チェンジオブコントロール条項とは
契約の一方の当事者について、株主や支配権が変わった場合に、相手方が事前の承諾を求められる、あるいは契約を解除できると定めた条項です。「支配権の変動」「経営権の異動」といった表現で書かれていることもあります。
この条項があると、株式譲渡であっても取引先の同意が必要になります。同意が得られなければ、その取引を失うリスクが生じます。
食品製造業でよく入っている契約
- 大手量販店・コンビニ向けの取引基本契約
- OEM・受託製造契約(特に大手メーカー向け)
- ライセンス契約(キャラクター、ブランド使用)
- フランチャイズ契約
- 金融機関との融資契約
- リース契約
- 工場・倉庫の賃貸借契約
OEM契約は特に注意が必要です。委託側は製造ノウハウと品質管理体制を前提に発注しているため、経営主体が変わることに敏感です。OEM・受託製造業の事業承継もご覧ください。
探し方
契約書を集めて、次の語句を検索します。
- 「支配」「経営権」「議決権」「株主」
- 「合併」「会社分割」「事業譲渡」「組織再編」
- 「承諾」「同意」「通知」
- 「解除」「解約」
問題は、そもそも契約書が見つからないことです。長年の取引が口約束や注文書のやり取りだけで続いている例は、食品業界では珍しくありません。この場合は条項自体が存在しないため、法的には同意は不要ですが、実務上は説明が必要になります。契約書の棚卸しを先に行ってください。
同意取得のタイミング
難しいのは、「同意が要る」と「まだ公表したくない」が衝突することです。
実務上は、次の順で進めます。
- 基本合意の段階で、条項の有無を洗い出す
- 買収監査の中で、買い手と対応方針を協議する
- 最終契約で「主要取引先の同意取得」をクロージング条件にする
- 最終契約の締結後、クロージングまでの間に同意を取る
3番目がポイントです。同意が取れなかった場合にどうするかを、契約で先に決めておくことで、双方のリスクが明確になります。
同意を求めるときの伝え方
取引先が心配するのは3つだけです。品質が変わらないか、供給が止まらないか、条件が変わらないか。この3点に先に答えてください。
具体的には、次を明示します。
- 工場・ラインは変わらないこと
- 品質管理の責任者と体制は継続すること
- 営業許可・認証は有効に継続すること
- 担当者は当面変わらないこと
- 買い手がどういう会社で、なぜ引き継ぐのか
買い手側の担当者に同席してもらうのが最も効果的です。取引先との関係を切らさない引き継ぎを参照してください。
同意が得られない場合
実際には、条項を根拠に取引を打ち切られることは多くありません。取引先にとっても、代替の供給先を探すのは負担だからです。
ただし、次のような場合はリスクが高まります。
- 買い手が取引先の競合にあたる
- 買い手が同じ商品を自社でも作っている
- 取引先が以前から取引の見直しを検討していた
1番目は特に重大です。打診先の選定段階で除外すべき相手にあたります。買い手はどう探すのかで扱っています。
事業譲渡の場合
事業譲渡では、そもそも契約は自動的には移りません。条項の有無にかかわらず、相手方の同意を得て個別に移す必要があります。手続きの量が大きく変わるため、スキームの選択段階で織り込んでください。株式譲渡と事業譲渡はどちらを選ぶかをご覧ください。
※ 契約条項の解釈や効力は、記載内容や個別の事情によって異なります。実行にあたっては弁護士等の専門家に必ずご確認ください。