まず必要額を出す
難しく考える必要はありません。引退後の生活費、住宅や車の更新費用、医療・介護に備える分、子や孫への援助。この4つを月額と一時金に分けて書き出すだけで、おおよその総額が見えます。
ここで重要なのは、会社から切り離して考えることです。「会社にお金があるから何とかなる」という感覚のままだと、承継後に後継者との間で揉めます。
原資1:役員退職金
長年勤めた経営者への退職金は、税務上も比較的有利に受け取れる形です。ただし金額の妥当性には考え方があり、あまりに大きいと損金として認められない場合があります。役員退職金の税務上の注意で扱っています。
また、会社の資金繰りから見て一度に払えるかどうかも問題になります。食品製造業は在庫と売掛の資金負担が重い業種なので、退職金の支払いで運転資金が細ると、承継直後の後継者が苦労します。
原資2:株式の譲渡対価
第三者に譲る場合、対価がまとまった額で入ってきます。親族内・社内承継でも、後継者に有償で譲れば同じことです。ただし後継者側に買い取り資金が必要になるため、そこが最大の論点になります。承継の資金をどう調達するかを参照してください。
譲渡対価には税金がかかります。手取りがいくらになるかは売却後の手取りで整理しています。
原資3:工場・土地の賃料
食品製造業では、工場の土地建物が経営者個人やその資産管理会社の名義になっていることがよくあります。この場合、会社を譲っても不動産は手元に残し、賃貸に切り替えるという選択が取れます。
毎月の賃料は、引退後の安定収入として機能します。一方で、買い手から見ると「不動産を持っていない会社」になるため、評価や交渉に影響します。設計の考え方は工場不動産を分けて残すにまとめました。
原資4:年金と個人の金融資産
厚生年金、小規模企業共済、個人で積み立ててきた分。これらは既に決まっている部分なので、まず把握して、残りをどう埋めるかという順番で考えます。
受け取り方の順序を決める
4つの原資は、どれか1つに寄せる必要はありません。むしろ、退職金である程度受け取り、残りを譲渡対価と賃料で埋める、という組み合わせのほうが現実的です。
組み合わせによって税金も、会社に残るお金も変わります。「いくら必要か」を先に決め、そこから逆算して配分する——この順番にすると、顧問税理士との相談も具体的に進みます。
※ 退職金・株式譲渡・不動産賃貸の税務上の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実行にあたっては、顧問税理士等の専門家に必ずご確認ください。