まず現状を可視化する

年齢を5歳刻みで集計し、人数を並べてください。これだけで状況が一目で分かります。

年代人数5年後10年後
20代 30代へ40代へ
30代 40代へ50代へ
40代 50代へ60代へ
50代 60代へ退職期
60代以上 退職期

5年後・10年後に何人減るかを計算してください。この数字が、採用計画の出発点になります。

なぜ偏るのか

1. 若手が応募してこない

  • 免許(普通免許で乗れる車両の範囲が変わっている)
  • 労働時間・休日のイメージ
  • 賃金水準
  • 業界のイメージ

2. 入っても続かない

  • 教育体制がなく、放り出される
  • ベテランとの関係
  • 思っていた仕事と違った
  • 相談相手がいない

3. 採用の条件が有資格者に限定されている

「大型経験3年以上」といった条件では、そもそも若手が対象外です。

打ち手:採用の間口を広げる

「経験者だけ」をやめることが、最も効果のある一手です。

打ち手:定着させる

採っても続かなければ意味がありません。入社後1年が勝負です。

  • 入社時教育の予定表を作る(教育体系の整備
  • 指導役を明示する
  • 最初の3か月は定期的に面談する
  • いきなり難しい便を任せない

ドライバーの離職防止をご覧ください。

打ち手:今いる人に長く働いてもらう

若手が入るまでの時間を稼ぐ必要があります。

打ち手:技能を残す

ベテランが抜ける前に、知識を会社に残してください。

  • 荷主先ごとの注意点を文書化する
  • ベテランに指導役を担ってもらう
  • 同乗で伝える機会を作る

ベテランの引き止めと技能の継承をご覧ください。

人員計画を立てる

  1. 5年後・10年後の退職予定人数を出す
  2. 年間の離職者数(過去3年の平均)を出す
  3. 必要な年間採用人数を計算する
  4. 採用手法別の実績を出す(何人採れているか)
  5. 足りない分をどう埋めるかを決める

4番目までやると、「今のやり方では足りない」ことが数字で分かります。それが打ち手を変える動機になります。採用コストの考え方をご覧ください。

採用できない場合の選択肢

どうしても人が確保できない場合、事業の形を変える判断もあります。

  • 車両を減らし、利益率の高い仕事に絞る
  • 傭車・利用運送の比率を上げる(貨物利用運送事業の登録
  • 不採算の荷主から撤退する
  • 採用力のある会社との統合を検討する

最後の選択肢は、会社と従業員を守る現実的な手段です。人が採れない状態が続けば、いずれ事業は縮小します。早い段階での検討が、選べる選択肢を多くします。運送・物流業のM&A承継のタイムラインをご覧ください。

