なぜ最初に入れるべきか

  • 労働時間の客観的な記録:未払残業代のリスクを読めるようにする
  • 拘束時間の管理:規制への対応
  • 監査での帳票:運行記録として求められる
  • 安全指導:急操作、速度、連続運転の把握
  • 燃費管理:コスト削減の基礎
  • 荷待ちの記録:荷主交渉の材料

一つの機器で、これだけの用途があります。 投資対効果が最も明確な領域です。

六つの用途が一つの機器で賄えるという点が、この投資の特徴です。他の仕組みは目的が一つずつですが、これは労務にも安全にも交渉にも使えます。

だから、何から始めるか迷っている会社には、まずここを勧めることになります。効果が複数の面に及ぶため、投資に見合いやすいためです。

ただし、入れただけでは記録が残るだけです。六つの用途に活かすには、データを見て使う仕組みが要ります。この点は、導入を決める前に考えておいてください。

装着の義務

一定の車両には運行記録計の装着が義務づけられています。対象となる車両の範囲は定められており、変更されることがあるため、自社の車両が該当するかは管轄の運輸支局または最新の情報で確認してください。

義務の対象外であっても、労務管理と安全のために装着する価値は十分にあります。

※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。許認可の具体的な取扱い・必要書類・審査期間は、法令の改正や管轄行政庁の運用によって異なります。実際の手続きにあたっては、必ず管轄の運輸支局等および専門家にご確認ください。

機種選定の観点

観点確認すること
データの取り出し方カード、通信、クラウド。事務の手間が変わります
通信型かどうかリアルタイムで見られるか(動態管理を兼ねられるか)
拘束時間の自動集計基準を超えそうなときの警告機能
入力機能荷待ち・荷役をドライバーが記録できるか
ドラレコ連携一体型か、別体か
他システム連携勤怠、給与、配車システムとつながるか
費用機器代、取付費、月額の通信費・利用料
操作性ドライバーが使えるか

通信型を選ぶかどうかが最初の分かれ道です。事務の手間とリアルタイム性を考えると、通信型のほうが活用の幅が広くなります。動態管理の活用をご覧ください。

八つの観点のうち、最初に決めるべきは通信の有無です。ここで運用の形が大きく変わります。

カードなどで取り出す方式だと、車両が戻ってこないとデータが見られません。長距離の運行が多いと、数日分がまとめて入ることになります。通信の方式なら、その日のうちに確認できます。

事務の手間も違います。カードを回収して読み込む作業は、台数が多いほど負担になります。通信なら、この作業自体がなくなります。

費用としては、通信の方式のほうが月々の負担が生じます。台数を掛けた年額で比べてください。事務の時間が減る分と合わせて判断することになります。

入力機能を重視する

デジタコは停車中に何をしていたかを記録できません。荷待ちか、休憩か、荷役か。ここを区別できないと、労働時間の管理ができません。

したがって、ドライバーがボタン一つで状況を入力できる機能があるかは重要な選定基準です。入力が面倒だと、記録されません。

労働時間の把握方法をご覧ください。

入力が面倒だと記録されないという点は、この分野で繰り返し起こる問題です。だから、選ぶときは実際にドライバーに触ってもらってください。

確認したいのは、片手で押せるか、走行の前後に手間なく操作できるか、押し間違えたときに直せるかです。運転席から手が届かない位置にあると、使われません。

区分の数も、多すぎないほうが実際的です。細かく分ければ実態を正確に表せますが、選ぶのに迷えば押されなくなります。まず少ない区分で始めて、必要に応じて足すという進め方が現実的でしょう。

入力が定着しているかは、記録を見れば確かめられます。特定の区分ばかりが並んでいる、あるいは入力自体が少ない。そうした場合は、使いにくいか、意味が伝わっていないかのどちらかです。

ドライバーへの説明

導入の成否は、ここで決まります。

伝えるべきこと

  • 何のために入れるのか:法令対応、安全、そして働いた時間を正しく払うため
  • 何が記録されるのか:速度、時間、位置
  • どう使うのか:責めるためではない
  • ドライバーの利益:荷待ちが記録されて交渉材料になる、事故時に状況が証明される

避けるべき伝え方

  • 「管理を強化する」
  • 「サボりを防ぐ」
  • 説明なしに突然装着する

「監視される」と受け取られると、離職につながります。ドライバーの離職防止をご覧ください。

説明の場は、装着の前に設けてください。付いてから説明するのでは、決まったことを事後に知らされたと受け取られます。

説明では、質問を受ける時間を取ってください。何が記録されるのか、休憩中も見られるのか、勤務時間外はどうなのか。こうした疑問に答えておけば、不安は減ります。

答えられない質問があれば、確認して後で答えると伝えてください。あいまいに答えるより、そのほうが信頼されます。

導入の手順

  1. 目的を決める:法令対応か、労務管理か、安全か(複数でよい)
  2. 機種を選ぶ:デモを見る。既存システムとの連携を確認
  3. ドライバーに説明する:装着の
  4. 一部の車両で試す:操作性と運用を確認
  5. 全車に展開する
  6. データを見る担当を決める
  7. 月次で確認する場を作る

6番目と7番目を決めないまま導入すると、記録装置で終わります。

四つ目の一部での試行は、飛ばさないでください。操作性も、記録の内容も、実際に走らせてみないとわかりません。数台で一か月試せば、問題の大半は出ます。

試すときは、条件の違う運行を選んでください。長距離と地場、荷役の多い運行と少ない運行。条件が偏ると、見つかるはずの問題が見つかりません。

導入後にやること

月次で確認する

  • 拘束時間が基準内に収まっているか
  • 賃金台帳と整合しているか(最重要
  • 急操作の多いドライバーはいるか
  • 燃費の傾向
  • 荷待ちの実態(荷主別)

