制度は変わる、という前提

最初にお伝えします。省エネ関連の支援制度は、年度ごとに内容・名称・要件・予算が変わります。

このため本記事では、個別の制度名や補助率は挙げません。代わりに、どういう取り組みが対象になりやすいか、どう探すか、何に注意するかを整理します。

実際に使える制度は、必ず公募時点の公式情報でご確認ください。

制度名や補助率を挙げないのは、書いた時点の内容が翌年には変わっているからです。古い情報を頼りに計画を組むと、前提が崩れます。

だから、考え方だけを持っておいてください。どういう投資が対象になりやすいか、何に注意すべきか。この部分は年度が変わっても大きくは変わりません。

実際に使える制度は、その都度確かめることになります。探し方さえ知っていれば、時間はかかりません。

対象になりやすい取り組み

1. 車両に関するもの

  • 燃費性能の高い車両への更新
  • 電動車・代替燃料車の導入
  • 充電設備などのインフラ整備

車両更新は金額が大きいため、支援の有無が判断に影響します。ただし支援があるから買う、という順序は避けてください。 EVトラックの現実的な見方をご覧ください。

2. 施設・設備に関するもの

  • 倉庫・事務所の照明の更新
  • 空調設備の更新
  • 冷蔵・冷凍設備の高効率化
  • 太陽光発電などの導入

冷蔵倉庫を持つ会社は、電力使用量が大きいため効果が出やすい領域です。

3. 運行の効率化に関するもの

  • デジタコ・運行管理システムの導入
  • 配車の最適化システム
  • アイドリングストップ機器

これらは省エネの枠組みでも、IT・生産性向上の枠組みでも対象になりうるものです。複数の制度を見比べてください。デジタコ導入の進め方をご覧ください。

4. 共同化・モーダルシフト

  • 共同配送の取り組み
  • 鉄道・海運への転換
  • 中継輸送の仕組みづくり

共同配送・混載の活用モーダルシフトの検討をご覧ください。

四つの分類のうち、自社に当てはまるものを確かめてください。倉庫を持たない会社なら二つ目は関係ありませんし、長距離が少なければ四つ目も当てはまりません。

効果が出やすいのは、使用量が大きい部分です。冷蔵や冷凍の設備を持つ会社では電力が、長距離が中心の会社では燃料が、それぞれ大きな割合を占めます。

だから、まず自社の使用量の内訳を見てください。何にいちばん使っているかがわかれば、どこに手をつけるかも決まります。

三つ目の運行の効率化については、複数の枠組みで対象になり得ます。同じ機器でも、省エネの制度で見るか、生産性の制度で見るかで条件が変わります。両方を見比べる価値があります。

複数の分類にまたがる投資もあります。その場合、どの枠組みで申請するかによって条件が変わります。

どう探すか

  1. 公的な補助金・支援制度の検索サイトを定期的に見る
  2. 所管省庁のサイト:国土交通省、経済産業省、環境省など
  3. 自治体の産業振興・環境部門:都道府県・市区町村独自の制度があります
  4. 業界団体からの案内
  5. 金融機関、顧問税理士
  6. 設備業者・車両販売店:制度に詳しいことがあります

