-EDIブラウザで荷主の画面に入力・確認する。導入は容易だが、自社システムへの取り込みは別途必要
ファイル連携CSVなどのファイルを受け渡す。比較的簡易
API連携システム同士が直接やりとりする。柔軟だが開発が必要

Web-EDIは「入力の場所が変わっただけ」になることがあります。自社のTMSに取り込めるかを確認してください。TMS導入の効果と落とし穴をご覧ください。

四つのうち、実際に多いのは荷主のシステムに合わせる形と、ブラウザで入力する形です。どちらも荷主が主導するため、こちらに選択の余地は限られます。

ブラウザで入力する形が「入力の場所が変わっただけ」になりやすいのは、そこに入れた情報が自社の仕組みに入ってこないからです。荷主の画面に入力し、その内容を自社の帳票にもう一度入力する。これでは手間が減りません。

だから、確認すべきは取り込めるかどうかです。データを取り出せる機能があるか、それを自社の仕組みに読み込ませられるか。ここができないなら、効果は限定的だと見込んでおいてください。

複数の荷主がそれぞれ違う方式を求めてくると、こちらの負担は積み上がります。この点は、荷主が増えるほど重くなります。

標準化の動き

荷主ごとに方式が違うと、運送会社側の負担が大きくなります。業界ではデータ項目や連携方式の標準化が進められています。

標準に対応した製品を選んでおくと、新しい荷主との連携が容易になります。標準の内容や名称は更新されるため、最新の情報を確認してください。

導入の進め方

  1. 現状を把握する:荷主ごとに、どの方法で何をやりとりしているか
  2. 件数の多い荷主を特定する:効果が大きい先から
  3. 荷主に相談する:連携の可否と方式
  4. 自社のシステムとの接続を確認する
  5. テストする:並行運用の期間を設ける
  6. 本番に切り替える

並行運用の期間を必ず設けてください。 いきなり切り替えると、トラブル時に業務が止まります。

一つ目の現状把握が大事なのは、自社がどれだけの方式に対応しているかを知らない会社が多いからです。荷主ごとに違うやり方が積み重なり、担当者だけが把握している。この状態を可視化するところから始まります。

一覧を作るときは、荷主名、やりとりの内容、使っている方法、担当者を並べてください。作ってみると、同じような作業を別々の方法でやっていることが見えます。

二つ目の件数の多い荷主から始めるという点は、効果を早く出すためです。少ない荷主から始めても、削減できる時間はわずかです。効果が見えないと、次に進む動機も生まれません。

五つ目の並行運用は、必ず設けてください。切り替えた直後は、想定していなかった問題が出ます。前のやり方が残っていれば、その間も業務は回ります。

費用と負担の分担

  • 荷主が指定するシステムの利用料
  • 自社システムの改修費用
  • 通信費
  • 運用の手間

誰が負担するかを、導入前に確認してください。荷主の都合で導入する場合、費用負担を相談する余地があります。

また、連携によって自社の事務負担が減るのであれば、それは自社の利益でもあります。総合的に判断してください。

負担の話をするときは、金額だけでなく期間も確認してください。初期の費用は荷主が持つが、月々の利用料はこちら、という形もあります。数年分を合計すると、後者のほうが大きくなることがあります。

相談するときは、こちらの状況を率直に伝えるのが早道です。何にいくらかかり、自社の事務がどれだけ減るのか。数字を示せば、相手も判断しやすくなります。

注意点

1. 荷主ごとに増える負担

荷主ごとに違う方式に対応していると、それぞれの運用を覚える必要があります。担当者が限られると属人化します。

2. データの取扱い

荷主の出荷情報は営業機密です。アクセス権限の管理と、退職時の対応を決めてください。個人情報・貨物情報の取扱いをご覧ください。

3. 障害時の対応

システムが止まったときの代替手段(電話、FAX)を決めておいてください。運行は止められません。

4. 契約への反映

データでやりとりする場合も、運送の条件は契約書で明確にしてください。データの項目だけでは、責任範囲や料金の取り決めは決まりません。荷主との契約書を整えるをご覧ください。

一つ目の属人化は、この分野で特に起こりやすい問題です。荷主ごとの違いを覚えている人が一人だと、その人が休んだ日に対応できません。

対策としては、荷主ごとの手順を文書にしておくことです。どの画面から入り、何を入力し、いつまでに出すか。画面の写真を貼っておけば、初めての人でも辿れます。

二つ目のデータの扱いは、軽く見ないでください。荷主の出荷の情報は、その会社の事業の中身そのものです。誰がアクセスでき、退職したときにどう止めるかを決めておく必要があります。

