パターン1:先代が現場に残り続ける

いちばん多い型です。代表を交代したものの、先代が毎日工場に来て、配合や段取りに口を出す。従業員は誰の指示を聞けばよいか分からなくなり、後継者は決められなくなります。

先代に悪気はありません。心配だから来るのです。だからこそ、交代前に関わり方をルールとして決めておく必要があります。出社の頻度、意思決定に関与する範囲、従業員への指示の可否。文書にするのが望ましいです。先代が会社に残るときのルール作りで設計の仕方を扱っています。

パターン2:後継者が就任直後に大きく変える

逆のパターンです。承継直後に、取引先の見直し、人事の刷新、設備の入れ替えを一気に進める。理屈としては正しいことが多いのですが、現場と取引先の信頼が追いつかず、離職と取引離れを招きます。

特に食品製造業は、職人的な技能を持つ従業員と、長年の取引先で成り立っています。最初の1年は変えるより聞くほうが結果的に早い、というのが実感です。承継直後にやってはいけないことにまとめました。

パターン3:数字が引き継がれない

先代の頭の中にしか原価がない会社では、後継者は値決めができません。「この商品はいくらで受けてよいのか」が分からないまま、言われた価格で受注し続けて利益を失っていきます。

原材料が上がったときに価格改定を求められないのも、根拠となる数字がないからです。原材料高騰と価格転嫁で扱っているとおり、品目別の原価は承継前に整えておくべきものです。

パターン4:許認可と契約が実態と合っていない

食品製造業に特有の型です。営業許可の名義、施設の届出内容、食品衛生責任者の登録が実態とずれたまま代表が変わり、後になって発覚します。OEM契約書が見つからない、あるいは口約束のままだった、というのもよくあります。

承継のスキームによって許可の扱いは変わるため、方式を決める前に確認するのが正解です。食品衛生法の営業許可は引き継げる?を先に読んでおいてください。

パターン5:家族の合意が取れていない

会社は継いだものの、他の兄弟姉妹が納得しておらず、相続の段階で揉める。あるいは後継者の配偶者が反対していて、数年後に本人が辞める。

これは会社の外で起きるので見えにくく、しかも起きたときの影響が大きい型です。承継の話を切り出す段階から、家族全体を視野に入れる必要があります。家族会議の開き方遺留分への配慮で扱っています。

5つに共通する原因

並べてみると、いずれも「決めていなかったこと」が原因です。関わり方、数字、名義、家族の合意。どれも、時間があるうちに決めておけば防げます。

逆に言えば、承継の準備とは新しいことを始めるより、曖昧なまま置いてきたことに決着をつける作業だと言えます。何から手をつけるかは承継準備の優先順位の付け方を参考にしてください。