PL保険の基本

製造・販売した製品が原因で、他人の身体や財物に損害を与えた場合の賠償責任を補償する保険です。

食品製造業では、食中毒、異物混入による傷害、アレルゲンの表示ミスによる健康被害などが対象となりえます。

見落とされやすい点:回収費用

基本的なPL保険では、回収そのものにかかる費用は対象外のことがあります。

回収費用には次が含まれます。

  • 回収の告知費用(社告、ウェブサイト)
  • 回収作業の人件費・輸送費
  • 回収した製品の廃棄費用
  • 代替品の製造・供給費用
  • 取引先への補償
  • コールセンターの設置費用

これらは、賠償責任とは別の費用です。リコール費用を補償する特約や別の保険を付けているかを確認してください。

実際の回収では、賠償額より回収費用のほうが大きくなることが珍しくありません。回収が起きたときの初動をご覧ください。

確認すべき項目

1. 補償の対象

  • 賠償責任のみか、回収費用も含むか
  • 身体障害だけか、財物損壊も含むか
  • 取引先の営業損失は対象か

2. 補償の限度額

1事故あたり、期間中の総額。自社の売上規模と出荷先の広がりに見合っているかを確認してください。

大手量販店やコンビニに納めている場合、回収の規模が大きくなります。

3. 免責金額

いくらまでは自己負担かを確認します。

4. 対象となる製品の範囲

すべての製品が対象か、特定の品目に限定されていないか。新しい品目を始めたときに、保険の対象に含まれているかを確認してください。

5. 対象となる期間

製品を引き渡した時点か、事故が起きた時点か、請求があった時点か。保険を切り替える際に空白が生じないかを確認してください。

6. 免責事由

  • 意図的な法令違反
  • 製品自体の損害(自社製品の交換費用など)
  • 期待された性能を満たさないことによる損害

細かい規定は約款によります。保険代理店に、自社の想定シナリオで説明を求めてください

見直しが必要な場面

  • 新しい品目を始めた
  • 売上が大きく伸びた
  • 取引先が大手に広がった
  • 輸出を始めた(海外での賠償は別の扱いになることがあります)
  • 受託製造を始めた
  • 直販・ECを始めた
  • 数年間見直していない

輸出を始めた場合は特に注意してください。国内向けの保険では、海外での訴訟に対応できないことがあります。食品の輸出をご覧ください。

取引先から求められる場合

大手との取引では、一定額以上のPL保険への加入が取引条件になっていることがあります。

契約書を確認し、求められている補償額を満たしているかを確認してください。契約書の棚卸しをご覧ください。

受託製造の場合の責任分担

PB・OEMでは、製造者と委託者のどちらが責任を負うかが契約で定められていることがあります。

  • 製造上の問題(異物、微生物)→ 製造者
  • 設計・配合上の問題 → 委託者
  • 表示の問題 → 契約による

この分担と、保険の補償範囲が整合しているかを確認してください。OEM・受託製造業の事業承継をご覧ください。

承継時に確認される点

  • PL保険に加入しているか
  • 補償の限度額が適切か
  • 回収費用が補償されるか
  • 全製品が対象になっているか
  • 取引先の要求を満たしているか
  • 過去の事故と保険金支払いの履歴

買い手は、引き継いだ後に大きな回収が起きたときのリスクを見ています。保険で手当てされていることは、安心材料になります。

また、M&Aで会社の形態が変わる場合、保険の継続手続きが必要になることがあります。クロージング時の確認事項に含めてください。クロージングでやることをご覧ください。

保険だけに頼らない

保険は起きてしまった後の手当てです。起こさない体制のほうが重要であることは言うまでもありません。

また、保険で費用が補償されても、信用の毀損は回復できません。取引を失うリスクは保険ではカバーできません。

異物混入対策、表示の確認体制、衛生管理の徹底。これらへの投資が本筋です。異物混入を防ぐ体制をご覧ください。

※ 保険の補償範囲・免責事由は保険会社や契約内容によって異なります。加入・見直しにあたっては、必ず保険代理店・保険会社にご確認ください。