まず押さえること
相続発生後の対応には、期限があるものとないものがあります。期限があるものから着手してください。
なお、以下の手続はいずれも個別事情によって扱いが変わります。早い段階で税理士・弁護士・社会保険労務士にご相談ください。
1週間以内にやること
会社を止めない
最優先です。運送業は止まると荷主が離れます。
- 誰が当面の指揮を執るかを決める(役員、幹部)
- 社員に状況を伝える
- 主要荷主に連絡し、運行に支障がないことを伝える
資格者の確認
亡くなった社長が運行管理者・整備管理者を兼任していた場合、すぐに対応が必要です。 選任が欠けた状態は事業の継続に関わります。
代わりの有資格者が社内にいるか、いなければどうするか。運輸支局に速やかにご相談ください。 運行管理者の確保と育成をご覧ください。
資金の確認
社長個人の口座は凍結されます。 会社の口座は別ですが、次を確認してください。
- 会社の口座から支払いができる状態か(代表者印、ネットバンキングの権限)
- 直近の支払予定(給与、燃料、リース、税金)
- 社長個人が会社に貸付をしていた場合の扱い
1か月以内にやること
代表者の選任
取締役が他にいる場合と、社長が唯一の取締役だった場合で手順が異なります。
- 他に取締役がいる:取締役会または株主総会で代表者を選定
- 社長が唯一の取締役:株主総会で新たな取締役を選任する必要があります。ただし株式を誰が持つかが未確定だと、総会の開催自体が難しくなることがあります
後者は非常に厄介です。 相続人間で株式の扱いを協議しながら進めることになります。弁護士・司法書士にご相談ください。株式が共有になったときに起きる問題をご覧ください。
許認可の届出
代表者・役員が変わるため、各許認可について変更届が必要です。
- 一般貨物自動車運送事業
- 貨物利用運送事業
- 倉庫業
- 廃棄物収集運搬業(自治体ごと)
期限や様式は所管ごとに異なります。各窓口にご確認ください。 代表交代の実務手順をご覧ください。
金融機関への連絡
- 状況の報告(隠すと後で信用を失います)
- 代表者変更後の口座・印鑑の手続
- 個人保証の扱いの協議:保証債務は相続の対象になりうるため、専門家を交えて確認してください
相続放棄の検討期限
相続放棄には期限があります。会社に多額の債務があり、個人保証が付いている場合、放棄の検討が必要になることがあります。
期限が短いため、早い段階で弁護士にご相談ください。
数か月以内にやること
相続財産の把握
- 自社株(自社株の評価方法の基本)
- 不動産(車庫・倉庫が個人名義の場合)
- 会社への貸付金
- 個人保証などの債務
運送会社のオーナーは、自社株と不動産で財産の大半を占めることが多く、しかもどちらも現金化しにくいという特徴があります。納税資金の確保が論点になります。
遺産分割の協議
遺言があればそれに従います。なければ相続人全員での協議です。
会社の株式を分散させないことが、事業継続の観点では重要です。 ただし他の相続人の取り分との調整が必要になります。相続人が複数いる場合の株の分け方をご覧ください。
相続税の申告
申告と納付には期限があります。自社株の評価に時間がかかるため、早めに税理士に依頼してください。
納税資金が足りない場合の対応(延納・物納など)も含め、税理士にご相談ください。
個人名義の資産の整理
車庫、倉庫、駐車場が社長個人の名義だった場合、会社が使い続けられるかが論点になります。
- 相続人が会社に貸し続けてくれるか
- 賃貸借契約はあるか
- 会社が買い取るか
ここが決まらないと、営業所や車庫の要件に影響することがあります。 車庫・倉庫の不動産を持つ会社の評価、個人名義の車庫を法人に移すをご覧ください。
その先の選択
落ち着いた段階で、事業をどうするか決める必要があります。
判断を先送りするほど、会社の価値は下がります。 荷主もドライバーも、先の見えない会社からは離れていきます。
この状況を避けるために
この記事の内容を読んで「大変だ」と思われたなら、それが正しい感覚です。準備があれば、ほとんどは避けられます。
- 遺言を残す(遺言で決めておくこと)
- 株式の承継を計画的に進める(生前贈与の使い方)
- 代表以外の取締役を置く
- 運行管理者を複数確保する
- 個人名義資産の契約を整える
まとめ
相続発生後は、事業を止めないこと、資格者の欠員を埋めること、代表者を選任することが先決です。許認可の届出、相続放棄の検討、相続税の申告には期限があります。個別性が高く期限も絡むため、早い段階で税理士・弁護士にご相談ください。そして何より、この状況は事前の準備で避けられます。
※ 本記事は一般的な考え方を整理したものです。税務の取扱いは、法令の改正や個別の事情によって異なります。実際の判断にあたっては、必ず税理士等の専門家にご確認ください。