なぜ納税が難しくなるのか
自社株には、次の特徴があります。
- 評価額は高くなり得る:純資産や利益をもとに評価されます
- 換金できない:市場がなく、簡単には売れません
- 分割しにくい:分けると経営に支障が出ます
つまり、「財産としては大きいが、現金にはならない」という状態です。しかし相続税は現金で納める必要があります。
自社株の評価方法の基本をご覧ください。
運送業で評価が高くなる要因
- 不動産を持っている:車庫、倉庫。取得が古いほど含み益が大きい
- 内部留保が厚い:長年黒字を続けてきた会社
- 車両などの資産が多い
健全な経営を続けてきた会社ほど、評価が高くなるという面があります。
納税資金を用意する方法
1. 生前に個人の資産を蓄える
役員報酬から計画的に貯める、という方法です。ただし、報酬には所得税がかかるため、効率は高くありません。
2. 保険を活用する
死亡保険金を納税資金に充てる設計です。受取人を誰にするかで扱いが変わります。保険の活用と解約返戻金をご覧ください。
3. 会社が株式を買い取る(金庫株)
相続人が取得した株式を、会社が買い取る方法です。相続人は現金を得られ、納税に充てられます。
- 会社に買取資金が必要
- 財源の規制がある
- 税務上の取扱いに特例がある場合がある
設計は税理士と行ってください。
4. 死亡退職金
会社から相続人に支給されます。相続税の計算で一定の非課税枠がある場合があります。規程の整備が前提です。退職金の設計と税務をご覧ください。
5. 事業承継税制
一定の要件を満たすと、自社株にかかる相続税・贈与税の納税が猶予される制度があります。
要件・手続き・期限は複雑で、改正もあります。 適用の可否と、適用後の継続要件を含めて、必ず税理士に確認してください。事業承継税制を運送業で使うときの注意をご覧ください。
6. 延納・物納
- 延納:分割して納める。利子税がかかります
- 物納:現物で納める。要件が厳しく、認められる財産も限られます
いずれも最後の手段と考え、事前の備えを優先してください。
生前にできる備え
1. 評価額を把握する
まず今いくらなのかを知ってください。税理士に評価を依頼すれば算出できます。把握していない経営者が多いのが実情です。
2. 評価を下げる検討
評価の仕組み上、次のような要素が影響することがあります。
- 役員退職金の支給(純資産が減ります)
- 設備投資
- 不動産の保有形態
ただし、事業に不合理な行為は避けてください。 節税だけを目的とした行為は、後で問題になり得ます。必ず税理士と検討してください。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご確認ください。
3. 生前贈与を活用する
計画的に株式を移転していく方法です。生前贈与の使い方をご覧ください。
4. 遺言を作る
株式を誰に渡すかを明確にします。分散を防ぐことが目的です。遺言で決めておくことをご覧ください。
5. 会社の資金を確保する
金庫株や死亡退職金で対応するには、会社に資金が必要です。計画的に準備してください。
M&Aという選択
納税資金の問題を根本的に解決する方法として、生前に株式を譲渡するという選択があります。
- 株式が現金に変わる
- 相続財産は現金になり、納税も分割も容易になる
- 後継者不在の問題も同時に解決する
「会社を残す」ことにこだわると、相続で家族が困ることがあります。会社を残すか畳むか、運送・物流業のM&Aをご覧ください。
相続人が複数いる場合
自社株を継ぐ子と、継がない子。納税負担が偏ることがあります。
- 株を継いだ子に納税が集中する
- 他の子には現金が渡り、納税は軽い
- 不公平感が生まれる
この構造を事前に説明しておくことが、揉めごとを防ぎます。相続人が複数いる場合の株の分け方をご覧ください。
まとめ
自社株は評価額が高くても換金できないため、納税資金の確保が課題になります。まず評価額を把握してください。備えは、保険・金庫株・死亡退職金・事業承継税制・生前贈与などがあり、いずれも生前の準備が前提です。生前に譲渡すれば、この問題自体が解消します。