完全成功報酬とは
着手金・月額報酬・中間金を取らず、成約時の成功報酬だけを受け取る料金体系のことです。売り手から見れば、話が進まなかった場合の持ち出しがありません。
M&Aは、相手が見つからない、条件が合わない、監査で問題が出るなど、成約に至らない可能性が常にあります。その場合でも数百万円の着手金・中間金が戻らない、という事態を避けられるのが最大の利点です。
売り手にとっての利点
1. 検討の入口が軽い
「まず相手がいるかどうか見てみたい」という段階でも動けます。事業承継の選択肢を並べる過程で、M&Aも同じ土俵に乗せやすくなります。
2. 途中でやめても損失が出にくい
面談してみて違和感があった、条件が折り合わない、やはり社内承継にする。こうした判断を、費用を気にせず下せます。
3. アドバイザーの動機が成約に向く
成約しなければ報酬が発生しないため、成約に向けて実際に動く構造になります。ただしこれは裏返すと、成約を優先する力学が働くということでもあります。次の項目につながります。
確認すべき5つの点
1. 本当に「完全」か
着手金は無料でも、月額報酬や中間金が発生する契約があります。また「基本合意時に一部を支払う」形も見られます。契約書の報酬条項を全部読んでください。
2. 実費は別途か
交通費、資料作成費、外部専門家への費用が実費として請求される場合があります。上限があるか、事前承認が必要かを確認します。
3. 成功報酬の基準額
「株式譲渡価額」か「株式譲渡価額+負債」かで、支払額が大きく変わります。借入のある食品工場では特に影響します。M&Aの費用で詳しく扱っています。
4. 最低報酬額
取引金額が小さくても一定額を下回らない設定になっていることがあります。小規模な譲渡では、この最低額が実質的な料率を大きく押し上げます。
5. テール条項と専任条項
契約終了後の一定期間に、紹介を受けた相手と成約した場合に報酬が発生する定め(テール条項)があるかを確認します。また、契約期間中に他社へ依頼できるかどうか(専任か非専任か)も重要です。
「成約を急かされる」リスクへの備え
完全成功報酬は、成約して初めて報酬が発生する構造です。そのため、条件が十分でなくても成約に向かう力が働く可能性があります。
備えとしては次が有効です。
- 自社の評価のおおよその範囲を、事前に自分で把握しておく
- 「この条件を下回るなら断る」という線を先に決めておく
- 顧問税理士など、報酬が成約に連動しない立場の人に意見を聞く
評価の考え方は食品工場の売却価格はどう決まるのかと食品工場の売却相場はあるのかを参照してください。
仲介かFAかとの関係
完全成功報酬は料金体系の話であり、仲介かFAかという立場の話とは別です。両方を確認したうえで選んでください。FAと仲介の違いにまとめています。
まとめ
完全成功報酬は、検討の入口を軽くする点で売り手に有利な仕組みです。そのうえで、基準額・最低報酬・テール条項の3点を契約書で確認しておけば、後から想定外の請求に驚くことはありません。