活用先を広げる

月次で確認する五項目のうち、二つ目の賃金台帳との整合が最も重要です。記録があっても、支払いと合っていなければ、かえって不利な材料になります。

確認するときは、全員分をやる必要はありません。数人を選んで、記録された時間と支払われた金額が対応しているかを見る。合わない場合は、原因を探ります。

合わない原因としては、記録が実態より短い、区分の入力が正しくない、計算の設定が違うといったことが考えられます。どこにずれがあるかで、直すべき場所が変わります。

五つ目の荷待ちの実態は、荷主ごとに集計してください。どの荷主でどれだけ待っているか。数か月分をためれば、交渉の材料になります。

費用と補助制度

機器代・取付費・月額利用料がかかります。台数が多いほど負担も大きくなります。

導入について支援制度が用意されることがあります。トラック協会の助成が用意されることもあり、見落とされがちです。名称・要件・時期は年度で変わるため、最新の情報を確認してください。IT導入関連の支援をご覧ください。

※ 補助金の名称・対象経費・要件・公募時期は年度によって変わります。本記事は一般的な進め方を整理したものですので、実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認ください。

データの取扱い

  • 誰が見られるか(アクセス権限)
  • 保存期間
  • 目的外に使わないこと

運行記録には保存期間が定められています。また、位置情報は個人に関わる情報でもあります。個人情報・貨物情報の取扱いをご覧ください。

アクセスできる人を限るのは、記録の中身が個人の働き方に関わるためです。誰でも見られる状態にすると、目的外の使われ方を招きます。

保存の期間については、法令で求められる期間と、実務で必要な期間の両方を考える必要があります。労務の確認や事故の対応で後から必要になることがあるため、余裕を持たせておくと安心です。具体的な期間は改正されることもあるため、確認しながら決めてください。

M&Aでの意味

デジタコのデータが整備され、賃金台帳と照合されている会社は、労務リスクが読める会社として評価されます。記録がない会社は、保守的に(=大きく)見積もられます。

導入から運用の定着まで1年程度かかります。承継や売却を考え始めた時点で着手する意味があります。未払残業代が価格に与える影響をご覧ください。

記録が賃金台帳と照合されている状態が評価されるのは、そこまでやっている会社が多くないからです。機器はあっても、支払いと突き合わせていない会社は珍しくありません。

だから、照合の記録を残しておいてください。いつ、誰の分を、どう確認したか。この記録があると、管理してきたことが示せます。

装着の前にやっておくこと

機器を付ける前に、社内で決めておくべきことがあります。決めずに始めると、運用が定まりません。

一つ目は、記録した内容を誰が見るかです。運行を管理する立場の人か、事務の担当か、社長か。見る人が決まっていないと、記録は溜まるだけになります。

二つ目は、区分の設け方です。停車中の状況をどう分けるか。この分け方が、後の集計の仕方を決めます。

三つ目は、記録をどう扱うかの方針です。指導に使うのか、労務の管理に使うのか、両方か。用途によって、ドライバーへの説明の仕方も変わります。

四つ目は、装着の順序です。全車に一度に付けるのか、一部から始めるのか。一部から始めれば、運用の問題が小さいうちに見つかります。

記録を指導に使うときの注意

急な操作や速度の超過が記録されると、それを材料に指導したくなります。しかし、数字だけを見て責めると、指導は入りません。

効くのは、その場面で何があったかを本人に聞くことです。急ブレーキを踏んだ理由があるかもしれません。前の車が急に止まった、歩行者が飛び出した。事情を聞かずに数字だけを見ると、実態を見誤ります。

回数が多い人には、傾向として伝えるのが効果的です。他の人と比べてこれだけ多い、という事実を示す。責めるのではなく、事実を共有する形にすれば、本人も受け止めやすくなります。

逆に、改善した人には伝えてください。数字が良くなったことを認められると、続きます。指導は、悪い点を指摘するだけでは機能しません。

荷待ちの記録を交渉に使う

この用途は、投資の回収に直結する部分です。待たされている時間が数字で出れば、条件を話す材料になります。

集計するときは、荷主別、現場別に分けてください。同じ荷主でも、現場によって差があることがあります。差がわかれば、どこを相談すべきかも決まります。

数か月分をためてから話すほうが、説得力があります。一か月では偶然と言われかねません。平均と、いちばん長かった日、傾向。この三つが示せると、相手も検討します。

伝えるときは、苦情としてではなく事実として出してください。この現場では平均でこれだけ待っている、その結果一日に運べる回数がこうなっている。相手が社内で使える形にして渡すことが、話を前に進めます。

定着までにかかる時間

装着してから運用が定着するまでには、一年程度を見込んでおいてください。機器を付けるだけなら数日ですが、記録が正しく取れて、それを使う流れができるまでには時間がかかります。

最初の数か月は、入力の仕方が定まりません。押し忘れや押し間違いが起こります。この時期に声を聞いて、使いにくい部分を直していきます。

次の数か月で、記録が安定してきます。ここから、集計して使う段階に入ります。月次で見る場を作り、気づいたことに手を打つ。この流れができれば定着です。

だから、承継や譲渡を考えているなら、早く始める意味があります。話が始まってから入れても、記録は数か月分しかありません。数年分の記録があることが、説明の材料になります。

まとめ

デジタコは、法令対応・労務・安全・燃費・荷主交渉のすべての基礎になります。通信型か、停車中の状況を入力できるかが選定の要点です。装着の前にドライバーへ目的を説明してください。導入後、月次でデータを見る担当と場を決めないと、記録装置で終わります。