費用は4つに分けて考える
事業承継にかかるお金は、次の4つに分けると整理しやすくなります。
- 専門家に払う報酬
- 税金
- 株式や資産の買い取り資金
- 実務にかかるコスト(登記・許認可・システム変更など)
このうち、選ぶ道によって大きく変わるのが1と2、そして3です。
親族内承継の場合
専門家報酬は、税理士・弁護士への相談料が中心で、比較的抑えられます。一方で大きくなりうるのが税金です。株式を贈与または相続で移す際、自社株の評価額に応じて贈与税・相続税がかかります。
食品製造業は工場・土地・設備という資産を持つため、株価が想定以上に高く出ることがあります。事前の評価と対策が効く領域です。自社株の評価と移転と事業承継税制(納税猶予)をご覧ください。
社内承継(MBO)の場合
ここでいちばん重いのは、後継者側の株式買い取り資金です。役員や従業員が個人で数千万円を用意するのは現実的ではないため、持株会社を作って融資を受ける、分割で支払う、といった設計を組みます。
設計を作る分、専門家報酬は親族内承継より上がります。それでも、資金の道筋が付けば実行できる形です。社内承継(MBO)の設計で扱っています。
第三者承継(M&A)の場合
譲る側にとっては、対価を受け取る側なので持ち出しは基本的にありません。かかるのは仲介会社やFAへの報酬と、譲渡益にかかる税金です。
仲介の報酬体系には、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬といった種類があり、会社によって組み合わせが違います。成約しなければ費用が発生しない完全成功報酬という形もあります。違いはM&Aの費用と完全成功報酬とはで整理しました。
廃業の場合
意外に見落とされるのが、廃業にかかる費用です。食品工場では設備の撤去、排水設備や冷媒の処理、建物の解体または原状回復、従業員への支払い、在庫の処分が発生します。
これらを合計すると、手元にお金が残らないどころか持ち出しになることがあります。廃業とM&A、どちらを選ぶべきかで試算の考え方を示しています。
忘れられやすい実務コスト
どの道を選んでも共通して発生するのが、次のような実務コストです。金額としては大きくありませんが、抜けていると直前に慌てます。
- 代表者変更の登記費用
- 営業許可・食品衛生責任者などの届出にかかる手間と費用
- 取引先への通知、契約書の巻き直し
- 銀行口座・システム・請求書まわりの名義変更
費用より先に、比べること
費用だけを並べると廃業がいちばん安く見えることがありますが、実際には手元に残る金額で比べる必要があります。4つの道を同じ物差しで比べる方法は親族内・社内・M&A・廃業を1枚で比べるにまとめています。
※ 税金・報酬体系の具体的な取扱いは、法令の改正や個別の事情、依頼先によって異なります。実行にあたっては、顧問税理士等の専門家に必ずご確認ください。