帳簿価額は参考にならない
減価償却が終わって帳簿価額が1円になっている設備でも、稼働していれば価値があります。逆に、帳簿価額が残っていても、実際には使えない設備には価値がありません。
評価で使われるのは実際の使用可能年数です。ここが帳簿と最も乖離する部分です。
買い手が見る3つの観点
観点1:あと何年使えるか
主要設備ごとに、残りの稼働可能年数を見積もります。判断材料は次のとおりです。
- 導入年と、メーカーが示す想定寿命
- 実際の稼働時間(1日何時間、年間何日)
- 修繕の頻度と金額の推移
- 部品の供給が継続しているか
修繕費が毎年増えている設備は、寿命が近いサインです。帳簿上の年数より、この推移のほうが正確です。
観点2:更新にいくらかかるか
今後3〜5年で必要になる更新投資の総額が見積もられます。この金額は、そのまま評価額から差し引かれるのが実務です。
食品工場で金額が大きくなりやすいのは次です。
- 冷凍機・冷蔵設備(冷媒の規制動向も影響)
- ボイラー・蒸気配管
- 排水処理設備
- 充填・包装ライン
- 建屋の屋根・外壁・床
観点3:何ができるか(汎用性と余力)
これはプラスに働く観点です。
- 他の品目も作れる汎用性があるか
- 生産能力に余力があるか(増産できるか)
- 参入障壁の高い設備を持っているか(冷凍、レトルト、無菌充填など)
- 金属検出機・X線検査機など、取引先が求める設備が整っているか
買い手が自社の生産を移したいと考えている場合、余力そのものが買収の目的になります。買い手は食品工場の何を見ているかをご覧ください。
設備年表を作る
最も効果的な準備です。次の項目を一覧にします。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 設備名 | メーカー・型式 |
| 導入年 | 西暦 |
| 稼働状況 | 稼働中/予備/停止中 |
| 修繕履歴 | 直近5年程度の内容と金額 |
| 更新見込み | ◯年頃/概算額 |
| 備考 | 部品供給、規制対応の要否 |
この表があると、次の効果があります。
- 買収監査での質問に即答できる
- 更新負担を自分から示すことで、信頼につながる
- 「管理されている工場」という印象になる
- 金融機関への説明にもそのまま使える
作り方は設備の寿命から逆算するにまとめました。
更新してから売るか、そのまま売るか
よくある悩みです。判断の目安は次のとおりです。
| 更新してから売る | そのまま売る |
|---|---|
| 補助金が使える見込みがある | 自己資金の余裕がない |
| 更新で生産性が明確に上がる | 更新の効果が読めない |
| 安全・品質に直結する設備 | 買い手が自社仕様に入れ替える可能性が高い |
| 更新後に稼働実績を積む時間がある | すぐに譲渡したい |
ポイントは更新の効果が数字に出るまでの時間です。入れ替えた直後に売っても、効果は評価に反映されにくいものです。少なくとも1年は稼働させたいところです。
優先度は「安全・品質 → 生産性 → 見た目」
限られた資金で更新するなら、この順序です。
- 安全・品質に直結するもの:金属検出機、X線検査機、冷却設備。取引先の工場監査でも指摘されます
- 生産性に効くもの:ボトルネックになっている工程の設備
- 見た目・快適性:事務所や休憩室
3番目を先にやってしまう会社がありますが、評価にはほとんど効きません。
隠さないこと
更新の必要性を伏せて譲渡すると、買収監査で必ず見つかります。環境・設備デューデリでは、外部の専門家が現地を見ることもあります。
見つかった場合、価格の再交渉になるか、表明保証違反として後から補償を求められます。環境・設備デューデリと最終契約書の要点をご覧ください。