基本の構成
- 会社の概要
- 現状と課題
- 取り組みの内容
- 期待される効果(数値で)
- 実施のスケジュール
- 資金の計画
- 実施の体制
制度によって様式は異なりますが、問われる中身は共通しています。
会社の概要
- 事業内容(一般貨物、倉庫、利用運送の別)
- 車両台数、従業員数、営業所
- 主な取引先の業種(社名は伏せて可)
- 直近3期の売上・利益
- 強み(他社と違う点を具体的に)
強みを書く欄では、他社と違う点を具体的に書いてください。安全に努めている、丁寧に対応している。こうした表現は、どの会社でも書けます。
具体的にするには、事実を挙げることです。この地域でこの品目を扱える会社が限られている、この資格を持つ人が何人いる、この荷主と何年続いている。
現状と課題
ここを数字で書けるかが、計画全体の説得力を決めます。
| 悪い書き方 | 良い書き方 |
|---|---|
| ドライバーが不足している | ドライバー◯名が必要だが◯名で運行しており、実働率が◯%にとどまっている |
| 事務作業が多い | 請求業務に月◯時間かかっており、担当者1名に集中している |
| 荷待ちが長い | 直近3か月の平均荷待ちは◯分で、拘束時間の◯%を占める |
| 配車が属人的 | 配車を担えるのが1名のみで、その者の不在時は運行計画が作れない |
数字を出すには、日頃の記録が必要です。労働時間の把握方法、荷主別の採算管理をご覧ください。
この対比表が示しているのは、数字があるかどうかの差です。左は誰でも書ける文章で、右はその会社にしか書けません。
右のように書くには、日頃の記録が要ります。記録がなければ、申請の段階で測り始めることになり、時間がかかります。
測るのは難しくありません。対象になる作業について、何時間かかっているかを数日分記録するだけでも根拠になります。
測ってみて、想定と違う結果が出ることもあります。それ自体に価値があります。思い込みで投資を決めずに済みます。
数字が出せない課題は、書かないほうがよい場合もあります。根拠のない主張は、かえって信頼を損ねます。
取り組みの内容
- 何を導入するのか(設備・システムの具体名と仕様)
- それがどう課題を解決するのか(因果関係を明確に)
- なぜその選択なのか(他の選択肢との比較)
「導入します」だけでは足りません。 「◯◯を導入することで、△△の作業がなくなり、□□時間が削減される」という流れで書いてください。
なぜその選択なのかを書く部分は、飛ばされがちですが効きます。他の方法も検討したうえで選んだことが伝われば、判断の質が示せます。
比べる相手は、別の製品でも、別のやり方でも構いません。人を増やす、外に出す、機械を入れる。それぞれの費用と効果を並べて、なぜこれを選んだかを書きます。
因果の関係を明確にするというのは、途中の段階を省かないという意味です。導入すると何が変わり、その結果として何が減るのか。段階を追って書いてください。
効果を数値で示す
審査で最も見られる部分です。
- 労働時間の削減:月◯時間 → ◯時間
- 生産性の向上:1人あたり売上、1台あたり売上
- 売上・利益の見込み:3〜5年の計画
- 実働率・実車率の改善
- 賃上げ:制度によっては要件になります
数値には根拠を添えてください。「◯%向上」だけでなく、「現在の作業時間◯時間のうち、◯時間が自動化されるため」といった計算過程を示します。
過大な数字を書かないことも重要です。実績報告で説明できなくなります。
過大な数字を書かないという点は、後の報告まで見据えた助言です。書いた数字は、後で照らされます。
だから、控えめに見積もってください。業者の説明する効果をそのまま使うと、たいてい過大になります。
計算の過程を示すことも大事です。どういう前提で、どう計算してその数字になったか。過程が示されていれば、根拠のある見積りだと伝わります。
効果が複数ある場合は、主なものに絞ってください。あれもこれもと並べると、どれも薄く見えます。
測る方法も添えられると、なお良いでしょう。導入した後にどう確かめるか。これがあると、計画に現実味が出ます。
