この記事の前提

制度の名称・要件・補助率・公募時期は年度ごとに変わります。ここでは、多くの制度に共通する手続きの流れを整理します。個別の制度は必ず最新の公募要領を確認してください。

※ 補助金の名称・対象経費・要件・公募時期は年度によって変わります。本記事は一般的な進め方を整理したものですので、実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認ください。

全体の流れ

  1. 制度を探す
  2. 公募要領を読む
  3. 事業計画を作る
  4. 見積りを取る
  5. 申請する
  6. 交付決定
  7. 発注・導入・支払い
  8. 実績報告
  9. 確定 → 入金

6番目の交付決定が、最も重要な区切りです。ここより前に発注すると、対象外になるのが原則です。

九つの段階のうち、自社で時期を選べるのは一つ目から四つ目までです。五つ目以降は、制度の日程に従うことになります。

だから、前半の準備を先に済ませておくと有利になります。計画を作り、見積りを取っておけば、公募が始まったときにすぐ申請できます。

公募を知ってから準備を始めると、締切に間に合わないことがあります。特に、計画を書く作業には時間がかかります。

六つ目の区切りが重要なのは、ここより前の支出が対象にならないからです。この一点だけは、絶対に間違えないでください。

制度を探す

  • 中小企業庁・ミラサポplus
  • 国土交通省・地方運輸局
  • 都道府県・市区町村
  • トラック協会
  • 商工会議所・商工会
  • 取引金融機関、顧問税理士

公募は年に数回、期間が限られています。 常に情報を見ておくか、支援機関に相談しておいてください。

公募の期間が限られているという点が、この分野で最も効いてきます。知ったときには締切が近い、ということが起こります。

だから、常に情報を見ておくか、知らせてもらえる関係を作っておく必要があります。商工の団体や金融機関に、関心があることを伝えておくと連絡が来ることがあります。

もう一つの備えは、計画を先に作っておくことです。公募が始まってから書き始めると間に合いませんが、下書きがあれば合わせるだけで済みます。

公募要領を読む

最も重要な作業です。次を確認してください。

  • 対象者:規模、業種、所在地
  • 対象経費:何が対象で、何が対象外か
  • 補助率と上限額
  • 公募期間:締切
  • 必要書類
  • 審査の観点:何が評価されるか
  • 採択後の義務:報告、処分制限

「対象外の経費」を読み飛ばさないでください。人件費、車両の購入、既存設備の更新などが対象外とされることがあります。

この作業を飛ばして申請すると、後で問題が出ます。読むのは骨が折れますが、ここが最も大事な工程です。

読むときは、印刷して線を引きながら進めるのが確実です。画面で流し読みすると、条件を見落とします。

対象外の経費の記載は、特に注意して読んでください。運送業では、車両の本体が対象外とされることがあります。想定していた投資が対象にならないと、計画が崩れます。

審査の観点も、書かれていれば必ず読んでください。何が評価されるかがわかれば、計画に何を書くべきかも決まります。

読んでもわからない部分は、問い合わせ先に聞いてください。自己判断で進めて、後から対象外とされるより確実です。

事業計画を作る

審査の中心になる書類です。次を書きます。

  • 自社の現状と課題
  • この投資で何を解決するのか
  • 投資の内容
  • 効果の数値:生産性、労働時間、売上、利益
  • 実施のスケジュール
  • 資金の調達方法

詳しくは事業計画書の書き方をご覧ください。

見積りを取る

  • 複数社からの見積りが求められることがあります
  • 見積書の日付、宛名、内訳の記載
  • 型番・仕様が特定できること

この段階では発注してはいけません。見積りを取るだけです。

この段階で発注してはいけないという点は、繰り返し確認してください。業者との会話のなかで、口頭で発注したことになる場合もあります。

だから、業者にも事情を伝えておいてください。制度を使う予定で、決定が出るまで発注できないこと。理解していれば、書類も揃えてもらえます。

見積書には、型番や仕様が特定できる記載が要ります。「一式」だけでは、何を買ったかが示せません。

複数から取ることが求められる場合は、その条件も確認してください。何社必要か、同じ仕様で取る必要があるか。

見積りには有効期限があります。申請から決定までに時間がかかると、期限が切れることがあります。取り直しになる可能性も見込んでおいてください。

申請する

  • 電子申請が主流(アカウントの取得が必要な場合があります)
  • 提出書類の不備で不受理になることがあります
  • 締切直前はシステムが混雑します。余裕を持って

電子申請に必要なアカウントは、取得に時間がかかることがあります。事前に用意してください。

電子での申請に必要な準備には、時間がかかることがあります。だから、公募を待つ間に済ませておいてください。締切間際に取得しようとすると、間に合いません。

提出する書類の不備で受け付けられないこともあります。要領に書かれた書類を一覧にして、揃っているかを確認してから送ってください。

締切の直前は混み合います。余裕を持って、数日前には提出を終える予定で進めてください。

交付決定

採択の通知を受け、交付申請を経て交付決定となります(制度により手順が異なります)。

ここまで待ってから発注してください。 採択の通知だけで発注すると、対象外になる可能性があります。

採択の通知と、発注してよくなる時期が別であることは、必ず確認してください。通知を受けて安心し、そこで発注してしまう例があります。

制度によって手順が違うため、自分の場合はいつからかを問い合わせて確かめるのが確実です。

発注・導入・支払い

  • 交付決定の内容どおりに発注する
  • 変更する場合は事前に手続きが必要なことがあります
  • 支払いは振込で(現金払いは証拠が残りにくい)
  • 証拠書類をすべて保管する

