なぜ食品工場で問題になるのか
食品工場では、次のような形で他社の従業員が構内で働くことがあります。
- 繁忙期の増産対応
- 包装・箱詰めなど特定工程の外注
- 清掃・洗浄の委託
- 倉庫内作業の委託
- 設備の保守
これらが請負契約として結ばれているのに、実態は派遣になっている——という状態が起こりえます。
区分の基本
| 労働者派遣 | 請負 | |
|---|---|---|
| 指揮命令 | 派遣先が行う | 請負業者が行う |
| 契約の対象 | 労働力の提供 | 仕事の完成 |
| 必要な手続き | 派遣元の許可、派遣契約 | 請負契約 |
| 期間制限 | あり | なし |
最も重要な違いは、誰が指揮命令をするかです。
「偽装請負」とされる典型例
1. 発注者の社員が直接指示している
「もっと早く」「この順番で」「今日はこっちのラインへ」。発注者が請負業者の従業員に直接指示すると、派遣とみなされる可能性があります。
食品工場では、ラインの状況に応じてその場で指示を出す必要があるため、この問題が起きやすくなります。
2. 作業の割り当てを発注者が決めている
誰をどの工程に配置するかを、発注者が決めている。
3. 勤怠を発注者が管理している
始業・終業の時刻、休憩、残業を発注者が指示している。
4. 発注者の設備・材料をそのまま使い、業者が独立性を持たない
設備の使用自体は問題になりませんが、業者が自らの裁量で仕事を完成させる実態がないと、請負として認められにくくなります。
適正な運用のために
請負として行う場合
- 請負業者が現場責任者を配置する
- 発注者からの指示は、その責任者を通す
- 作業の範囲・完成の基準を契約で明確にする
- 作業エリアを可能な限り区分する
- 勤怠管理は請負業者が行う
- 作業手順は請負業者が定める(品質・衛生の要求事項は発注者が示す)
「責任者を通す」運用を徹底できるかが実務上の分かれ目です。現場では、つい直接声をかけてしまいます。
派遣として行う場合
- 派遣元が許可を受けているか確認する
- 労働者派遣契約を締結する
- 派遣先責任者を選任する
- 派遣先管理台帳を作成する
- 期間制限を遵守する
- 同一労働同一賃金への対応を確認する
派遣であることを認めて、適正に運用するほうが安全な場合が多くあります。
衛生管理との関係
食品工場では、構内で働くすべての人に衛生管理のルールを守ってもらう必要があります。
- 作業着・帽子・マスクの着用
- 手洗い・消毒
- 健康状態の確認
- 異物混入の防止
これらの指示は、品質・衛生上の要求事項として契約に定め、請負業者を通じて徹底してもらう形が適切です。
ただし、実態として発注者が直接管理していると、区分の判断に影響する可能性があります。運用の設計は慎重に行ってください。
労災が起きたとき
構内で他社の従業員が被災した場合、責任の所在が問題になります。
- 設備の安全性は発注者の責任範囲
- 作業方法の指示は契約形態による
- 元方事業者としての責任が生じる場合がある
設備の安全対策は、誰が作業するかに関わらず発注者の責任です。機械の挟まれ・巻き込まれをどう防ぐかをご覧ください。
点検の手順
- 構内で作業している他社を一覧にする
- それぞれの契約形態を確認する(請負か派遣か)
- 実際に現場を見て、誰が指示を出しているか確認する
- 請負の場合、現場責任者が配置されているか確認する
- ずれがあれば、運用を改めるか契約形態を見直す
3番目が重要です。契約書ではなく、実態で判断されます。
承継時に確認される点
- 構内作業の契約形態と、実態の整合
- 派遣の場合、期間制限を遵守しているか
- 派遣元が適法な事業者か
- 過去に指導を受けたことがないか
偽装請負と判断されると、是正が求められます。買収監査でも確認される項目です。労務デューデリに備えると労務デューデリジェンスをご覧ください。
※ 派遣と請負の区分は、契約の名称ではなく実態によって判断されます。判断にあたっては、必ず社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。