いつ切り出すか
結論から言えば、実行の5年以上前が望ましいタイミングです。理由は単純で、家族の側にも人生の予定があるからです。
子どもが会社を継ぐには、勤め先を辞める、住む場所を変える、配偶者の理解を得るといった準備が要ります。「来年から頼む」では対応できません。逆に、5年あれば「継がない」という結論が出ても、別の道を探す時間があります。
誰を呼ぶか
最初の場は、少人数のほうがうまくいきます。経営者と配偶者、そして子ども。ここに会社の役員や親族外の人を入れると、本音が出にくくなります。
一方で、子どもの配偶者をどう扱うかは慎重に考えてください。最初から呼ぶと構えさせてしまいますが、後から知らされると疎外感が残ります。「まず本人と話し、方向が見えたら夫婦で考えてもらう」という順番が現実的です。
最初に伝えるべきは「継いでほしい」ではない
いきなり「継いでくれ」と切り出すと、相手は答えを求められたと感じて身構えます。多くの場合、その場では曖昧な返事になり、話が終わってしまいます。
先に伝えるべきは、次の3つです。
- 自分が何歳までにどうしたいと思っているか
- 会社の現状(数字と、抱えている課題)
- 考えられる選択肢が複数あるということ
特に3つ目が重要です。「継がなければ会社が終わる」と受け取られると、それは相談ではなく圧力になります。親族内・社内・M&A・廃業を1枚で比べるのような資料を用意して、継がない道もあると明示することで、初めて対等な話し合いになります。
数字はごまかさない
「継いでほしいから良い面だけ話す」は逆効果です。継いだ後に実態を知った後継者は、話が違うと感じます。
借入の残高と個人保証、老朽化した設備、取引先の集中度、人の高齢化。都合の悪い数字も含めて出したうえで、「だからこの5年でこう変える」という計画を一緒に見せる。この形がいちばん納得されます。
その場で決めないこと
初回の家族会議で決めるべきなのは、「次にいつ話すか」だけです。継ぐか継がないか、株をどうするか、財産をどう分けるかは持ち帰りにします。
特に、兄弟姉妹がいる場合の財産分けをこの場で決めようとすると、承継の話が相続争いの話にすり替わります。兄弟で継ぐときに決めておくことと遺留分への配慮で扱っている論点なので、別の場を設けてください。
2回目以降で決めていくこと
回を重ねながら、次の順で具体化していきます。
- 継ぐ意思の有無(本人と配偶者の合意)
- いつから、どの役割で入るか
- 株式をどう移すか、その資金と税金
- 継がない子への配慮をどうするか
子どもに継ぐ意思がないと分かった場合は、子どもに継ぐ意思がないときの選択肢へ進んでください。落胆する必要はありません。そこから開ける道は、まだ複数あります。