工場用地の評価が特殊な理由
食品工場は、いま同じ場所に同じものを新設できるとは限りません。次のような制約があるためです。
- 用途地域の制限で、新たに工場を建てられない地域が増えている
- 住宅地に囲まれ、臭気・騒音・車両の出入りが問題になる
- 排水処理の設置が難しい場所がある
- 大量の水と電力を必要とするため、インフラの制約を受ける
つまり、いま操業できていること自体に価値があるということです。これが「既存不適格」であっても、稼働している限りは価値を持ちます。
評価で確認される項目
1. 用途地域と建築の制限
- 用途地域は何か(工業専用地域、工業地域、準工業地域など)
- 現在の建物が適法に建てられているか
- 建ぺい率・容積率に余裕があるか(増築できるか)
- 建て替える場合、同規模の建物が建てられるか
買い手が増産や建て替えを考えている場合、ここが計画の前提になります。
2. 建築確認と検査済証
古い工場では、増改築を重ねた結果、確認申請や検査済証が揃っていないことがあります。
直ちに操業に支障が出るわけではありませんが、次の場面で問題になります。
- 増築・改築をするとき
- 融資を受けるときの担保評価
- 補助金を申請するとき
- 売却するとき
書類を探しておくこと自体に価値があります。法務デューデリジェンスで扱っています。
3. インフラの容量
食品工場では、これが増産の上限を決めることがあります。
- 排水:処理能力、下水道への接続か放流か、放流先の制約
- 電気:受電容量、増設の余地
- ガス・蒸気:供給能力
- 用水:井戸か上水か、水量と水質
買い手が生産量を増やしたい場合、排水処理が律速になっていないかを必ず確認します。排水・臭気・騒音の規制をご覧ください。
4. 近隣との関係
- 臭気・騒音に関する苦情の履歴
- 操業時間や搬入時間に関する取り決め
- 周辺の宅地化が進んでいないか
過去に地域と協定を結んでいる場合、その内容が事業の制約になります。必ず開示してください。
5. 立地の利便性
- 幹線道路・高速道路へのアクセス
- 大型トラックの進入と転回のしやすさ
- 消費地・原料産地との距離
- 従業員の通勤圏(採用のしやすさ)
日配品を扱う工場では、配送時間の制約が事業範囲を決めます。立地はそのまま事業価値です。
6. 土壌汚染
過去の用途によっては、調査が求められる場合があります。特に、敷地の一部を売却する、建て替える、廃止するといった場面で問題になります。調査の履歴があるかが確認されます。
会社名義か個人名義か
食品工場では、土地建物が経営者個人の名義になっていることが少なくありません。この場合、評価と譲渡の設計が変わります。
- 会社名義:株式譲渡でそのまま引き継がれる。評価に含まれる
- 個人名義:譲渡の対象外。賃貸を継続するか、別途売却するか
個人名義のまま賃貸を続ける場合、賃貸借契約の内容が事業の継続性を左右します。期間、修繕負担、解約条件を明確にする必要があります。工場不動産を分けて残すで扱っています。
事前に揃えておく資料
- 登記事項証明書(土地・建物)、公図、地積測量図
- 建築確認済証・検査済証(あるもの)
- 建物の平面図、設備の配置図
- 用途地域が分かる都市計画図
- 賃貸借契約書(個人名義の場合)
- 排水・環境関係の届出書類と測定記録
- 担保設定の状況が分かる書類
これらは探すのに時間がかかります。古い工場ほど、書類が散逸していることが多いものです。早めに着手してください。
※ 建築基準法・都市計画法・環境関係法令の取扱いは、自治体の運用や個別の事情によって異なります。実行にあたっては、専門家および所管の行政庁にご確認ください。