比較の軸は5つ

4つの選択肢を比べるとき、経営者が実際に気にされるのは次の5つです。

  1. 手元に残る金額
  2. 従業員の雇用
  3. 営業許可・設備・取引先の扱い
  4. 個人保証の解除
  5. 実行までに要する時間

比較表の骨格

親族内承継社内承継M&A廃業
手元に残る金額 退職金が中心(贈与・相続の税負担あり) 退職金+譲渡対価(買い取り可能額に依存) 譲渡対価が中心(規模により大きくなりうる) 資産売却額−撤去費用−負債(持ち出しになることも)
従業員の雇用 継続 継続 原則継続(契約で明記できる) 全員が離職
営業許可 会社が同じなら継続 会社が同じなら継続 株式譲渡なら継続/事業譲渡は要手続 廃止
設備・取引先 継続 継続 継続(買い手の方針による) 設備は処分、取引は終了
個人保証 後継者へ引継ぎ、または解除を協議 同左(解除の要件整備が鍵) 原則として解除される 返済すれば解消
要する時間 5〜10年 3〜7年 1〜3年 半年〜2年

この表は骨格です。実際には自社の数字を入れて作ります。

自社の数字を入れる手順

手順1:廃業したときの金額を出す

意外に思われるかもしれませんが、ここから始めるのが最も分かりやすいです。食品工場の廃業には、設備の撤去、排水設備や冷媒の処理、建物の解体または原状回復、従業員への支払い、在庫処分、借入の一括返済がかかります。

この試算を出すと、他の選択肢と比べる基準ができます。詳しくは廃業とM&A、どちらを選ぶべきかにまとめています。

手順2:譲渡した場合のおおよその評価を知る

正確な金額は交渉で決まりますが、おおよそのレンジは事前に把握できます。食品工場の売却価格はどう決まるのか食品工場の売却相場はあるのかを参照してください。

手順3:親族内・社内承継の税負担を試算する

自社株の評価額が分かれば、贈与・相続でかかる税額のおおよそが見えます。事業承継税制を使う場合の効果もあわせて確認します。自社株の評価と移転をご覧ください。

金額だけで決めない

表を作ると、多くの場合はM&Aか社内承継の手取りが大きく出ます。ただし、金額以外の要素も重要です。

  • 従業員の雇用をどう考えるか
  • 会社の名前や商品を残したいか
  • 地域との関係をどうするか
  • 自分が引退後どう関わりたいか

この表は、決めるための道具ではなく、比べるための道具です。数字を並べたうえで、最後は経営者ご自身の価値観で決めていただくものだと考えています。

比較表を作るタイミング

早いほどよいです。時間があるうちなら4つとも選べますが、時間が経つほど選べる数が減ります。「まだ早い」と思う社長ほど早く動くべき理由もあわせてご覧ください。