自治体の制度は見落とされがちですが、要件が緩く、競合も少ないことがあります。 所在地の自治体に問い合わせてみてください。

六つの探し先のうち、三つ目が見落とされやすい部分です。地域の制度は情報が広く伝わらないため、知らないまま終わることがあります。

だから、所在地の自治体に直接聞いてみてください。産業や環境を担当する部署に、こういう投資を考えているが使える制度はあるかと尋ねる。それだけで教えてもらえます。

六つ目の業者から情報が来ることもありますが、その内容は必ず自分で確かめてください。売るための説明が混ざることがあります。

複数の制度が使える場合、条件を比べることになります。同じ経費に複数の補助を受けられないのが原則なので、どれか一つを選ぶことになります。

探すのは、投資を決めてからで構いません。先に制度を探すと、それに合わせて投資の内容が決まってしまいます。

ただし、時期の確認だけは早めにしてください。公募がいつ頃かがわかれば、導入の予定も組めます。

申請で押さえること

順序を間違えない

多くの制度は、交付決定の前に発注・契約したものは対象外になります。「先に買ってから申請」は原則としてできません。

設備の入れ替えを考えているなら、公募スケジュールを先に確認してください。

効果を数字で示す

省エネ関連の制度では、導入前後でどれだけ改善するかの説明を求められることが一般的です。

  • 現在の燃料使用量・電力使用量
  • 導入後の見込み
  • その根拠

現状の数字を把握していないと、申請書が書けません。 日頃から燃費や電力使用量を記録しておくことが、そのまま準備になります。燃費管理の実務をご覧ください。

資金繰りに注意する

補助金は原則として後払いです。 支払いが先、入金が後。この間の資金を用意できるかを必ず確認してください。つなぎ資金の準備をご覧ください。

実績報告と保有義務

採択後は実績報告が必要で、取得した設備には一定期間の処分制限が課されることがあります。M&Aや廃業を考えている場合は、この点を事前に確認してください。

三つの見出しのうち、効果を数字で示す部分が最も準備を要します。現状の使用量がわからなければ、改善の見込みも書けません。

だから、日頃から記録しておくことが備えになります。燃料の使用量は給油の記録から、電力は請求書から拾えます。

記録は月ごとに残してください。季節による変動があるため、一か月だけでは実態がつかめません。一年分あれば、傾向も見えます。

導入後の見込みについては、根拠を添える必要があります。業者の説明を土台にしつつ、自社の使い方に合わせて調整してください。

過大な見込みを書くと、報告のときに達成できません。控えめに見積もっておくほうが安全です。

投資判断が先、制度は後

最も重要な点です。

「支援が出るから導入する」ではなく、「導入すべきものに、たまたま支援がある」という順序で考えてください。

自己負担が生じる以上、支援があっても採算が合わない投資は、やはり合いません。次の順で考えてください。

  1. その設備は必要か
  2. 投資額に対して、何年で回収できるか
  3. 資金は用意できるか
  4. そのうえで、使える支援制度はあるか

補助金 完全ガイド設備投資への支援をご覧ください。

この四つの順序を守れるかどうかが、失敗するかどうかを分けます。制度から入ると、必要性が固まらないまま話が進みます。

特に、車両の更新は金額が大きいため、支援の有無に判断が引きずられがちです。しかし、必要な時期に必要な台数を更新するのが本筋です。

二つ目の回収の年数を出すときは、使用量の削減がいくらになるかを計算します。今の使用量に、削減される割合を掛ければ、年あたりの効果が出ます。

この効果と投資の額を比べて、何年で回収できるかを見ます。回収の年数が、その設備を使う期間より長いなら、合いません。

支援があれば、実質の投資額が減り、回収も早くなります。しかし、それでも合わないなら、やはり合いません。

この順序を守っていれば、採択されなくても困りません。必要な投資なら、制度がなくても進めることになります。

使用量を記録する仕組みを作る

この分野の取り組みは、すべて記録から始まります。だから、まず記録する仕組みを作ってください。

燃料については、車両ごとに給油の量と走行の距離を記録します。これがあれば、燃費が出せます。運行の記録から自動で拾えるなら、そのほうが確実です。

電力については、拠点ごとの請求書を月ごとに並べます。倉庫を持つなら、この額が大きくなります。

