準備の全体像

  1. 自社の原価を把握する
  2. 荷主別の採算を出す
  3. 交渉の優先順位を決める
  4. 目標額と最低ラインを決める
  5. 根拠資料を作る
  6. 想定問答を準備する
  7. 社内の体制を整える

1. 自社の原価を把握する

すべての出発点です。次を車両1台あたりで計算してください。

  • 人件費(法定福利費を含む)
  • 燃料費
  • 車両費(減価償却またはリース料)
  • 修繕費、タイヤ
  • 保険料、税金
  • 高速代
  • 間接費(管理部門、施設)の配賦

運賃と原価の考え方車両別の原価管理をご覧ください。

2. 荷主別の採算を出す

荷主ごとに、売上・原価・利益を出します。あわせてキロ単価と時間単価も計算してください。荷主別の採算管理キロ単価・時間単価の考え方をご覧ください。

3. 優先順位を決める

すべての荷主と同時に交渉するのは無理です。次の観点で順位をつけてください。

観点優先度が高い
採算赤字または利益が薄い
金額の影響売上構成比が大きい
据え置き期間長年改定していない
作業の増加当初より作業が増えている
関係性話ができる担当者がいる

最初の1社は、成功しやすい相手を選ぶのも一案です。実績ができると、社内の自信になります。

4. 目標額と最低ラインを決める

  • 目標額:必要単価から逆算した金額
  • 最低ライン:これ以下なら取引を見直す水準
  • 代替案:金額が無理な場合の条件変更

最低ラインを決めておかないと、その場の雰囲気で妥協してしまいます。目標利益から逆算した値決めをご覧ください。

5. 根拠資料を作る

A4で1〜2枚にまとめます。次を入れてください。

  • コストの推移:燃料、人件費、車両価格(グラフ)
  • 前回改定からの期間
  • その荷主の運行実績:便数、距離、拘束時間
  • 荷待ち・附帯作業の実測待機料・附帯作業料の収受
  • 必要な改定額と、その根拠
  • 改定後の運行体制:継続できること

公表されている運賃の考え方も、客観的な根拠として使えます。「標準的な運賃」の使い方をご覧ください。

6. 想定問答を準備する

言われることは、ほぼ決まっています。

想定される反応準備しておく答え
「他社はもっと安い」安い理由(労務、安全)を問い、品質の違いを示す
「うちも厳しい」理解を示したうえで、続けられない水準であることを説明
「本社の決裁が必要」本社に上げるための資料を提供する
「今期は無理、来期に」時期を明確にし、書面で確認する
「全額は無理」段階的な改定、または条件変更の代替案
「他社に切り替える」引き継ぎの現実性(人員、車両、ノウハウ)を静かに示す

運賃交渉の進め方と代替案値上げを断られたときの判断をご覧ください。

7. 社内の体制

  • 誰が交渉するか:社長か、営業か、配車担当か
  • 決裁の範囲:どこまでその場で決めてよいか
  • ドライバーへの説明:交渉中であることを伝えるか
  • 結果の共有:成功も失敗も社内で共有する

交渉を社長だけが担っている状態は、承継の障害でもあります。この機会に、担当者を同席させてください。管理職の育成をご覧ください。

タイミングを選ぶ

  • 契約の更新時期
  • 荷主の予算編成の時期(その前に
  • 担当者が代わった直後
  • コストが明確に上昇した局面
  • 法令対応が必要になったとき

荷主の予算が固まってからでは、その期は動きません。 予算編成の時期を確認しておいてください。

まとめ

原価の把握 → 荷主別採算 → 優先順位 → 目標と最低ライン → 根拠資料 → 想定問答 → 社内体制。この順で準備してください。A4で1〜2枚の資料と、最低ラインの設定があれば、交渉は前に進みます。タイミングは荷主の予算編成の前を狙ってください。