向く用途・向かない用途

向く向かない
近距離・ルート配送長距離・不定期
1日の走行距離が読める走行距離が日によって大きく変わる
毎日同じ場所に戻る拠点に戻らない運行
小型・中型大型・重量物
都市部(騒音・排出ガスの制約)山間部、寒冷地
夜間に充電できる連続稼働が必要

「毎日同じルートを走り、夜間に拠点で充電できる」——これが最も適した条件です。

この条件に当てはまる運行が自社にあるかどうかが、検討の出発点です。当てはまらないなら、他の手段を考えるほうが早く効きます。

確かめ方としては、車両ごとの一日の走行距離を数か月分見てみることです。毎日ほぼ同じ距離を走り、変動が小さい車両があれば、それが候補になります。逆に、日によって大きく変わる車両は向きません。

戻る場所も確認してください。毎晩同じ拠点に戻るなら、そこで充電できます。直行直帰が多い運行や、拠点をまたぐ運行では、充電の計画が立ちません。

気温の影響も見ておく必要があります。寒い地域では、想定した距離を走れないことがあります。年間で最も条件の厳しい時期を基準に考えてください。

この表に当てはまる運行があっても、それが会社の主力とは限りません。全体の何割にあたるかも合わせて見ておいてください。

検討すべき論点

1. 航続距離

カタログ値と実際は異なります。次で変わります。

  • 積載量
  • 気温(寒冷時は大きく低下する傾向)
  • 冷凍・冷蔵機の使用
  • エアコン、勾配

余裕を持った計画が必要です。ぎりぎりの設計にすると、運行が止まります。

2. 充電設備

車両本体だけでなく、充電設備への投資が必要です。

  • 充電器の設置費用
  • 受電設備の増強:複数台なら電力容量が足りないことがあります
  • 設置スペース
  • 電気料金の契約(基本料金が上がることがあります)
  • 充電時間と、運行スケジュールとの整合

受電設備の増強費用が、車両本体より大きくなるケースもあります。電力会社への事前確認が不可欠です。

3. コスト

  • 車両価格:ディーゼル車より高い
  • 燃料費 vs 電気代:走行あたりのコストは下がる傾向
  • 整備費:エンジンがないぶん、部分的に低減
  • バッテリーの劣化と交換:費用と時期
  • 下取り価格:中古市場が未成熟

総保有コストで比較してください。車両価格だけで判断すると誤ります。

4. 整備・故障時の対応

  • 整備できる工場が近くにあるか
  • 部品の供給
  • 故障時の代車

四つの論点のうち、実務でいちばん見落とされるのが充電設備です。車両の話ばかりが先行し、電気を引く工事の費用が後から出てくることがあります。

だから、検討の早い段階で電力会社に相談してください。今の受電の設備で足りるのか、増強が要るのか、工事にどれだけかかるのか。この答えによって、全体の投資額が変わります。

複数台を同時に充電する場合は、特に確認が要ります。一台なら足りても、三台同時では容量が足りないことがあります。将来の増車まで見込んで確認しておくと、二度手間になりません。

充電にかかる時間と、運行の予定が合うかも確認してください。夜間に十分な時間があれば問題ありませんが、早朝から動かす運行だと足りないことがあります。

総保有の費用で比べるという点は、この判断の基本です。車両の価格だけを見ると高く見えますが、走行にかかる費用は下がります。数年分を並べて比べてください。ただし、電池の交換や下取りの価格には不確かな部分が残ります。

荷主の環境要求との関係

荷主がサプライチェーン全体の環境負荷を把握しようとする動きがあります。この文脈で、EVトラックの導入が取引の条件や評価につながることがあります。

  • 特定の配送でEV車両の使用を求められる
  • 排出量の報告を求められる
  • 環境への取り組みが選定の評価項目になる

荷主に確認してから判断するのが現実的です。荷主の要求がないのに先行投資するのはリスクがあります。荷主側の規制強化と運送会社への影響をご覧ください。

荷主に確認してから判断するというのが、この分野での現実的な進め方です。要求がないのに先行して投資すると、費用だけが残ります。

確認するときは、今の話だけでなく今後の見通しも聞いてください。将来的にそうした要求が出る見込みがあるなら、備えとして検討する意味があります。すぐには求められないなら、急ぐ必要はありません。

要求があった場合も、条件を確認する必要があります。どの運行で求められるのか、いつまでか、量の保証はあるのか。投資に見合う条件でなければ、応じる前に相談することになります。

排出量の報告を求められる場合は、車両を変えなくても対応できることがあります。走行の記録と燃料の使用量があれば、計算はできます。まずそこから始めるという選択もあります。

EV以外の選択肢

環境負荷の低減という目的なら、EV以外の手段のほうが効果的な場合があります。 特に、空車距離の削減は投資なしで実現できます。

この七つのうち、投資が要らないのは運転の改善と実車率の向上です。しかも、どちらも燃料の消費に直接効きます。だから、まずここから手をつけるのが順序として自然です。

空で走る距離を減らすことは、環境の面でも採算の面でも効きます。帰り荷を取る、運行の組み方を見直す、他社と組む。どれも車両を替えずにできます。

運転の指導も、続ければ確実に効果が出ます。急な加速を減らす、無駄な待機時のかけっぱなしを減らす。車両ごとの燃費を測って共有すれば、意識も変わります。

燃費の良い車両への更新も、確実な手段です。次の更新の時期に、選択肢として検討する価値があります。投資の額も、新しい方式より読みやすくなります。

補助制度

次世代車両や充電設備の導入について、支援制度が用意されることがあります。名称・要件・補助率・公募時期は年度によって変わるため、最新の情報を確認してください。

補助を受けた車両には処分制限がかかることがあります。承継やM&Aを予定している場合は、期間を確認してください。取得財産の処分制限補助金申請の流れをご覧ください。

※ 補助金の名称・対象経費・要件・公募時期は年度によって変わります。本記事は一般的な進め方を整理したものですので、実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認ください。

