2方向の追跡

方向問い使う場面
バックワードこの製品は、どの原料から作られたかクレーム発生時の原因調査
フォワードこの原料は、どの製品に使われ、どこへ出荷されたか原料に問題が判明したときの回収範囲の特定

両方向が追えて初めて機能します。片方だけでは、回収範囲を絞れません。

つなぐべき情報

次の情報が、ロットを軸につながっている必要があります。

  1. 原料の受入:仕入先、原料ロット、入荷日、数量
  2. 原料の使用:どの製造ロットに、どの原料ロットを、いくつ使ったか
  3. 製造:製造ロット、製造日、生産数、担当者、設備
  4. 包装:包材のロット(該当する場合)
  5. 出荷:出荷日、出荷先、製造ロット、数量

2番目が最も抜けやすい部分です。「その日に入っていた原料を使った」という記録では、複数ロットが混在したときに追えません。

ロットの設計

ロットの単位をどう決めるか

  • 製造日単位
  • 仕込み単位(釜、バッチ)
  • シフト単位
  • ライン × 日単位

細かいほど回収範囲が絞れますが、管理の手間が増えます

判断の目安は、「1ロットに問題があったとき、回収する量がどれだけになるか」です。1日分がすべて1ロットだと、回収範囲が大きくなります。

ロット番号の付け方

  • 製造日が読み取れる形にする
  • ライン・シフトが分かる形にする
  • 製品に印字できる形にする

賞味期限表示だけでは、ロットを特定できないことがあります。同じ期限で複数ロットがある場合、区別できません。

記録の方法

紙で行う場合

製造日報に、次を記入します。

  • 製造ロット番号
  • 使用した原料名と原料ロット番号
  • 使用数量

原料ロット番号の記入が要です。ここが抜けると、バックワードの追跡ができません。

実務的には、原料の袋・容器に貼られたラベルを剥がして日報に貼るという方法も使われます。転記のミスがなく、確実です。

バーコード・QRコードを使う

  • 原料に入荷時にラベルを貼る
  • 使用時に読み取る
  • 製造ロットと自動で紐づく

転記のミスがなくなり、追跡が一瞬で終わります。ただし、機器の環境耐性を確認してください。衛生記録の電子化をご覧ください。

システムで管理する

生産管理システムのロット管理機能を使う形です。生産管理システムの入れ方をご覧ください。

模擬回収で検証する

仕組みを作ったら、実際に試してください。これを模擬回収と呼びます。

手順

  1. 過去の製品ロットを1つ選ぶ
  2. そのロットに使われた原料ロットをすべて特定する(バックワード)
  3. その原料ロットが使われた他の製品をすべて特定する(フォワード)
  4. それらの出荷先と数量を特定する
  5. 所要時間を測る

目標は数時間以内です。1日以上かかるようでは、実際の回収時に対応が遅れます。

やってみると見つかる問題

  • 原料ロットの記録が抜けている
  • 複数ロットが混在していて、特定できない
  • 出荷記録と製造ロットが紐づいていない
  • 記録がどこにあるか分からない
  • 担当者しか調べられない

これらは実際に試さないと分かりません。年1回は実施してください。検証と見直しの一環として位置づけられます。

取引先からの要求

大手との取引では、トレーサビリティが取引の条件になっていることがあります。

  • ロット管理の方法の説明
  • 模擬回収の実施と結果の提出
  • 追跡にかかる時間の証明

取引先の工場監査をご覧ください。

回収時の実際

実際に回収が必要になったとき、トレーサビリティがあれば次ができます。

  • 対象ロットを正確に特定できる → 回収範囲を最小化できる
  • 出荷先を即座に把握できる → 連絡が速い
  • 原因の調査が進む
  • 取引先・行政への説明ができる

「範囲が分からないので全ロット回収」となると、損失が桁違いになります回収が起きたときの初動をご覧ください。

承継・M&Aでの意味

買収監査では、トレーサビリティの仕組みと、模擬回収の実績が確認されます。

これは、回収が起きたときの損失規模に直結するためです。仕組みがない工場は、潜在的なリスクが大きいと評価されます。

法務デューデリジェンス品質・認証は価格に効くかをご覧ください。