全部か、一部か

M&Aというと会社を丸ごと譲る話に見えますが、実際には段階があります。「まだ全部は手放したくない」という段階で取れる形を並べます。

業務提携

資本を動かさず、事業のうえで組む形です。食品メーカーの業務提携でよくあるのは次のようなものです。

  • 相手の販路で自社商品を売ってもらう
  • 相手の空きラインで自社品を作ってもらう
  • 共同で商品を開発する
  • 原料をまとめて仕入れる

始めやすく、やめやすいのが利点です。一方で、拘束力が弱いぶん相手の都合で終わります。契約の範囲と期間を書面にしておいてください。

資本提携

食品会社の資本提携は、相手に株式の一部を持ってもらう形です。経営権は手放さず、関係を強くするのが狙いになります。

  • 取引を安定させたい
  • 資金を入れてもらいたい
  • 将来の全部譲渡に向けて、まず組んでみたい

3番目は現実的な使い方です。数年一緒にやってから全部を譲ると、引き継ぎの失敗が減ります。ただし、途中でやめにくくなる点は理解しておいてください。

少数株式の譲渡

食品会社が少数株式を譲渡する場面には、2つあります。

1. 分散した株を集める側として

親族に分かれた株を買い集める。これは分散した株式をどう集めるかで扱っています。

2. 一部を外部に出す側として

資本提携の一形態です。持ち分が3分の1を超えるか、過半になるかで、相手が持つ権限が大きく変わります。何%渡すかは、渡したあとに何ができなくなるかで決めてください。

事業の一部だけを切り出す

カーブアウト

食品事業のカーブアウトとは、会社の一部の事業を切り出して独立させたり、他社に譲ったりすることです。

  • 採算の悪い品目群を手放して、本業に集中する
  • 本業と離れた事業を、その分野の会社に譲る
  • 後継者が引き継ぎやすい規模まで絞る

「全部は継げないが、この部分なら継げる」という場面で効きます。

会社分割(吸収分割・新設分割)

食品会社の吸収分割は、切り出した事業を既存の会社に承継させる形です。新設分割は、新しく作った会社に承継させる形です。

事業譲渡と比べて契約や許可の扱いが変わるため、どちらを使うかは慎重に決める必要があります。会社分割を使う場面株式譲渡と事業譲渡の違いを参照してください。

食品製造事業の事業譲渡を選ぶ場合、営業許可は取り直しになるのが原則です。業種別の営業許可と承継で確認してください。

子会社を売る

食品子会社の売却は、親会社が持つ株式を譲る形になります。切り出しの手間が少ないぶん進めやすい一方、親会社との取引が売上の大半を占めていると、単独では成り立たないと見られます。

社内の人に譲る形

MBOとEBO

役員が買い取るのがMBO、従業員が買い取るのがEBOと呼ばれます。現場を知っている人が継ぐので、事業の継続性は高い

最大の論点は買い取り資金です。社内承継とMBO株式の買い取り資金をどう作るかで扱っています。

食品会社の従業員承継は、親族外承継のひとつです。親族に継ぐ人がいない場合の現実的な選択肢になります。

どれを選ぶか

状況まず検討する形
まだ引退の時期が遠い業務提携・資本提携
後継者が社内にいるMBO・EBO
一部の事業だけ手放したいカーブアウト・会社分割
全部を引き継いでほしい株式譲渡
負債や不要な資産を残したい事業譲渡

比較の仕方は承継の方法を比べる表で整理しています。形から決めるのではなく、何を残したいかから決めてください

※ 契約の内容や必要な手続きは個別の事情によって異なります。税務や法務の取扱いも制度改正で変わることがあります。実際の判断にあたっては、契約書を確認のうえ、専門家にご相談ください。