制度の目的を正しく理解する

技能実習は、技能等の開発途上地域等への移転を図り、経済発展を担う人づくりに寄与することを目的とする制度です。

法令上、労働力の需給の調整の手段として行われてはならないとされています。

この前提を理解せずに「人手不足の解決策」として受け入れると、次の問題が生じます。

  • 計画外の作業をさせてしまう
  • 技能の習得が進まない
  • 実習生の不満が高まる
  • 行政の実地検査で指摘される

受け入れの仕組み

一般に、次の関係者が関わります。

  • 実習実施者:受け入れる企業(自社)
  • 監理団体:実習を監理する団体
  • 送出機関:母国側の機関
  • 外国人技能実習機構:計画の認定、実地検査

監理団体の質が、受け入れの成否を大きく左右します。次の点を確認してください。

  • 食品製造業での実績があるか
  • 訪問・面談を実際に行っているか
  • 通訳の体制があるか
  • トラブル時に対応してくれるか
  • 費用の内訳が明確か

食品工場での実務上の論点

1. 計画と実際の作業の一致

最も指摘の多い点です。認定を受けた技能実習計画に沿った作業を行わせる必要があります。

食品工場では、人手が足りないときに他の工程を手伝ってもらう場面が生じます。これが計画外の作業になっていないか、常に確認が必要です。

2. 労働条件

技能実習生にも労働関係法令が適用されます。

  • 最低賃金
  • 労働時間、休憩、休日
  • 割増賃金
  • 年次有給休暇
  • 社会保険・労働保険

「実習生だから」という理由での差別的な扱いは認められません外国人従業員の労務管理をご覧ください。

3. 記録と報告

  • 技能実習日誌
  • 賃金台帳、出勤簿
  • 監理団体への報告
  • 実地検査への対応

日誌の記載が形骸化しているケースが見られます。実際の作業内容と一致しているか確認してください。

4. 安全衛生教育

言葉が通じない状態で機械を扱わせるのは、重大な事故につながります。

  • 母国語または理解できる方法での教育
  • 写真・イラストによる手順書
  • 実演と、理解の確認
  • 記録の保管

機械の挟まれ・巻き込まれをどう防ぐか労働安全衛生をご覧ください。

特定技能への移行

技能実習を良好に修了した方は、一定の要件のもとで特定技能へ移行できる場合があります。

企業にとっての意味

  • 技能を習得した人材に、引き続き働いてもらえる
  • 教育のやり直しが不要
  • 日本語も生活も慣れている

ただし注意点

特定技能では転職が可能です。処遇や職場環境が悪ければ、他社に移られます。

移行を前提とするなら、実習期間中から「選ばれる職場」であることが必要です。特定技能の受け入れをご覧ください。

制度の動向に注意

技能実習制度については、見直しの議論が進められてきました。制度の枠組みが変わる可能性があります。

受け入れを検討する際は、最新の制度動向を確認してください。監理団体、行政書士、業界団体から情報を得ることをおすすめします。

費用の把握

賃金以外に、次の費用が発生します。

  • 監理費(毎月)
  • 入国前後の講習費用
  • 渡航費
  • 住居の準備と家賃
  • 生活用品
  • 健康診断
  • 各種手続きの事務負担

総額で見ると、日本人の採用と大きく変わらないことも多くあります。「安く雇える」という発想では、制度の趣旨からも実態からも外れます。

承継・M&Aでの扱い

実習実施者としての認定は、会社に紐づきます

  • 株式譲渡:原則として継続(届出は必要)
  • 事業譲渡:営業主体が変わるため、扱いの確認が必要

買収監査では、計画と実際の作業の一致、労働条件、記録が重点的に確認されます。ここで問題が判明すると、是正が取引の条件になります。

労務デューデリジェンス労務デューデリに備えるをご覧ください。

まず自社を点検する

受け入れの前に、次を確認してください。

  1. 労働時間の把握は適正か
  2. 割増賃金の計算に誤りはないか
  3. 社会保険は適切に加入しているか
  4. 安全衛生の教育体制はあるか
  5. 手順書は整備されているか

自社の労務に問題がある状態で受け入れると、それがそのまま指摘されます。順序が逆にならないようご注意ください。

※ 技能実習制度は見直しが進められており、要件や枠組みが変わる可能性があります。実務にあたっては、外国人技能実習機構・監理団体および行政書士等の専門家に必ず最新の情報をご確認ください。