M&Aでの見られ方

買い手は年齢構成表を必ず求めます。偏りがある場合、次を説明できるかで印象が変わります。

  • 5年後の退職予定を把握しているか
  • 採用の間口を広げる取り組みをしているか
  • 定着率が改善しているか
  • 技能継承の仕組みがあるか

把握していること自体が評価されます。 逆に「考えたことがない」という状態は、大きな減点要因です。評価を下げてしまう要因をご覧ください。

集計から計画に落とす

五年後・十年後に何人減るかを計算してくださいと書きました。この計算から計画に落とす手順を示します。

まず、定年で抜ける人数を年ごとに出してください。年齢が分かっていれば、機械的に計算できます。

そのうえで、再雇用でどれだけ残る見込みかを見積もってください。過去の実績から、おおよその割合が分かります。全員が残るとは限りません。

そして、定年以外の離職も加えてください。過去数年の平均から、年に何人辞めているかを出します。

これらを足すと、年ごとに何人補う必要があるかが出ます。この数字が、採用の目標になります。

そのうえで、実際に何人採れているかと比べてください。差があるなら、今のやり方では足りないということです。この差が、打ち手を変える理由になります。

間口を広げる具体策

経験者だけをやめることが最も効果のある一手だと書きました。実際にどう変えるかを示します。

まず、募集の条件を見直してください。経験の年数を求めている場合、その条件が本当に必要かを確認してください。教える体制があれば、経験は不要な場合があります。

そして、免許についても同様です。入社時に持っていなくても、取得を支援すれば対応できます。この形にすれば、応募できる層が大きく広がります。

そのうえで、受け入れる体制を整えてください。間口だけ広げても、教える仕組みがなければ続きません。入社時の教育、指導者、面談の予定。ここが先に必要です。

あわせて、最初に任せる仕事も用意してください。小型や近距離から始められる運行があるか。すべてが大型の長距離だと、入口がありません。

そして、この変更を求人にはっきり書いてください。未経験でも応募できることが分かる形にしないと、これまでと同じ層しか来ません。

入社後一年をどう乗り切るか

入社後一年が勝負だと書きました。この期間の設計を具体的にします。

最初の一か月は、教える期間です。同乗し、手順を伝え、道を覚えてもらう。この期間に費用をかけることが、後の定着を決めます。

三か月目までは、離職が最も起きやすい時期です。面談を定期的に入れ、困っていることを聞いてください。相談相手が明確であることが、この時期の条件です。

半年を過ぎると、業務には慣れてきます。ただし、収入や条件への不満が出てくる時期でもあります。ここで、この先どうなるかを示してください。

一年が経つと、担える範囲が広がります。この時点で、次の目標を示してください。資格の取得、担当できる運行の拡大。道筋が見えることが、続ける理由になります。

そして、この期間の状況を記録してください。どの時期に何が起きたか。次の人を迎えるときの参考になります。

採れない場合の判断を早めにする

早い段階での検討が選べる選択肢を多くすると書きました。この判断について補足します。

まず、人が減り続けている状態がいつまで続けられるかを計算してください。現在の人数、年ごとの減少、必要な人数。いつ回らなくなるかが分かります。

そのうえで、判断の期限を決めてください。この時期までに人が確保できなければ、別の道を検討する。期限がないと、ずるずると続きます。

検討する道は、事業の形を変えるか、他社と組むかです。どちらも時間がかかります。回らなくなってから動くのでは、条件が悪くなります。

そして、事業を続けられるうちに検討することが重要です。人がいて、運行が回っている状態のほうが、評価も条件も良くなります。

この判断は、経営者にとって重いものです。ただし、判断しないという選択も、結果として一つの判断になります。時間が経つほど、選べる範囲が狭まります。

若手が続かない原因を確かめる

入っても続かないという原因を挙げました。自社で何が起きているかを確かめる方法を示します。

まず、辞めた若手の在籍期間を並べてください。一か月で辞めたのか、半年か、一年か。時期によって、原因が違います。

一か月以内なら、入社前の説明と実態のずれが疑われます。仕事の中身、拘束時間、荷役。伝えきれていない情報があります。

三か月前後なら、教える体制の問題です。放り出された、聞ける相手がいなかった。この時期の離職は、受け入れの設計で減らせます。

半年から一年なら、収入や条件への不満が考えられます。慣れてきて、他社と比べる余裕が出る時期です。

そして、辞めた本人に聞ける場合は聞いてください。聞けない場合は、同時期に入った人や、指導した人から話を聞いてください。

ベテランと若手の関係を作る

ベテランとの関係を、続かない原因の一つに挙げました。この関係への手当てを補足します。

まず、教える側に伝え方を助言してください。長年の経験がある人ほど、当たり前のことを説明しません。何が分からないかが分からない、という状態が生まれます。

そして、責める言い方をしないよう伝えてください。悪意がなくても、強い言い方が萎縮を招きます。質問できない状態になると、危険な判断につながります。

あわせて、指導する側を一人に固定しないでください。相性の問題があります。合わない場合に、別の人に相談できる形が要ります。

そして、ベテランの側にも意味を伝えてください。若手が育たなければ、自分の負担が減りません。教えることが、自分のためでもあると伝わると、姿勢が変わります。

この関係づくりは、時間がかかります。ただし、ここが機能すれば、採用した人が定着します。

年齢構成表を資料として整える

買い手は年齢構成表を必ず求めますと書きました。整える際の項目を示します。

まず、年齢別の人数を並べてください。五歳刻みで足ります。あわせて、勤続年数の分布も並べると、姿がより見えます。

そして、今後五年の退職予定を年ごとに示してください。何年に何人抜けるか。これが最も見られる部分です。

あわせて、直近数年の採用と離職の実績を並べてください。何人採用し、何人辞めたか。傾向が見えます。

そのうえで、取り組んでいることを添えてください。間口を広げた、教育の体制を作った、定着が改善している。数字と取り組みが並んでいると、把握している会社だと伝わります。

この資料は、日常の管理としても使えます。年に一度更新すれば、自社の状況を自分でも確認できます。

時間を稼ぐという考え方

若手が入るまでの時間を稼ぐ必要があると書きました。この考え方を整理します。

若手を採用し、育て、戦力になるまでには数年かかります。その間、現在の運行は今いる人が担うことになります。

だから、今いる人に長く働いてもらうことが、採用と同じくらい重要になります。一人が辞めれば、その分だけ計画が後ろにずれます。

そして、長く働いてもらうには、負担を減らす必要があります。荷役の軽減、運行の見直し、健康の管理。これらは費用がかかりますが、時間を買う投資と考えてください。

あわせて、働き方の選択肢を用意してください。フルタイムが難しくなった人が、辞めるしかない状態では、時間が稼げません。

そして、この二つは同時に進める必要があります。採用だけ、定着だけでは、構成は変わりません。

小型や近距離の仕事を作る

小型・近距離から始められる仕事を用意すると書きました。この点を掘り下げます。

大型の長距離しかない会社では、若手が入る余地がありません。免許の面でも、経験の面でも、最初から担えないからです。

だから、担える仕事があるかを確認してください。なければ、作れないかを検討してください。既存の荷主で小口の配送があるか、新しく取れる仕事があるか。

この検討は、事業の構成を変える話になります。すぐには進みません。ただし、若手を入れる前提を作るには必要な作業です。

そして、傭車に出している仕事の中に、自社で担えるものがないかも見てください。小型で担える運行なら、若手の入口になります。

あわせて、構内の作業や倉庫の仕事も、入口として使えます。免許を取るまでの期間を、この形で埋められます。

業界のイメージにどう向き合うか

若手が応募してこない理由の一つに、業界のイメージを挙げました。個社でできることを整理します。

業界全体のイメージを変えることはできません。ただし、自社について正確に伝えることはできます。

だから、実態を数字で示してください。年間の休日、平均の残業時間、有給の取得。イメージではなく事実で判断してもらう形にします。

そして、写真を使ってください。車両、休憩室、働いている人。文字より、実際の様子のほうが伝わります。

あわせて、入社した人の話を載せてください。前職が何で、なぜこの仕事を選び、今どう感じているか。同じ立場だった人の言葉は、説得力があります。

そして、数字が良くない場合は、改善の途中であることを伝えてください。取り組んでいる内容を書けば、隠しているより信頼されます。

この積み重ねが、自社への応募につながります。業界のイメージを理由に諦めないでください。

まとめ

年齢を5歳刻みで集計し、5年後・10年後に何人減るかを計算してください。打ち手は、採用の間口を広げる・定着させる・長く働いてもらう・技能を残すの四つです。人員計画を数字で立てると、今のやり方では足りないことが見えます。採れない状態が続くなら、統合という選択肢も早めに検討してください。