実施のスケジュール
- 交付決定後、いつ発注するか
- 導入・設置の時期
- 運用開始の時期
- 実績報告の時期
補助事業の実施期間内に完了する計画にしてください。期間を超えると対象外になります。
資金の計画
- 総投資額
- 補助金額(見込み)
- 自己負担額
- 自己負担分の調達方法:自己資金か借入か
- 補助金入金までのつなぎ資金(つなぎ資金の準備)
実施の体制
- 誰が責任者か
- 社内の担当者
- 外部の支援(ベンダー、専門家)
「社長が一人でやる」という体制は、実行可能性の面で評価が下がることがあります。担当者を明示してください。
審査で評価される観点
- 課題と取り組みがつながっているか
- 効果が具体的で、根拠があるか
- 実行可能か:体制、資金、スケジュール
- 継続性:導入後も運用できるか
- 政策的な目的に合致しているか:生産性向上、働き方改革、賃上げなど
公募要領に審査の観点が明記されていることが多いので、必ず読んで、それに沿って書いてください。
五つの観点は、公募の要領に書かれていることが多くあります。だから、まずそこを読んで、それに沿って書いてください。
書き終えたら、観点ごとに読み返す方法が有効です。この観点から見て、答えになっているか。抜けている部分が見つかります。
四つ目の継続性は、見落とされやすい部分です。導入した後も運用できるか。使う人がいるか、保守の体制があるか。この点にも触れておいてください。
書くときのコツ
- 専門用語を避ける:審査員が運送業に詳しいとは限りません
- 図表を使う:現状と改善後の比較、スケジュール
- 写真を入れる:現場の状況が伝わります
- 一文を短く
- 結論を先に書く
専門の用語を避けるという点は、この分野で特に効きます。読む人がこの業界に詳しいとは限りません。
業界では当たり前の言葉でも、外から見るとわからないことがあります。書いたら、業界の外の人に読んでもらってください。
図や表を使うことも効果的です。現状と改善した後を並べて示せば、文章で説明するより速く伝わります。
写真も、現場の様子を伝える手段になります。どういう作業をしているのか、何が問題なのか。言葉だけでは伝わらない部分があります。
結論を先に書くという点は、読む側への配慮です。何のための投資かが最初にわかれば、後の説明も理解しやすくなります。
補助金以外でも使える
同じ内容が、次の場面でも使えます。
- 金融機関への説明:借入の申込
- 荷主への提案:改善への取り組みとして
- 社内の共有:なぜこの投資をするのか
- 承継・M&Aの資料:会社の方向性を示す
M&Aでは、買い手が「この会社は今後どうなるか」を知りたがります。事業計画があると、説明が格段に楽になります。企業概要書には何を書くかをご覧ください。
この四つの場面で使えるということは、作る手間が一度で複数に効くということです。だから、制度のためだけの作業と考えないでください。
使い回すには、更新が要ります。数字が古いままだと、かえって信用を損ねます。年に一度は見直してください。
支援を受ける
認定経営革新等支援機関、商工会議所、よろず支援拠点などが支援を行っています。初めての申請では、支援を受けたほうが確実です。
ただし、丸投げしないでください。現状と課題は自社しか書けません。
丸投げしないという点は、質にも実務にも関わります。中身を知らないまま提出すると、質問に答えられません。
支援を受ける場合も、現状と課題は自社で書いてください。その部分は、外の人には書けません。
いつ書き始めるか
公募が始まってから書き始めると、間に合わないことがあります。だから、先に下書きを作っておいてください。
下書きの段階では、制度に合わせる必要はありません。自社の課題、やりたい投資、期待する効果。この三つを書いておけば足ります。
公募が出たら、その様式に合わせて整えます。中身ができていれば、整えるだけなので短時間で済みます。
下書きは、制度を使わない場合にも役立ちます。金融機関に相談するとき、社内で説明するとき、承継の準備をするとき。
