保険が果たす役割
| 目的 | 内容 |
|---|---|
| 退職金の原資 | 解約返戻金を退職金に充てる |
| 納税資金 | 相続時の自社株評価への納税に備える |
| 事業保障 | 社長に万一のときの当面の運転資金 |
| 借入の返済原資 | 個人保証がある場合の備え |
| 株式の買取資金 | 相続人から株を買い戻す資金 |
目的が複数あることが多いため、どれを重視するかで設計が変わります。
まず棚卸しする
加入している保険を一覧にしてください。
- 契約者(会社か個人か)
- 被保険者(誰に掛けているか)
- 受取人
- 保険金額
- 現在の解約返戻金
- 解約返戻金のピーク時期
- 年間の保険料
- 払込期間
解約返戻金のピーク時期が最も重要です。ここを外すと、返戻率が大きく下がることがあります。
退職金の原資として
最も一般的な使い方です。
- 社長の退任時期に、返戻金のピークを合わせる
- 解約返戻金を受け取り、それを原資に退職金を支給する
退任時期と返戻金のピークがずれているケースは実際にあります。引退時期を決めたら、保険の状態を確認してください。退職金の設計と税務、運送会社の社長は何歳で引退すべきかをご覧ください。
納税資金として
親族内承継では、自社株の評価額に応じた相続税・贈与税が生じることがあります。納税資金をどう用意するかが課題になります。
保険金を納税資金に充てる設計が使われることがあります。相続税の納税資金をどう用意するか、自社株の評価方法の基本をご覧ください。
事業保障として
社長に万一のことがあった場合、会社は次の資金が必要になります。
- 当面の運転資金(売上が落ちる可能性)
- 借入の返済
- 死亡退職金・弔慰金
- 後継体制が整うまでのつなぎ
運送業では、社長の不在が即座に運行に影響します。 数か月分の固定費を賄える保障があるかを確認してください。社長が突然倒れたらをご覧ください。
税務上の取扱い
保険料の経理処理(損金算入の割合など)は、保険の種類と契約内容によって異なり、取扱いは改正されることがあります。
また、解約返戻金を受け取った期には益金が立ちます。同じ期に退職金を支給すれば相殺されますが、タイミングがずれると税負担が生じます。
設計と解約のタイミングは、必ず税理士と相談してください。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご確認ください。
M&Aでの扱い
保険は、次のように扱われます。
- 解約返戻金は資産として評価される:時価純資産に含まれます(時価純資産+営業権の考え方)
- 役員保険は「事業に関係のない資産」とされることがある:切り離しの対象(事業に関係のない資産の整理)
- 保険料は正常収益力の調整対象:買収後には発生しない費用として足し戻される
選択肢は次のとおりです。
- クロージング前に解約し、退職金に充てる
- 契約者を社長個人に変更する:税務上の取扱いを確認
- 会社に残す:解約返戻金相当額が価格に反映される
事前に整理しておくと、交渉がすっきりします。
見直しの視点
- 目的が今も有効か:加入時と状況が変わっていないか
- 保険料の負担が重すぎないか:資金繰りへの影響
- 返戻金のピークと引退時期が合っているか
- 保障額が過大・過小でないか
- 後継者への切り替えが必要か:被保険者の変更
「昔から入っているから」で継続している保険があれば、この機会に見直してください。
従業員向けの保険も確認
- 中退共などの退職金制度
- 労災の上乗せ保険(事故時の保険と賠償の考え方)
- 団体保険
これらは退職給付の債務と対応します。退職給付の見積りと価格調整をご覧ください。
まとめ
保険は、退職金の原資・納税資金・事業保障という役割を持ちます。まず一覧にして、解約返戻金の現在額とピーク時期を把握してください。退任時期とピークがずれていることがあります。M&Aでは事業外資産として切り離しの対象になるため、事前の整理が有効です。設計と解約のタイミングは税理士と相談してください。