まず、意思を正しく確認する
「継ぐ気はない」の中身は、実はいくつかに分かれます。確認する価値があります。
- 会社そのものに興味がない(今の仕事を続けたい)
- 経営者になるのが不安(借入や保証、従業員への責任)
- 親と一緒に働くのが嫌(先代の関わり方の問題)
- 今の会社の将来性を感じない(老朽化した設備、薄い利益)
1つ目なら、意思は動きません。ですが2〜4つ目は、条件が変われば答えが変わる可能性があります。
特に4つ目は重要です。「あんな古い工場を継いでも」と思われている場合、設備更新や収益構造の改善が進めば見方が変わることがあります。老朽化した工場・設備をどう引き継ぐかを参照してください。
選択肢1:社内の幹部に承継する
次に検討すべきは、社内です。工場長、製造部長、営業責任者。長く働いてきた人の中に、候補がいることがあります。
ただし、株の買い取り資金と個人保証が壁になります。ここを設計してから打診するのが鉄則です。社内承継(MBO)の設計と幹部を役員に上げるかをご覧ください。
選択肢2:第三者に承継する(M&A)
社内にもいない場合、第三者への譲渡が現実的な選択肢になります。ここで多くの経営者が抵抗を感じられますが、実際に起きることは次のとおりです。
- 従業員の雇用は、原則としてそのまま引き継がれます
- 会社名や工場をそのまま残す買い手も多くあります
- 株式譲渡であれば、営業許可も継続します
- 先代が一定期間、顧問として残る形も一般的です
食品製造業は、買い手から見て魅力のある業種です。営業許可の取得済みの施設、稼働している設備、既存の取引先、作れる人。これらをゼロから作るには何年もかかります。買い手は食品工場の何を見ているかで詳しく扱っています。
選択肢3:子どもに「株だけ」持ってもらう
あまり知られていない選択肢です。経営は社内の幹部や外部から招いた人に任せ、子どもは株主として残る。所有と経営を分ける形です。
子どもが別の仕事を続けながら、会社との関係は保てます。ただし、経営を任せる人との信頼関係と、権限の線引きが不可欠です。曖昧だと、かえって会社が動かなくなります。
選択肢4:廃業
最後の選択肢ですが、必ず費用を試算してから判断してください。食品工場の廃業には、設備の撤去、排水設備や冷媒の処理、建物の解体または原状回復、従業員への支払い、在庫処分、借入の一括返済がかかります。
試算すると、譲渡したほうが手元に残る金額が多いという結論になることが少なくありません。廃業とM&A、どちらを選ぶべきかで比較の方法を示しています。
やってはいけないこと
いちばん避けたいのは、何も決めずに数年が過ぎることです。「そのうち気が変わるかもしれない」と待っている間に、設備は古くなり、従業員は高齢化し、取引先は静かに離れていきます。
子どもの意思を確認したら、その前提で他の選択肢を並べ、時期を決めて動く。それが結果的に、子どもにとっても最善の形になります。比べ方は親族内・社内・M&A・廃業を1枚で比べるにまとめました。