10年計画にする理由
「10年は長すぎる」と感じられるかもしれません。しかし食品製造業では、後継者の育成、原価管理の整備、設備の更新、許可や衛生管理の体制づくりと、いずれも年単位でしか動かないものが並びます。逆に言えば、10年あればほとんどの課題は片づきます。
短い準備期間でも承継そのものはできます。ただ、選択肢は確実に減ります。準備が足りないまま第三者に譲る場合、価格にも条件にも表れます。
10年前〜8年前:選択肢を並べ、数字を作り始める
この時期の目的は、決めることではなく並べることです。親族内承継、社内承継、第三者承継(M&A)、廃業の4つを同じ土俵に置いて比べます。比較の観点は親族内・社内・M&A・廃業を1枚で比べるにまとめています。
同時に着手したいのが、品目別の採算を出せる状態にすることです。原価計算は整備に時間がかかるので、いちばん早く始めるべき仕事です。
8年前〜5年前:磨き上げに投資する
後継者候補がいるなら、現場を一通り経験させる期間です。いない場合は、会社を「引き継ぎやすい形」に整えることに集中します。具体的には次の4つです。
- 品目別・ライン別の採算が見えること
- 価格改定を実現した実績があること
- 衛生管理の記録が継続的に残っていること
- 特定の人がいなくても回る工程になっていること
この4つは、後継者にとっても買い手にとっても同じように効きます。どちらの道を選んでも無駄にならない投資です。
5年前〜3年前:許認可・契約・資産を整理する
食品衛生法に基づく営業許可、施設の名義、OEM契約、工場の土地建物の所有者。ここが個人名義や口約束のまま残っていると、承継の直前に必ず引っかかります。個人名義の設備・車両・土地をどう整理するかで扱っている論点です。
金融機関に対しても、この時期から承継の方針を共有しておきます。個人保証の解除は、前もって相談していた会社ほど話が進みます。
3年前〜1年前:実行の準備に入る
親族内・社内承継なら、株式の移転方法と資金、代表交代の時期を確定します。第三者承継なら、相手探しを始める時期です。相手が見つかってから最終契約までは、順調でも半年から1年はかかります。
従業員や取引先への開示は、この段階での大きな論点になります。順番を間違えると混乱を招くので、従業員にいつ伝えるかを先に読んでおいてください。
直前1年:引き継ぎと、その後の関わり方
代表交代の登記、許認可の届出、取引先への挨拶回り。ここは事務作業が中心になりますが、同時に「先代がその後どう関わるか」を決める時期でもあります。曖昧なまま残ると、後継者が動けなくなります。引退後に会社へどう関わるかで設計の考え方を示しています。
今が何年前かで、やることが変わる
すでに5年を切っているなら、上の順序をそのまま圧縮するのではなく、優先順位を付け直したほうが現実的です。何から手をつけるべきかは承継準備の優先順位の付け方を参考にしてください。