採用より先に、辞めない工場にする
人手不足への対応というと採用の話になりがちですが、離職が続いている状態で採用を増やしても、穴の空いたバケツに水を注ぐことになります。まず定着を見てください。
入社後1年以内の離職が多い場合、原因は次のいずれかに集中していることが多くあります。
- 初日から現場に入れられ、何を覚えればよいか分からない
- 作業の判断基準が人によって違い、叱られる理由が分からない
- シフトが直前まで決まらず、生活が組み立てられない
- 暑さ・寒さ・重量物など、事前に聞いていた内容と実態が違う
いずれも、採用単価を上げるより先に手を打てるものです。
作業標準は、定着策でもある
食品工場の作業は、言葉で説明しにくいものが多くあります。「このくらい」「いい感じに」で伝えられている工程は、新人にとって習得の壁になります。
写真や短い動画で手順を残すだけでも、教える側の負担と教わる側の不安が減ります。副次的に、歩留まりのばらつきも小さくなります。標準化は、品質・歩留まり・定着の3つに同時に効く投資です。
多能工化で、シフトの余裕をつくる
特定の工程を1人しか担当できない状態は、その人が休むだけでラインが止まることを意味します。承継の場面でも、属人化はリスクとして必ず指摘されます。
スキルマップ(誰がどの工程をどのレベルでできるか)を1枚つくり、各工程に少なくとも2人は担当できる状態を目指します。すぐには埋まりませんが、可視化すると教育の優先順位が明確になります。
外国人材の受け入れで確認すべきこと
食品製造の現場では、外国人材の存在が欠かせなくなっています。受け入れにあたっては、制度上の要件に加えて、次の実務が重要になります。
- 在留資格に応じた業務範囲と手続き 制度は改正されることがあるため、最新の情報を確認します。
- 安全・衛生教育を理解できる形で行う 母語や図解を用いた教材、掲示の多言語化。
- 生活面の支援 住居、医療、行政手続き。定着率に直結します。
- 賃金・労働条件の適正な運用 同じ仕事に同じ基準を適用しているか。
承継の場面では、在留資格の管理状況と雇用条件の適正さが確認されます。書類が整っていないと、それ自体がリスクとして扱われます。
「いなくなると困る人」を洗い出す
承継準備の観点では、次の役割が誰に依存しているかを明らかにしておくことが重要です。
- 配合・レシピの決定
- 原料の目利きと仕入交渉
- 品質管理・記録の運用
- 生産計画とシフトの編成
- 主要取引先との窓口
社長がこのうち3つ以上を担っている場合、承継後の引き継ぎに時間がかかります。すぐに移せなくても、判断の基準を文書に残しておくだけで違います。
人がいることは、そのまま価値になる
食品工場のM&Aで、買い手が最も懸念するのは「買った後にラインが回るか」です。逆に言えば、働き続けられる人がいて、教育の仕組みがある工場は、それだけで評価されます。
人材への取り組みは、日々の稼働と将来の企業価値の両方に効きます。労務面の整備とあわせて進めてください(労務リスクの整理)。
※ 外国人材の受け入れに関する制度・在留資格の要件は、法令の改正によって変わります。実際の受け入れにあたっては、出入国在留管理庁の公表情報および専門家にご確認ください。