採用コストを計算する

1人あたり採用コスト = 年間の採用関連費用 ÷ 年間の採用人数

年間の採用関連費用には、次を含めてください。

  • 求人媒体の掲載料
  • 人材紹介の手数料
  • リファラルの報奨金
  • 会社案内・写真撮影などの制作費
  • 面接・選考にかかる人件費(時間×時給換算)
  • 採用担当者の人件費(該当する割合)

人件費を入れるのがポイントです。媒体費用だけを見ていると、実態を見誤ります。

入社後のコストも見る

採用して終わりではありません。戦力になるまでの費用があります。

  • 免許取得の費用(免許取得支援制度のつくり方
  • 教育期間の人件費(本人+指導者)
  • 同乗期間中の生産性の低下
  • 制服・装備
  • 入社時の健康診断

戦力化コスト = 採用コスト + 教育コスト

早期離職の損失

3か月で辞められた場合、次がすべて失われます。

  • 採用にかけた費用
  • 教育にかけた時間と人件費
  • 指導者が本来やるべき仕事の機会
  • また募集をかける費用

早期離職は、採用コストの二重・三重の負担になります。定着率を1割改善することは、採用費用を1割減らすより効果が大きいことがあります。ドライバーの離職防止をご覧ください。

手法別に比較する

採用経路ごとに、人数とコストを集計してください。

経路費用採用数1人あたり1年後の在籍率
求人媒体A    
求人媒体B    
ハローワーク    
紹介(リファラル)    
人材紹介    

最後の列が最も重要です。安く採れても1年で辞めるなら、実質的なコストは高くなります。多くの会社で、紹介(リファラル)の在籍率が最も高くなります。

採用単価より「充足率」を見る

コストを抑えることが目的ではありません。必要な人数を確保できているかが本質です。

  • 年間の必要採用人数(退職予定+離職見込み+増員)
  • 実際の採用人数
  • 充足率

充足していないなら、費用を増やすか、条件を変えるか、手法を変えるかの判断が必要です。年齢構成の偏りをどう直すかをご覧ください。

費用を減らす方向

  • 定着率を上げる:採用の必要数そのものを減らす
  • リファラルを強化する:媒体費用より安い
  • 自社サイト・SNSで情報を出す:継続的な発信
  • 求人原稿を改善する:同じ費用で応募数を増やす(求人原稿の書き方
  • ハローワークを活用する:費用がかからない

費用をかけるべき方向

採用費用と定着への投資は、同じ財布から考えるべきものです。

賃金水準との関係

採用手法をいくら工夫しても、条件が地域の相場と合っていなければ人は来ません。近隣の同業の求人を実際に見て、給与・休日・車両を比較してください。

条件を上げるには運賃を上げるしかありません。採用の問題は、最終的に運賃交渉の問題につながります。「標準的な運賃」の使い方運賃改定の実績が評価される理由をご覧ください。

M&Aでの意味

買い手が確認するのは次です。

  • 年間の採用数と離職数
  • 採用にかかっている費用
  • 採用経路の内訳
  • 定着率(特に入社1年以内)

採用力があり定着率が高い会社は、人員を維持できる会社として評価されます。逆に、高い費用をかけても採れず離職も多い会社は、将来の縮小が読まれます。評価が上がる会社の条件をご覧ください。

人件費をどう見積もるか

人件費を入れるのがポイントだと書きました。見積もりの方法を具体的にします。

まず、面接にかかる時間を計ってください。一件あたりの面接の時間、準備の時間、その後の連絡。同席する人数も掛けてください。二人で一時間の面接なら、二時間分になります。

