食品工場が受ける影響

攻撃を受けると、次が起こりえます。

  • 生産管理システムが停止し、生産が止まる
  • 受発注が処理できず、出荷が止まる
  • 設備の制御システムに影響が出る
  • 取引先・従業員の情報が漏えいする
  • 復旧に数日〜数週間かかる
  • 取引先への供給が止まり、信用を失う

食品は納期の遅れが直接クレームになります。日配品を扱う工場では、1日止まるだけで大きな影響が出ます。

基本の対策(費用が小さい順)

1. バックアップを取る

最も重要で、最も効果的な対策です

  • 定期的に取る(日次または週次)
  • ネットワークから切り離した場所にも保管する(外付けHDD、テープ)
  • 複数世代を保持する
  • 復元できるか、実際に試す

ランサムウェアは、ネットワークにつながったバックアップも暗号化します。切り離した保管が不可欠です。

また、「バックアップはあったが、復元できなかった」という事例があります。年1回は復元テストを行ってください。

2. 更新プログラムを適用する

  • OSとソフトウェアを最新に保つ
  • サポートが終了したOSを使い続けない
  • ルーター、ファイアウォールの更新

古い設備に付属するパソコンが、サポート終了のOSのままという状態が食品工場ではよくあります。

更新できない場合は、ネットワークから切り離すことを検討してください。

3. パスワードを見直す

  • 初期パスワードのまま使っていないか
  • 使い回していないか
  • 共有していないか(誰が操作したか分からなくなります)
  • 多要素認証を設定できるものは設定する

4. アカウントを整理する

  • 退職者のアカウントを削除する
  • 不要な管理者権限を外す
  • 誰がどこにアクセスできるかを一覧にする

承継時のシステム引き継ぎで棚卸しの方法を扱っています。

5. 従業員への教育

  • 不審なメールの添付ファイルを開かない
  • USBメモリの取扱い
  • 怪しいと思ったら報告する
  • 報告した人を責めない

最後が重要です。「開いてしまった」と報告できる雰囲気がないと、発見が遅れます。

ネットワークの分離

食品工場で特に重要な対策です。

  • 生産設備のネットワークと、事務系のネットワークを分ける
  • 設備の制御用パソコンをインターネットに直接つながない
  • 外部からの保守用接続を必要時のみ有効にする
  • 無線LANのゲスト用と業務用を分ける

「事務のパソコンが感染し、生産設備にも波及する」という経路を断つことが目的です。

取引先・委託先経由のリスク

  • 取引先のシステムに接続している場合
  • 設備メーカーが遠隔保守で接続している場合
  • クラウドサービスの障害・侵害
  • 取引先を装ったメール

設備の遠隔保守は、便利な一方でリスクにもなります。接続の方法と、常時接続かどうかを確認してください。

起きたときの備え

あらかじめ決めておくこと

  1. 誰に連絡するか(社内、システム業者、警察、専門機関)
  2. ネットワークをどう遮断するか(感染の拡大を止める)
  3. 手作業でどこまで業務を続けられるか
  4. 取引先への連絡方法(メールが使えない場合を想定)
  5. 復旧の優先順位

3番目が食品工場では重要です。システムが止まっても、紙とFAXで最低限の受注・出荷を続けられるか。この手順を用意しておくと、被害を大きく減らせます

身代金は払わない

ランサムウェアの要求に応じても、復元できる保証はありません。また、支払いが次の攻撃を招くという指摘もあります。

バックアップからの復旧を前提に備えてください

相談先

  • 取引しているシステム業者
  • 情報処理推進機構(IPA)の相談窓口
  • 警察のサイバー犯罪相談窓口
  • 都道府県の産業支援機関

平時に相談先を確認しておいてください。起きてから探すのでは遅れます。

保険

サイバー攻撃による損害を補償する保険があります。次を確認してください。

  • 復旧費用が対象か
  • 営業が停止した場合の損失が対象か
  • 取引先への賠償が対象か
  • 調査費用が対象か

既存の保険で対応できる範囲も確認してください。生産物賠償責任保険(PL保険)の見直しをご覧ください。

承継・M&Aでの扱い

買収監査では、次が確認されることがあります。

  • 過去にインシデントが発生していないか
  • バックアップの体制
  • 個人情報の管理状況
  • サポート終了のOSを使っていないか

過去にインシデントがあった場合は、開示が必要です。隠したまま譲渡すると、表明保証違反になりえます。最終契約書の要点をご覧ください。

まず何をするか

  1. バックアップを取っているか確認する
  2. 取っていれば、復元できるか試す
  3. ネットワークから切り離した保管を追加する
  4. 退職者のアカウントを削除する
  5. サポート終了のOSがないか確認する

1〜4は、費用をほとんどかけずにできます。ここから始めてください。