三つ目の障害時の対応も、決めておかないと現場が困ります。連絡が付かなくなったとき、誰にどう連絡するか。運行は止められないため、代わりの手段が要ります。

四つ目の契約への反映は、忘れられがちな点です。データでやりとりできるようになっても、運賃や責任の範囲が決まるわけではありません。契約書は別に整えてください。

取引の安定につながる

データ連携が確立すると、荷主にとって切り替えのコストが高くなります

  • 他社に変えると、また連携を作り直す必要がある
  • 業務プロセスが自社と結びついている

これは、取引の継続性という形で企業価値になります評価が上がる会社の条件をご覧ください。

M&Aでの意味

  • 荷主との連携状況(何社と、どの方式で)
  • 連携によって業務が効率化されているか
  • システムの契約とライセンス(システムを引き継ぐときの注意
  • データの管理体制

連携している荷主が多いことは、関係の深さを示す材料になります。

この四項目のうち、三つ目の契約とライセンスは、承継の直前に慌てることが多い部分です。誰の名義で契約しているか、譲渡のときに引き継げるか。事前に確認しておいてください。

荷主のシステムを使っている場合、その利用が承継後も続けられるかも確認が要ります。株主が変わったときの扱いが決まっていることもあるため、契約の内容を読んでおく必要があります。

荷主から求められたときの判断

連携は、こちらから始めるより、荷主から求められて始めることのほうが多いでしょう。そのときに考えるべき点があります。

まず、費用の負担です。荷主の都合で導入するなら、費用の一部を負担してもらえないかを相談する余地があります。切り出しにくい話ですが、聞いてみる価値はあります。

次に、自社にとっての効果です。荷主の都合であっても、自社の事務が減るなら利点があります。減る時間を見積もり、費用と比べてください。

三つ目は、他の荷主への展開です。同じ仕組みを他にも使えるなら、投資の価値は上がります。使い回せない専用のものなら、その荷主との取引が続く前提の投資になります。

断るという判断もあり得ます。ただし、応じられないと取引が細ることもあります。判断するときは、その荷主との取引の重さと、投資の額を並べて考えてください。

担当を複数にする

連携が増えるほど、日々の運用は複雑になります。だから、担当を一人に集中させない仕組みが要ります。

基本は、手順を文書にすることです。そのうえで、少なくとも二人が同じ作業をできる状態にしておく。一人が休んでも回ることを、実際に試してみてください。

アカウントの管理も一緒に考える必要があります。担当者個人のアカウントだけで動いていると、その人が辞めたときに入れなくなります。会社として管理する形にしておいてください。

退職者のアカウントを止める手順も決めておく必要があります。荷主の情報にアクセスできる状態が残るのは、相手にとっても問題です。

連携が増えたときの整理

荷主ごとに違う仕組みが積み上がると、いずれ管理しきれなくなります。だから、定期的に整理する機会が要ります。

整理するときに見るのは、使っていない連携がないか、同じような作業を別々にやっていないか、まとめられる部分がないかの三点です。取引が終わった荷主の仕組みが残っていることもあります。

業界では、やりとりの方式をそろえる動きが進められています。標準に対応した仕組みを選んでおくと、新しい荷主との連携が楽になります。ただし、標準の内容や名称は更新されるため、選ぶ時点で最新の状況を確認してください。

整理の作業は年に一度で足ります。一覧を見直し、不要なものを止め、手順書を更新する。この程度で、複雑さの積み上がりは抑えられます。

取引が深まることの意味

連携が確立すると、荷主にとって切り替えが面倒になります。これは自社にとっての強みですが、両面があることも意識しておいてください。

強みの面は、取引が続きやすくなることです。他社に替えるには、また連携を作り直す必要がある。この手間が、こちらを選び続ける理由になります。

もう一面は、こちらも抜けにくくなることです。採算が合わない取引でも、連携があると簡単には離れられません。だから、連携の有無にかかわらず、その取引の採算は見ておく必要があります。

承継の場面では、この深さが評価につながります。何社と、どういう形で連携しているかを整理しておくと、関係の深さを示す材料になります。契約の名義やデータの扱いも含めて、一覧にしておいてください。

連携を始める前に社内を整える

荷主とデータでつながる前に、自社の側が受け取れる形になっているかを確認する必要があります。ここが整っていないと、連携しても情報が止まります。

確認するのは三点です。受け取ったデータを保存する場所があるか、それを配車に使える形になっているか、実績を返せる仕組みがあるか。どれかが欠けていると、結局は人が間に入ることになります。

整っていない場合は、先に社内の仕組みを整えるほうが順序として自然です。ただし、荷主の都合で時期が決まることもあります。その場合は、当面は人が間に入る形で始め、後から自動化していく進め方もあります。

どちらにしても、今どうなっているかを把握しておくことが出発点です。把握していないまま話を進めると、想定外の作業が後から出てきます。

まとめ

EDI連携は、依頼の手入力と完了報告の往復をなくします。Web-EDIは導入が容易ですが、自社システムに取り込めるかを確認してください。件数の多い荷主から始め、並行運用の期間を必ず設けること。連携の確立は、取引の継続性という形で企業価値になります。