年に一度、内容を見直す習慣にしておくと、いつでも使える状態を保てます。
誰が書くか
この作業は、社長一人では書けません。現場のことは現場が、数字のことは経理が知っています。
だから、分担する形が実際的です。現状と課題は現場から聞き取り、数字は経理から出してもらい、方向性は社長が決める。
外部に頼む場合も、現状と課題は自社が書く部分です。ここは外の人には書けません。
丸投げすると、どこかで見た文章になります。審査する側は多くの申請を見ているため、中身のない文章は見抜かれます。
書く過程で社内の理解も進みます。なぜこの投資が必要かを整理する作業は、そのまま共有の材料になります。
実行できる計画にする
審査では、実行できるかどうかも見られます。だから、無理のない計画にしてください。
無理があると見られるのは、期間が短すぎる場合、体制が示されていない場合、資金の裏づけが弱い場合です。
期間については、余裕を持たせてください。導入が遅れることは実際にあります。期間内に終わらないと、対象外になります。
体制については、誰が担当するかを具体的に書いてください。社長が一人でやるという形は、実行できるか疑われます。
資金については、自己の負担分をどう賄うかまで書きます。借入で賄うなら、その見通しも示せると良いでしょう。
書いた計画をどう使い続けるか
提出して終わりにすると、もったいない作業になります。作った計画は、複数の場面で使えます。
金融機関に説明するとき、そのまま資料になります。何のための投資で、どういう効果を見込んでいるか。相手が知りたい内容が揃っています。
社内での共有にも使えます。なぜこの投資をするのかが伝われば、導入した後の使われ方も変わります。
荷主への提案にも、一部を使えることがあります。改善に取り組んでいる会社だという印象につながります。
承継の場面では、会社の方向性を示す資料になります。買い手が知りたいのは、この会社が今後どうなるかです。
だから、一度作ったら更新し続けてください。年に一度、数字を入れ替えるだけで、いつでも使える状態を保てます。
運送業ならではの書き方
この業界の事情は、外から見るとわかりにくい部分があります。だから、前提を丁寧に書く必要があります。
たとえば、拘束される時間と実際に運転している時間が違うこと。荷主の都合で待たされること。車両の更新が定期的に必要なこと。
これらを説明せずに数字だけを出すと、なぜその課題が生じるのかが伝わりません。背景を一言添えるだけで、理解が変わります。
規制への対応という文脈も、使える材料です。労働時間の管理が求められるなかで、この投資がどう役立つか。政策の方向と合っていれば、評価されやすくなります。
人手の確保が難しいという事情も、共通の課題として理解されます。ただし、それだけでは弱いので、自社の具体的な状況を数字で添えてください。
提出の前に確かめること
書き終えたら、提出の前に確認する時間を取ってください。慌てて出すと、後で気づく間違いがあります。
確かめるのは五点です。要領で求められている項目がすべて埋まっているか、数字の計算が合っているか、日付の記載に矛盾がないか、添付する書類が揃っているか、誤字がないか。
数字については、複数の箇所に同じ数字が出てくることがあります。片方だけ直して、もう片方が古いまま、ということが起こります。
他の人に読んでもらうことも有効です。書いた本人には見えない部分が見つかります。
締切の直前は避けてください。提出の仕組みが混み合うことがありますし、不備があっても直す時間がありません。
まとめ
事業計画書は、現状と課題を数字で書けるかが説得力を決めます。課題 → 取り組み → 効果の因果関係を明確にし、効果には計算の根拠を添えてください。過大な数字は実績報告で困ります。同じ内容が金融機関への説明や承継の資料としても使えます。
※ 補助金の名称・対象経費・要件・公募時期は年度によって変わります。本記事は一般的な進め方を整理したものですので、実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認ください。