記録は数年分ためてください。季節の変動を除いて比べるには、同じ月どうしで見る必要があります。

この記録は、申請のためだけでなく日々の管理にも使えます。特定の車両の燃費が落ちていれば、整備の合図かもしれません。

荷主から使用量について問われることも増えています。求められたときにすぐ答えられる状態にしておく価値があります。

投資しなくてもできること

使用量を減らすには、設備を替える以外の方法もあります。しかも、費用がかかりません。

運転の仕方を変えることは、燃料に直接効きます。急な加速を減らす、無駄なかけっぱなしを減らす。車両ごとの燃費を測って共有すれば、意識も変わります。

空で走る距離を減らすことも、大きな効果があります。帰り荷を取る、運行の組み方を見直す。同じ荷物を運ぶのに使う燃料が減ります。

拠点での使い方も見直せます。使っていない場所の照明、必要以上の空調。細かいことですが、積み重なります。

これらを先に進めておくと、投資の判断もしやすくなります。できることをやったうえで、なお必要な部分に投資する。この順序なら無駄が出ません。

荷主に伝える意味

荷主が自社の物流に伴う影響を把握しようとする動きがあります。この文脈で、取り組みを伝えることに意味が出てきました。

伝えるとすれば、何をして、使用量がどう変わったかです。数字があれば、事実として伝えられます。

ただし、削減の効果を自分で計算して示すのは慎重にしてください。算定には決まった考え方があり、誤ると信用を損ねます。求められる形式があるなら、それに従ってください。

まずは、使用量そのものを答えられる状態にしておくことです。求められたときに数字が出せなければ、話が始まりません。

取り組みを続けている会社は、委託先を選ぶ場面で有利になることがあります。この点も、投資を考える理由の一つになります。

時期をどう合わせるか

設備の入れ替えを考えているなら、公募の時期を先に確認してください。時期が合わなければ、待つか、使わずに進めるかの判断になります。

待つ場合、その間に何を失うかを見てください。古い設備を使い続ける費用、故障の危険、効率の差。待つ期間が長いなら、待たないほうが得なこともあります。

設備が壊れてから探すのでは、間に合いません。だから、更新の計画を先に作り、そこに合わせて制度を探す順序になります。

計画があれば、公募を見たときにすぐ判断できます。自社の計画に合うかどうかを、その場で確かめられます。

制度の内容は年度によって変わります。前の年に使えたものが今年もあるとは限りません。判断するその時点で、公表されている内容を確かめてください。

拠点ごとに見る

複数の拠点がある会社では、使用量に差が出ます。同じような規模でも、設備の古さや使い方で変わります。

だから、拠点ごとに並べてみてください。面積あたり、あるいは扱う量あたりで比べると、差の理由が見えてきます。

差が大きい拠点があれば、そこが改善の余地です。設備が古いのか、使い方に無駄があるのか、建物の造りによるものか。

投資の順序も、この比較から決められます。効果の大きい拠点から手をつければ、同じ費用でより多く減らせます。

賃借の拠点では、設備に手を入れられないことがあります。契約の内容を確認してから検討してください。

取り組みを続ける仕組み

設備を入れれば使用量は減りますが、それだけでは一度きりです。続けるには、日々の運用を見る仕組みが要ります。

月に一度、使用量を確認する場を作ってください。前の年の同じ月と比べて、増えていないか。増えているなら、理由を探します。

車両ごと、拠点ごとに見ると、原因を絞りやすくなります。全体だけを見ていると、どこで増えたかがわかりません。

結果は現場とも共有してください。自分の運転や使い方が数字に表れるとわかれば、意識も変わります。

この積み重ねが、次の投資の判断材料にもなります。運用で減らせる部分を減らしたうえで、なお残る部分に投資する。この順序なら、効果も測りやすくなります。

まとめ

省エネ関連の支援は、車両更新、施設設備の高効率化、運行効率化、共同化などが対象になりやすい領域です。制度は毎年変わるため、公募時点の公式情報で確認してください。交付決定前の発注は対象外になること、後払いであること、処分制限があることが実務上の要点です。投資判断が先、制度は後という順序を崩さないでください。

※ 補助金の名称・対象経費・要件・公募時期は年度によって変わります。本記事は一般的な進め方を整理したものですので、実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認ください。