なぜ支援制度が必要か

  • 有資格者の採用競争が激化している
  • 普通免許で運転できる車両の範囲が段階的に変わり、若い世代ほど大型に乗れない
  • 他業種からの転職者を受け入れられる
  • 既存社員のキャリアの道筋になる

採用の間口を広げることが最大の目的です。ドライバー不足への対応をご覧ください。

設計の五つの論点

1. 費用の負担方法

方式特徴
会社が全額負担(教習所に直接支払い)本人の負担がなく、訴求力が高い
会社が立て替え、一定期間勤務で免除早期離職への一定の抑止
一部補助費用を抑えられるが訴求力は下がる
取得後に一時金を支給本人が先に払う必要がある

採用の訴求力を優先するなら全額負担・本人負担なしが最も強い形です。

2. 返還条項に注意

「一定期間内に退職したら費用を返還する」という定めは、労働基準法上の制約があります。労働契約の不履行に対する違約金や損害賠償額の予定は禁止されているためです。

制度の組み立て方によっては認められる余地もありますが、設計は必ず社労士・弁護士に確認してください。安易に「3年以内に辞めたら全額返還」と定めると、無効とされる可能性があります。

3. 勤務との両立

教習所へ通う時間をどう確保するかが実務の壁です。

  • 勤務時間内の通学を認めるか(認めれば訴求力が上がる)
  • 合宿を利用する場合の扱い
  • 通学中の賃金をどうするか

「休みの日に自分で行ってください」だと、実際には取得が進みません

4. 対象者の決め方

  • 新規採用者(入社と同時に開始)
  • 既存社員(中型から大型へ、など)
  • 勤続期間の要件を設けるか

既存社員も対象にすると、社内のキャリアの道筋になります。教育体系の整備をご覧ください。

5. 対象とする資格の範囲

ドライバーの免許だけでなく、管理者の資格も対象にすると、承継の備えにもなります。

取得までの期間をどう過ごすか

免許を取るまでの間、その人に何をしてもらうかを決めておく必要があります。

  • 持っている免許で乗れる車両で乗務する
  • 倉庫・構内作業に従事する
  • 先輩に同乗して業務を覚える

「取れるまで何もない」状態だと、本人も会社も苦しくなります。未経験者の採用と育成をご覧ください。

補助制度の活用

人材開発や資格取得の支援について、公的な助成の制度が用意されることがあります。名称・要件・時期は年度によって変わるため、労働局や社労士に最新の情報を確認してください。

要件を満たすには、事前の計画届出が必要な場合があります。取得を始めてからでは間に合わないことがあるため、早めに確認してください。

※ 補助金の名称・対象経費・要件・公募時期は年度によって変わります。本記事は一般的な進め方を整理したものですので、実際の申請にあたっては、必ず最新の公募要領をご確認ください。

制度化の手順

  1. 対象資格と費用負担の方法を決める
  2. 社労士に返還条項の設計を確認する
  3. 就業規則または別規程に定める
  4. 従業員に周知する
  5. 求人原稿に記載する
  6. 利用実績を記録する

規程にしておくことが重要です。その都度の判断だと、不公平感が生まれます。

求人での書き方

次を具体的に書いてください。

  • 会社が費用を負担すること(本人負担の有無)
  • 対象となる資格
  • 勤務時間内に通えるか
  • 取得までの間の仕事内容と給与
  • 過去に利用した人の実例

