売り方は3つある
- 事業ごと譲る:工場も設備も取引先も人も、まとめて引き継ぐ
- 居抜きで譲る:設備を残したまま、工場を次の人に使ってもらう
- ばらして売る:不動産と設備を別々に処分する
残るお金は、上から順に多いのが普通です。事業として譲れるうちに動くほうが有利、というのはこの順番から来ています。廃業と承継をどう比べるかで比較の仕方を示しています。
居抜きでの売却
食品工場を居抜きで売却するとは、設備を据え付けたまま次の営業者に引き渡すことです。
向いている場合
- 設備がまだ使える状態にある
- 同じ業種の会社が近くにいる
- 撤去費用を負担したくない
撤去して更地にすると、その費用が丸ごと出ていきます。居抜きなら、その費用が浮くうえに設備の分も評価されます。
確認すること
- 設備のリース残債があるか(残っていれば処理が要る)
- 建物と設備の名義が誰か
- 用途地域と、次の人が同じ用途で使えるか
- 排水設備が、次の営業者の業種に合うか
排水処理は業種によって求められる能力が違います。環境法令への対応を参照してください。
設備だけを売る
食品製造設備の売却や、食品工場の中古設備の売却には専門の買取業者があります。建物を貸したり売ったりする相手と、設備を買う相手は別のことが多い。
買い手が付きやすいもの
- 金属探知機・X線検査機:業種を問わず使え、需要が広い
- 包装機・充填機:規格が合えば転用しやすい
- 冷凍冷蔵設備:新設が高いぶん中古の需要がある
- ボイラー:整備状況によっては引き取られる
逆に、その工場向けに作った専用設備は、値が付きにくい。撤去費用のほうが上回ることもあります。
売る前にやること
- 設備の一覧を作る(メーカー・型式・導入年・稼働状況)
- 取扱説明書と保守の記録を探す
- 動く状態のまま見てもらう(止めてからでは価値が落ちる)
- 複数の業者に声をかける
3番目が効きます。稼働しているところを見せられると、査定が変わります。
冷蔵倉庫・冷凍倉庫
食品工場の冷蔵倉庫や冷凍倉庫は、単独でも需要があります。保管の需給は締まりやすく、製造をやめても倉庫だけ残す選択もあり得ます。
ただし、電力を食い続ける資産でもあります。稼働させたまま持つのか、貸すのか、売るのか。冷凍食品会社のM&Aで、倉庫を含めた評価を扱っています。
社長個人所有の工場
建物や土地が社長個人の名義になっているケースは珍しくありません。会社を譲っても、工場が付いてこないという状態になります。
取り得る形
- 会社と一緒に、個人から買い手へ譲る
- 個人が持ったまま、買い手に貸す(賃貸)
- 譲渡の前に、会社が個人から買い取っておく
どれを選ぶかで、手取りも税金も変わります。買い手にとっては「賃料がいつまで今の条件か」が関心事になります。
不動産を会社と個人でどう分けるかと工場の土地と相続を参照してください。相続が絡むと選択肢が減るので、早めに整理してください。
工場を賃貸する形
買い手が土地建物まで買う資金を用意できない場合、工場は貸して、事業だけ譲るという組み方があります。売り手には賃料が入り続けます。
ただし、建物の修繕義務や、将来の建て替えをどうするかを決めておかないと、あとで揉めます。契約の範囲を書面にしてください。
順番
- まず事業ごと譲れるかを探す
- 難しければ居抜きで使ってくれる相手を探す
- それも難しければ、設備と不動産を分けて処分する
1から順に当たること。最初から3を選ぶと、残せたはずのものが残りません。評価の考え方は工場不動産をどう評価するかと設備をどう評価するかで扱っています。
※ 契約の内容や必要な手続きは個別の事情によって異なります。税務や法務の取扱いも制度改正で変わることがあります。実際の判断にあたっては、契約書を確認のうえ、専門家にご相談ください。