2つの性質の違い
| 自社ブランド | PB・OEM | |
|---|---|---|
| 粗利率 | 高い | 低い |
| 数量の安定性 | 変動しやすい | まとまって安定 |
| 価格の決定権 | 自社にある | 相手にある |
| 営業・販促の負担 | 大きい | 小さい |
| 在庫リスク | 自社が負う | 受注生産で軽い |
| 切り替えられるリスク | 小さい | 大きい |
どちらにも合理性があります。PB・OEMは営業をかけずに稼働を埋められる一方、価格を握られます。
評価への影響
PB・OEM100%の場合
次の点で評価が下がりやすくなります。
- 粗利率が低く、調整後利益が小さい
- 取引先の方針転換で売上が一気に消えるリスク
- 価格交渉力がなく、原材料高を転嫁しにくい
- チェンジオブコントロール条項があれば、承継の可否に直結する
ただし、買い手がその取引先の口座を望んでいる場合は逆に価値になります。大手との取引は、新規に開くのが難しいためです。
自社ブランド100%の場合
粗利率は高くなりますが、次の課題があります。
- 数量が読みにくく、稼働が安定しない
- 営業・販促の費用と人手がかかる
- 在庫リスクを自社が負う
- 棚を維持するための取引先対応が必要
望ましい構成
絶対の正解はありませんが、実務的には「稼働の土台をPB・OEMで埋め、粗利を自社ブランドで稼ぐ」という組み合わせが評価されやすい形です。
目安として、自社ブランドが売上の3〜5割程度あると、次の状態になります。
- 粗利率が業界平均を上回る
- 1社への依存度が下がる
- 価格交渉で「断る」という選択肢を持てる
- 自社の判断で商品開発ができる
最後の項目は、買い手にとって重要です。自社で商品を作れる会社は、統合後の展開の幅が広がります。
自社ブランドを持つには
受託中心の会社が自社ブランドを立ち上げるのは簡単ではありません。現実的な手順は次のとおりです。
手順1:既存の設備で作れるものから始める
新しい設備を入れる必要がある商品は、リスクが大きくなります。いま作っているものの延長線上で、自社商品にできるものを探します。
手順2:小さい販路で試す
いきなり量販店の棚を狙わず、地域の小売店、道の駅、直販、ECから始めます。反応を見ながら改良できるのが利点です。直販・EC・卸の粗利を比べるをご覧ください。
手順3:商標を先に押さえる
ブランド名を決めたら、商標の登録を検討します。後から他社に取られると、使えなくなります。必ず会社名義で登録してください。商標・レシピ・パッケージの権利整理を参照してください。
手順4:粗利率を管理する
自社ブランドは売上が立っても、販促費や在庫ロスで利益が残らないことがあります。販路別・商品別の粗利を必ず見るようにしてください。品目別採算の作り方が前提になります。
PB・OEMとの関係に注意
自社ブランドを立ち上げるとき、既存のPB・OEM取引先と競合しないかを確認してください。契約に競合品の製造を制限する条項が入っていることがあります。
また、契約上の制限がなくても、取引先が良い顔をしない場合があります。商品カテゴリや販路をずらすことで、摩擦を避けられることが多いものです。PB・OEM依存からの脱却で扱っています。
時間軸
自社ブランドの比率を意味のある水準まで上げるには、3〜5年を見ておく必要があります。承継やM&Aの1年前から始めても、評価には反映されにくいのが実情です。
逆に言えば、早く着手するほど効きます。「まだ早い」と思う社長ほど早く動くべき理由もご覧ください。