「安い機種に変えた」「別のメーカーにした」といった変更は、勝手に行わないでください。

変更を勝手に行わないという点は、実務でつまずきやすい部分です。より良い機種が見つかった、価格が安くなった。どれも善意からの変更ですが、対象外の原因になります。

変更が必要になったら、必ず先に相談してください。手続きを踏めば認められる場合もあります。

支払いを振込で行うのは、記録を残すためです。現金で払うと、誰にいつ払ったかを示す資料が弱くなります。

証拠になる書類は、その場で集めてください。後から業者に頼むと、時間がかかりますし、揃わないこともあります。

実績報告

導入が完了したら、期限内に報告します。

  • 実績報告書
  • 見積書、注文書、契約書
  • 納品書、請求書
  • 領収書または振込記録
  • 導入した設備の写真
  • その他、制度が求める書類

実績報告と証拠書類で詳しく整理しています。

この報告で不備があると、補助の額が減ることがあります。だから、書類を揃える作業は導入と並行して進めてください。

写真については、撮る時期を決めておく必要があります。設置の前、設置の作業中、完成後。求められる内容は制度によって違うため、要領で確かめてください。

書類の宛名にも注意が要ります。会社名で発行されているか、個人名になっていないか。細かい点ですが、ここで差し戻されることがあります。

確定 → 入金

報告内容が確認され、補助額が確定してから入金されます。導入から入金まで、数か月かかることがあります

その間の資金は自社で用意する必要があります。つなぎ資金の準備をご覧ください。

入金後も終わりではない

  • 取得財産の処分制限:一定期間、売却・廃棄・目的外使用に制限(取得財産の処分制限
  • 事業化状況の報告:数年間、報告が求められる制度があります
  • 帳簿・書類の保存

M&Aや承継を予定している場合、処分制限の内容を必ず確認してください。

三つのうち、一つ目が承継や譲渡に関わります。制限のある期間中に会社の形を変える判断をすると、影響が出ることがあります。

だから、台帳を作って期間を記録しておいてください。いつまで制限がかかるかがわかっていれば、時期の判断ができます。

よくあるつまずき

つまずき対策
交付決定前に発注したスケジュールを合わせる。急ぐなら補助金を使わない判断も
公募を知ったときには締切間近事業計画を先に作っておく
対象外の経費が含まれていた公募要領の対象経費を精読する
証拠書類が揃わない最初から保管を徹底する
入金前に資金が尽きたつなぎ資金を確保する
報告の期限を過ぎた期限をカレンダーに入れる

補助金でよくある失敗もご覧ください。

支援機関の活用

申請には手間がかかります。認定経営革新等支援機関、商工会議所、よろず支援拠点などの支援を活用してください。

ただし、成功報酬型の支援は費用の妥当性を確認してください。補助金額に対して報酬が過大になっていないかを見てください。

報酬の妥当性を見るときは、補助の額に対する割合で考えてください。手元に残る額が小さくなるなら、使う意味が薄れます。

無料または低額で相談できる場もあります。商工会議所やよろず支援の拠点では、申請の相談に応じてもらえます。まずここから始めるという選択もあります。

なお、内容を偽って申請することを勧める相手には関わらないでください。返還だけでなく、より重い結果につながります。

スケジュールを一枚にする

この流れには複数の期限があります。だから、一枚の表にまとめておくと管理しやすくなります。

入れる項目は、申請の締切、決定の見込み時期、発注してよくなる時期、導入の期限、報告の期限、入金の見込み時期です。

この表があれば、いつ何をすべきかが一目でわかります。担当が代わっても、引き継げます。

あわせて、資金の動きも書き込んでください。いつ支払いが発生し、いつ入金があるか。この差の期間が、資金を用意しておく期間になります。

導入から入金までに数か月かかることを前提に、その間の資金を確保しておいてください。

担当を決めて引き継ぎも決める

この手続きは、期間が長くなります。申請から最後の報告まで、数年に及ぶこともあります。

だから、担当が途中で代わることを想定しておく必要があります。誰が担っているかを社内で共有し、資料の置き場所も決めておいてください。

引き継ぎのときには、これまでの経緯と残っている手続きを伝えます。書類が揃っていれば、引き継ぎも楽になります。

社長が一人で抱えていると、忙しい時期に手が回りません。事務の担当と分担するか、外部の支援を使うかを決めておいてください。

入金までの資金をどう用意するか

後払いであるため、投資の額を一度は自社で用意することになります。この資金をどう賄うかを、申請の段階で決めておく必要があります。

手元の資金で足りるなら問題ありませんが、足りない場合は借入を検討することになります。この相談は、申請と並行して進めてください。

金融機関に相談するときは、制度の内容と入金の見込み時期を伝えてください。後から補助が入ることがわかっていれば、判断もしやすくなります。

ただし、採択されない可能性もあります。その場合にどうするかも、あらかじめ考えておいてください。

減額の可能性も見込んでおく必要があります。報告の段階で対象外の経費が見つかると、入る額が減ります。満額が入る前提で計画を組まないでください。

入金の後に残る義務

入金を受けても、そこで終わりではありません。制度によっては、その後も報告が求められます。

報告の内容は、導入した設備がどう使われ、どういう効果が出たかです。だから、効果を測る仕組みを最初から作っておく必要があります。

測っていなければ、報告のときに困ります。何がどれだけ変わったかを示せません。

取得した財産の管理も続きます。制限のある期間中は、勝手に処分できません。台帳を作り、期間を記録しておいてください。

帳簿や書類の保存も求められます。保存の期間と場所を決めて、担当が代わっても残る形にしておいてください。

まとめ

制度探し → 要領精読 → 事業計画 → 見積り → 申請 → 交付決定 → 発注 → 実績報告 → 入金、という流れです。交付決定前の発注は対象外になるのが原則です。入金まで数か月かかるため、つなぎ資金を用意してください。処分制限は承継・M&Aにも関わります。