この業態を買う側の動機

  • 食品商社・水産商社:加工機能を自前で持ちたい
  • 同業の水産食品会社:品目と販路を増やしたい
  • 量販店・外食:安定した供給元を確保したい
  • 冷凍水産会社:一次加工から二次加工までつなげたい

産地に近い工場は、それだけで探される理由になります。原料に近いことは、後から作れない立地の価値です。

売却で見られること

1. 原料の調達経路

水産加工業のM&Aで最大の論点です。漁協、産地仲買、商社、輸入。どの経路で、誰との関係で仕入れているかを書き出してください。

この関係が社長個人に付いていると、買い手は「代が替わったら止まるのでは」と考えます。取引の実績を会社の記録として残しておくことが備えになります。原材料相場をどう読むかも参照してください。

2. 歩留まりの記録

鮮魚加工会社では、原料の状態で歩留まりが動きます。日ごとの記録があると、利益の再現性を説明できます歩留まりの改善を参照してください。

3. 人の確保

手作業の工程が多く、産地は人口が減っています。外国人材に頼っている工場も多い。受け入れの体制を誰が回しているかまで含めて引き継ぎ対象になります。

外国人材の受け入れ外国人材の労務管理で扱っています。

4. 許可と衛生管理

水産製品製造業許可の区分と、温度管理の記録が見られます。輸出をしているなら、相手国が求める認証も確認されます。輸出を考えるときの論点を参照してください。

品目による違い

練製品(かまぼこ・ちくわ)

かまぼこの製造では、すり身の調達と配合が要です。その土地の製法や名前が価値になっていることも多く、屋号や商標が会社の名義かを確認しておく必要があります。知的財産の棚卸しで。

干物・乾物

干物や海産物加工会社は、日持ちするぶん商圏が広い。そのかわり在庫を持ちやすく、資金が寝やすい。滞留在庫は整理してから譲るほうが評価も資金繰りもよくなります。在庫回転をどう上げるかを参照してください。

冷凍水産

冷凍水産会社は、凍結能力と冷凍倉庫の容量が資産です。空きがあれば保管機能としても見てもらえます。冷凍食品会社のM&Aも併せて読んでください。

後継者不在のとき

水産加工は「原料を買える人」でなければ経営できない業態です。後継者が仕入れの現場を知らないまま代が替わると、条件が崩れます。

親族に継ぐ人がいないなら、原料や販路を求める同業・商社が現実的な相手です。相手の探し方を参照してください。承継の視点は水産加工業の事業承継で扱っています。

練製品メーカーを譲るとき

水産練製品のM&Aでは、すり身の調達と配合、そして地域での名前が価値になります。設備は専用性が高く、同業以外には転用しにくいぶん、買い手は同業か商流の上流に絞られます。

その代わり、探している同業にとっては替えの効かない資産です。屋号と商標が会社の名義かを確認したうえで、製法の記録を整えてください。

※ 許可の区分や衛生管理・表示の求められ方は、業種や取扱品目、自治体の運用によって変わります。取引条件や契約の内容も個別に異なります。実際の判断にあたっては、所管の保健所や専門家にご相談ください。