「免許取得支援あり」だけでは伝わりません。求人原稿の書き方をご覧ください。

承継・M&Aでの意味

免許取得支援は、採用の間口が広い会社であることの証明になります。買い手が懸念する「数年後の人員減」に対する答えです。

また、運行管理者・整備管理者の有資格者が複数いることは、属人化の解消を示す材料になります。評価が上がる会社の条件をご覧ください。

費用の負担方式をどう選ぶか

採用の訴求力を優先するなら全額負担が最も強い形だと書きました。選ぶときの判断材料を整理します。

まず、自社が何に困っているかを確認してください。応募が来ないなら、訴求力を優先すべきです。応募はあるが早く辞めるなら、別の対策が要ります。

全額を負担する場合、費用は先に出ていきます。取得までの期間、その人は運転の業務ができません。この期間の人件費も含めて、投資と考える必要があります。

そして、回収の見込みを考えてください。何年働いてもらえれば見合うのか。経験者を高い条件で採用した場合と比べると、判断がしやすくなります。

一部を補助する形にすると、費用は抑えられますが、訴求力は下がります。他社が全額を負担しているなら、比較されて選ばれません。

そして、方式を決めたら変えないでください。人によって扱いが違うと、不公平として受け取られます。制度として固定してください。

通学の時間をどう確保するか

休みの日に自分で行ってくださいだと実際には取得が進まないと書きました。確保の方法を具体的にします。

まず、勤務時間内に通えるようにする場合、その日の運行をどうするかを決める必要があります。担当している便を誰かが代わる、あるいは通学の期間は運行を軽くする。

合宿を利用する場合は、まとまった期間の不在になります。この間の運行をどう回すか、事前に調整が要ります。ただし、短期間で取得できる利点は大きいものです。

そして、通学中の賃金をどうするかを決めてください。通常どおり支払うのか、一定の水準にするのか。ここが決まっていないと、本人が生活の見通しを立てられません。

あわせて、教習の進み具合を確認する仕組みも作ってください。予定どおり進んでいるか、つまずいていないか。放置すると、期間が延びます。

そして、取得できなかった場合の扱いも決めておいてください。再挑戦を支援するのか、別の道を考えるのか。あらかじめ決めておけば、その場で困りません。

制度を規程にする理由

規程にしておくことが重要でその都度の判断だと不公平感が生まれると書きました。この点を掘り下げます。

その都度の判断だと、頼んだ人だけが支援を受ける形になります。言い出せない人は、制度があることすら知りません。

そして、金額や条件が人によって違うと、必ず伝わります。給与に関わる話は、社内で共有されるものです。

だから、対象、費用、条件を文書にしてください。誰が読んでも同じ結論になる形が必要です。

そして、周知してください。規程があっても知られていなければ、使われません。入社時の説明、掲示、定期的な案内。

あわせて、利用の実績を記録してください。誰がいつ何を取得したか。この記録は、求人で示す材料にもなり、承継の場面でも制度が機能している証明になります。

管理者の資格を対象に入れる

管理者の資格も対象にすると承継の備えになると書きました。この点を具体的にします。

運行管理者や整備管理者は、事業を続けるための要件に関わります。一人しかいない状態は、その人が辞めたときに事業が止まりうるということです。

だから、複数を確保する計画が要ります。ただし、資格の取得には実務の経験や講習の要件があるため、思い立ってすぐには取れません。

だから、早めに候補を決めて支援を始めてください。取得までに数年かかることもあります。

そして、取得した後の役割も用意してください。資格を取っただけで何も変わらないと、次の人が続きません。選任するか、補助として関わってもらうか。

あわせて、選任者の研修には受講の要件があります。取得して終わりではなく、継続的な管理が必要です。期限を予定表に載せてください。

取得までの期間に何を任せるか

取れるまで何もない状態だと本人も会社も苦しくなると書きました。この期間の設計を具体的にします。

まず、今持っている免許で乗れる車両があるかを確認してください。小型や中型で担える運行があるなら、そこから始められます。実際に走ることが、最も早く覚える方法です。

乗れる車両がない場合は、構内の作業や荷役の補助を任せてください。荷物の扱い、積み方、荷主の現場。これらは乗る前に知っておくべきことです。

そして、同乗の機会を作ってください。運行の流れ、道、荷主との対応。取得後にすぐ動けるよう、この期間に覚えてもらいます。

あわせて、記録の書き方や点呼の手順も教えてください。これらは乗るかどうかに関わらず必要です。

そして、この期間の役割を本人に説明してください。免許が取れるまでの待ち時間ではなく、準備の期間だと伝われば、意欲が保たれます。

支援の制度を確認する

公的な助成の制度が用意されることがあると書きました。確認の手順を示します。

まず、対象になりうる制度があるかを、労働局や社会保険労務士に確認してください。名称も要件も年度によって変わるため、過去の情報で判断しないでください。

そして、事前の手続きが必要かを確認してください。計画の届出が求められる場合、取得を始めてからでは間に合いません。ここが最も多い失敗です。

要件を満たすために、記録の残し方が決まっていることもあります。何を、どういう形で残す必要があるか。始める前に把握してください。

そして、申請の手続きには手間がかかります。自社で対応できるか、専門家に依頼するか。費用と手間を比べて判断してください。

あわせて、制度が使えなかった場合でも進めるかを決めておいてください。制度が前提の計画だと、使えなかったときに止まります。

求人での見せ方

免許取得支援ありだけでは伝わらないと書きました。書き方を具体的にします。

まず、本人の負担がいくらかを明記してください。全額を会社が負担するなら、そう書いてください。ここが最も知りたい情報です。

そして、対象になる資格を並べてください。どこまで支援されるのかが分かると、将来の道筋が見えます。

通学の時間についても書いてください。勤務時間内に通えるかどうかは、応募の判断に大きく影響します。

取得までの期間の仕事と給与も書いてください。この期間の生活が見通せないと、応募できません。

そして、実際に利用した人の例を短く載せてください。前職が何で、入社してどれくらいで取得したか。実績があることが、制度が機能している証明になります。

既存社員にも道筋を示す

既存社員も対象にすると社内のキャリアの道筋になると書きました。この効果を具体的にします。

中型から大型へ、あるいはけん引を取る。これによって担える運行が広がり、収入も上がる。この道筋が見えていることが、続ける理由になります。

だから、資格ごとに、取得後に何が変わるかを示してください。手当、担当できる仕事、賃金の水準。ここが曖昧だと、取る動機がありません。

そして、誰が対象になるかの基準も示してください。勤続の期間、現在の担当、本人の希望。基準がないと、特定の人だけが取っている形になります。

あわせて、会社として必要な資格を優先してください。全員の希望を叶えることはできません。事業の必要性から順序を決めてください。

そして、取得を目指す人には、計画を一緒に立ててください。いつ始めて、いつまでに取るか。本人任せにすると、進みません。

返還の定めについて

労働基準法上の制約があると書きました。この点をあらためて整理します。

労働契約の不履行に対する違約金や、損害賠償の額をあらかじめ定めることは禁じられています。だから、短期間で辞めたら費用を全額返還するという定めは、そのままでは効力が問われます。

制度の組み立て方によっては認められる余地もありますが、判断は個別の事情によります。自社で条文を作らず、専門家に確認したうえで整えてください。

そして、返還を求めないという選択もあります。育成にかかる費用を、採用の費用として割り切る考え方です。定着すれば回収できると考えれば、この形も合理的です。

実務としては、返還の定めによる抑止よりも、辞めない環境を作るほうが効果があります。取得した後に働きやすい条件があれば、続けます。

そして、どちらを選ぶにせよ、採用の時点で明確に伝えてください。入社後に知らされると、不信の原因になります。

まとめ

免許取得支援は採用の間口を広げる最も直接的な手段です。全額負担・本人負担なしが最も訴求力があり、勤務時間内の通学を認めるかが実効性を分けます。返還条項には法令上の制約があるため、設計は社労士に確認してください。管理者資格も対象にすると承継の備えになります。