評価が必要になる場面
相続税・贈与税での評価と、M&Aの価格は別
ここを混同すると誤解が生じます。
| 相続税・贈与税の評価 | M&Aの価格 | |
|---|---|---|
| 目的 | 課税のための評価 | 当事者間の合意 |
| 方法 | 財産評価の通達に基づく | 時価純資産+営業権、EBITDA倍率など |
| 決まり方 | 計算で決まる | 交渉で決まる |
M&Aの価格については、運送会社の売却価格はどう決まる?、時価純資産+営業権の考え方をご覧ください。
評価方式の基本的な考え方
非上場株式の相続税評価では、会社の規模や株主の立場に応じて、いくつかの方式が使い分けられます。
- 類似業種比準方式:同業種の上場会社の数値と比較して評価する
- 純資産価額方式:会社の資産から負債を引いた額をもとに評価する
- 併用方式:上の二つを組み合わせる
- 配当還元方式:少数株主が取得する場合など
どの方式が適用されるかは、会社の規模区分と株主の立場で決まります。 判定の基準や計算方法は詳細で、改正もあります。必ず税理士に評価を依頼してください。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご確認ください。
運送業で評価が高くなる要因
1. 不動産の含み益
車庫・倉庫の土地を古くから所有している場合、簿価と時価の差が大きくなります。純資産価額方式では、これが評価に反映されます。
「決算書の純資産は少ないのに、評価額は高い」という状況は、この要因で生じます。車庫・倉庫の不動産を持つ会社の評価をご覧ください。
2. 内部留保の蓄積
長年黒字を続け、利益を社内に留保してきた会社ほど、純資産が厚くなります。健全な経営の結果として、評価が上がります。
3. 保険の解約返戻金
積立型の保険がある場合、その返戻金相当額も資産として評価されます。保険の活用と解約返戻金をご覧ください。
評価額を知る意味
- 相続税の見込みが分かる:納税資金の準備につながります
- 贈与の計画が立てられる
- 承継の方法を判断できる:評価が高すぎて親族内承継が難しい場合もあります
- 対策の効果が測れる
把握していない経営者が非常に多いのが実情です。まず税理士に依頼して算出してもらってください。
評価は毎年変わる
利益、純資産、業種の指標。いずれも毎年変わります。
- 好業績の年は評価が上がる
- 大きな設備投資をすると変わる
- 退職金を支給すると純資産が減る
年1回、決算後に確認することを習慣にしてください。税理士と連携して進める順序をご覧ください。
評価を下げる検討
制度の仕組み上、次のような要素が評価に影響することがあります。
- 役員退職金の支給(純資産が減ります)
- 設備投資
- 不動産の保有形態
- 会社の規模区分
ただし、事業に不合理な行為は避けてください。 税負担の軽減だけを目的とした行為は、後で問題になり得ます。必ず税理士と検討してください。
納税資金とセットで考える
評価額が分かったら、それに対する納税資金があるかを確認してください。
自社株は換金できないため、「財産は大きいが現金がない」という状況になります。相続税の納税資金をどう用意するかをご覧ください。
事業承継税制との関係
一定の要件を満たすと、自社株にかかる相続税・贈与税の納税が猶予される制度があります。評価額が高い会社ほど、検討する価値があります。
ただし要件は複雑で、適用後の継続要件もあります。事業承継税制を運送業で使うときの注意をご覧ください。
M&Aを選ぶ場合
生前に譲渡すれば、自社株が現金に変わります。
- 相続財産は現金になり、分割も納税も容易になる
- 評価額と譲渡価格は別なので、実際にいくらで売れるかは交渉次第
「評価額=売れる金額」ではありません。 高く評価されているからといって、その金額で売れるわけではない点に注意してください。相場はいくらか|規模別の考え方をご覧ください。
まとめ
自社株の評価は、相続・贈与・自社株買いの場面で必要になります。M&Aの価格とは別の考え方である点に注意してください。運送業では不動産の含み益と内部留保で評価が高くなりがちです。まず税理士に依頼して評価額を把握し、納税資金とセットで考えてください。