そして、応募への対応も入れてください。問い合わせへの返答、日程の調整、書類の確認。件数が多いほど積み上がります。

採用の担当が専任でない場合は、その業務に使っている時間の割合を見積もってください。厳密である必要はありません。月に何時間程度か、で足ります。

時間が出たら、その人の時間あたりの人件費を掛けてください。これで金額になります。

この計算をすると、媒体の費用だけを見ていたときより、はるかに大きな数字が出ます。ここが判断の出発点です。

戦力になるまでの費用を測る

戦力化コストは採用コストと教育コストの合計だと書きました。教育の側の測り方を示します。

まず、同乗する期間の人件費を計算してください。教わる側と教える側、両方の人件費がかかっています。この期間、車両一台で二人分の費用が出ていることになります。

そして、その間に運べていない分も考慮してください。指導者が本来担う運行を止めているなら、その売上が失われています。

免許の取得を支援する場合は、その費用と、取得までの期間の人件費も加えてください。

装備や制服、健康診断の費用も入れてください。一人あたりで見れば小さくても、合計すると効いてきます。

これらを合計すると、一人が戦力になるまでにいくらかかっているかが出ます。この数字を持っていると、定着への投資の判断がしやすくなります。

経路別の在籍率を追う

最後の列が最も重要だと書きました。在籍率を追う方法を具体的にします。

まず、入社した人ごとに、どの経路から来たかを記録してください。入社の手続きの中で確認すれば、漏れません。

そして、一年後に在籍しているかを確認してください。半年、一年、二年。この時点で数えれば、経路ごとの傾向が見えます。

人数が少ない会社では、傾向が出るまでに時間がかかります。数年分を積み上げてから判断してください。一年分の数字で結論を出すと、たまたまに振り回されます。

そして、在籍率が低い経路については、理由を考えてください。その経路から来る人の層が合っていないのか、伝わっている情報が違うのか。

あわせて、辞めた人の理由も経路別に見てください。特定の経路から来た人が同じ理由で辞めているなら、募集の段階で伝えきれていない情報があります。

充足率から逆算する

必要な人数を確保できているかが本質だと書きました。この計算を具体的にします。

まず、来年に必要な採用人数を出してください。定年で抜ける人数、例年の離職の見込み、増員の予定。この三つを足します。

そのうえで、過去の実績から、何人採用できそうかを見積もってください。年に何人採れているか。この差が、埋めるべき部分です。

差が大きい場合、費用を増やすだけでは埋まりません。条件を変える、経路を増やす、あるいは受注の量を調整する。複数の手を組み合わせる必要があります。

そして、埋まらない前提で計画を立ててください。人が足りないまま運行を維持しようとすると、今いる人に無理がかかります。

この計算は、年に一度行ってください。年齢構成が分かっていれば、数年先まで見通せます。

費用をかける先の判断

費用をかけるべき方向をいくつか挙げました。優先順位の付け方を示します。

まず、応募が来ていない段階では、届ける部分に費用をかけてください。写真や動画、原稿の改善、掲載する媒体。ここが弱いと、他をいくら整えても知られません。

応募はあるが辞退される段階なら、条件の部分に問題があります。給与、休日、設備。他社と比べられて選ばれていません。

入社するが早く辞める段階なら、教育と受け入れの体制です。ここに費用をかけると、採用の必要数そのものが減ります。

どの段階でつまずいているかによって、かけるべき先が違います。合計の採用数だけを見ていると、判断できません。

そして、設備への投資は、効果が長く続きます。一度整えれば、以後の採用すべてに効きます。費用は大きくても、期間で割れば見合うことがあります。

定着への投資を同じ財布で考える

採用費用と定着への投資は同じ財布から考えるべきものだと書きました。この考え方を掘り下げます。

採用の必要数は、離職の数で決まります。離職が減れば、採用の必要数も減ります。だから、定着への投資は、採用費用の削減と同じ効果を持ちます。

そして、定着への投資は、今いる人にも効きます。採用のためだけの費用ではありません。

だから、予算を分けて考えないでください。採用の予算と定着の予算を別々に管理すると、どちらが有効かの比較ができません。

実際に比べてみてください。媒体に費用をかけて一人採用するのと、その費用で装備を入れて一人の離職を防ぐのと、どちらが効率的か。多くの場合、後者です。

ただし、定着だけでは人数が増えません。定年で抜ける分は、採用でしか補えません。両方が必要です。

数字を経営の判断に使う

数字にするとどこにお金を使うべきかが見えてくると書きました。この使い方を具体的にします。

まず、年に一度、採用に関する数字をまとめてください。費用、人数、経路別の内訳、在籍率、充足率。一枚にまとまっていれば、判断ができます。

そして、この資料を使って、翌年の方針を決めてください。どこに費用をかけ、どの経路を強化し、何人を目標にするか。

そのうえで、荷主との交渉の材料にもしてください。人を確保するために必要な費用が示せれば、運賃の話につながります。

そして、承継の場面でもそのまま使えます。買い手が知りたいのは、人員を維持できる会社かどうかです。この資料が答えになります。

数字を作る作業そのものは、年に一度、半日程度で済みます。作っていない会社が多いからこそ、作れば差になります。

早期離職の損失を具体化する

早期離職は採用コストの二重・三重の負担になると書きました。この損失を具体的に計算してください。

まず、その人にかけた費用を合計します。採用にかかった分、教育にかかった分、装備や手続きの分。

そこに、指導した人の時間を加えてください。教えていた期間、その人は本来の仕事をしていません。

そして、また募集をかける費用を加えてください。同じ工程をもう一度繰り返すことになります。

あわせて、残った人への影響も考えてください。人が抜けた分、誰かが担うことになります。その負担が、さらなる離職につながることがあります。

この合計を出すと、一人の早期離職がどれだけの損失かが分かります。入社後の面談や、教育の体制に費用をかけることが、はるかに安い投資だと分かります。

賃金水準を確かめる方法

近隣の同業の求人を実際に見て比較してくださいと書きました。この作業の進め方を示します。

まず、同じ地域で、同じような仕事を募集している求人を集めてください。数社分あれば、傾向が分かります。

そして、比べる項目を揃えてください。給与の下限と上限、年間の休日、車格、荷役の有無、拘束の時間。同じ表に並べると、自社の位置が見えます。

給与については、内訳まで見てください。総額が高くても、固定残業代が含まれている場合があります。実質の水準を比べる必要があります。

そして、条件だけでなく、書き方も比べてください。写真があるか、一日の流れが書いてあるか。同じ条件でも、伝わり方が違います。

この作業は、年に一度で足ります。ただし、応募が来ない状態が続いているなら、その時点で確認してください。原因が条件にあるのか、伝え方にあるのかが分かります。

採用の記録を残す仕組み

ここまでの計算はすべて、記録があることが前提になります。記録の仕組みを作ってください。

まず、応募があった時点で記録してください。日付、経路、応募者の状況。面接に至ったかどうかも含めます。

そして、採用した人については、入社日、経路、かかった費用を記録してください。免許の取得を支援した場合は、その費用も。

離職した場合も、日付と理由を記録してください。在籍期間が分かれば、経路別の在籍率が計算できます。

様式は一枚の表で足ります。項目が決まっていれば、入力は数分で済みます。

そして、この記録を更新する担当を決めてください。誰も記録していない状態だと、年に一度まとめようとしても、思い出せません。

記録が数年分たまると、判断の精度が上がります。今日から始めても、来年には使える資料になります。

まとめ

採用コストは人件費まで含めて1人あたりで計算し、経路別に1年後の在籍率とセットで比較してください。早期離職はコストの二重負担になるため、定着への投資は採用費用の削減と同じ効果を持ちます。数字にすると、どこにお金を使うべきかが見えてきます。