制度を使う場合、申請から結果が出るまでの期間を運行の計画に織り込む必要があります。決定の前に発注すると対象外になるのが原則なので、車両の納期と合わせて考えることになります。

処分に制限がかかる点は、承継を考えている会社にとって重要です。期間中に会社の形を変えると影響することがあるため、手法を決める前に確認してください。

今、判断すべきこと

  1. 該当する運行があるか:近距離・定路線・夜間充電可能
  2. 荷主の要求はあるか:あるなら優先度が上がる
  3. 充電設備を設置できるか:スペースと電力容量
  4. 総保有コストで見合うか
  5. 補助制度が使えるか

1〜3のいずれかが満たせないなら、今は見送るという判断も合理的です。技術と価格は今後も変わります。

この五つを順に確認していけば、判断はおおむね決まります。特に、一から三のいずれかが満たせないなら、無理に進める理由はありません。

四つ目の費用の比較では、前提を明記してください。何年使う想定か、年間どれだけ走る想定か、電池の交換をいつと見込むか。前提が変われば結論も変わるため、後から見返せるようにしておく価値があります。

五つ目については、制度があることを前提に計画を立てないほうが安全です。採択されないこともありますし、公募の時期が合わないこともあります。制度がなくても成り立つかを、先に確認してください。

M&Aでの意味

環境対応は、荷主からの要求が高まる領域です。買い手は、取引先の要求に対応できる体制があるかを見ます。

ただし、EVを持っていることが直接価値になるとは限りません。むしろ、燃料費率の管理や実車率の改善といった、日常的な取り組みのほうが評価されます。評価が上がる会社の条件をご覧ください。

日常的な取り組みのほうが評価されるのは、それが継続してきた証拠になるからです。燃料の使用量を車両ごとに管理している、空車の距離を減らす取り組みを続けている。こうした記録は、経営の質を示します。

新しい方式の車両を持っている場合は、それがどう使われているかを説明できるようにしておいてください。稼働しているのか、持っているだけなのか。後者だと、負担として見られます。

試験的に導入するという選択

全面的に切り替えるのではなく、一台だけ入れて試すという進め方があります。この分野では、実際に使ってみないとわからないことが多いためです。

試すことで確かめられるのは、実際の走行距離、充電にかかる時間、ドライバーの受け止め、整備の手配のしやすさです。どれも机上では読み切れません。

一台なら、充電の設備も小さくて済みます。将来的に増やす可能性があるなら、そのときに増強できる形にしておくと無駄になりません。

試す期間としては、季節をまたぐ長さが望ましいでしょう。夏と冬では条件が違います。一年通して使ってみて初めて、実際の運用がわかります。

試した結果は記録しておいてください。走行の実績、充電の回数、困った場面。この記録が、次の判断の材料になります。

ドライバーへの説明

新しい方式の車両を入れると、運転する人の負担が変わります。だから、事前の説明と教育が要ります。

伝えるべきは、走行できる距離の目安と、残りが減ったときにどうするかです。途中で止まる不安があると、余裕を持ちすぎた運行になり、効率が落ちます。

充電の手順も教えておく必要があります。どこで、どうつなぎ、どれだけの時間がかかるか。初めて扱う人には、実際にやってもらうのが確実です。

運転の仕方によって走れる距離が変わる点も、伝える価値があります。急な加速を減らせば距離が伸びる。この関係が理解されると、運転も変わります。

整備をどう手配するか

この方式の車両は、従来と構造が違うため、整備できる工場が限られます。だから、導入の前に手配先を確認しておく必要があります。

確認したいのは、近くに扱える工場があるか、日常の点検を自社でできるか、故障したときに何日で直るかです。遠くまで運ぶことになると、その間の運行が止まります。

代わりの車両をどうするかも決めておいてください。一台しかない場合、それが止まればその運行ができません。従来の車両で代われるようにしておくか、貸してもらえる先を確保しておくかを考えておく必要があります。

部品の供給についても、扱う業者に確認しておくと安心です。新しい方式ほど、供給の体制が整っていないことがあります。

判断を先送りするという選択

条件が揃わないなら、今は見送るという判断も合理的です。技術も価格も、今後変わります。

ただし、見送るにしても、何が揃えば導入するのかを決めておくと後の判断が速くなります。荷主から求められたら、充電の設備が整ったら、価格が下がったら。条件を書いておいてください。

その間にできることもあります。運行ごとの走行距離を記録しておく、電力の容量を確認しておく、荷主の意向を聞いておく。これらは今から始められ、判断のときに役立ちます。

支援の制度が用意されることもありますが、名称も要件も補助の割合も公募の時期も年度によって変わります。使えるかどうかは、その時点の公募の内容を確認してください。支援を受けた車両には処分に制限がかかることがあるため、承継を考えている場合は期間も確認が要ります。

まとめ

EVトラックは、近距離・定路線・夜間充電可能という条件で有効です。充電設備、特に受電設備の増強費用を見込んでください。荷主の環境要求があるかを確認してから判断するのが現実的です。環境負荷の低減という目的なら、空車距離の削減など投資の小さい手段のほうが効果的な場合があります。