なぜ取り組むのか
- 採用の母集団が広がる:応募が来ない状況で、対象を狭めている余裕はありません
- 荷主からの評価:多様な人材の活用を求める荷主が増えています
- 職場全体の改善につながる:設備や勤務条件の見直しは、男性社員にも高齢社員にも効きます
- 離職率が下がる:働きやすい職場は、性別を問わず定着します
設備を整える
必須といえるもの
- 男女別のトイレ:これがないと採用の土俵に乗りません
- 更衣室:仕切りだけでも設ける
- 鍵のかかるロッカー
あると評価されるもの
- シャワー室
- 休憩室(清潔で、仮眠できる)
- パウダースペース
これらは休憩・睡眠施設の要件とも重なります。要件対応の機会に、まとめて整備するのが効率的です。休憩・睡眠施設の要件をご覧ください。
装備・車両の見直し
- パワーゲート:荷役の負担を大きく下げます
- 台車・ローラーの活用
- ステップの位置:乗降しやすい車両
- 作業服・安全靴のサイズ:小さいサイズを用意する
- AT限定でも乗れる車両:AT車の割合を増やす
荷役の負担軽減は、高齢ドライバーにも効きます。 女性のためだけの投資ではありません。高齢ドライバーの安全管理をご覧ください。
勤務条件
- 日勤・近距離の便を用意する:泊まりが前提だと応募が限られます
- 時間帯の選択肢:早朝・深夜以外の枠
- 短時間勤務:週3日、1日6時間といった働き方
- 急な休みへの対応:子どもの発熱などに代替が効く体制
最後の点は、配車の属人化を解消しておくことで対応しやすくなります。配車の属人化を解消するをご覧ください。
採用での伝え方
求人には、次を具体的に書いてください。
- 女性ドライバーが何名在籍しているか
- 設備の状況(男女別トイレ、更衣室、シャワー)
- 担当する便の内容(日勤か、泊まりの有無)
- 荷役の内容(手積みか、パワーゲートか)
- 未経験からの入社実績
「女性活躍中」とだけ書いても伝わりません。実際の設備と仕事の内容が判断材料です。求人原稿の書き方をご覧ください。
なお、募集にあたって性別を限定する表現は法令上の制限があります。「女性歓迎」ではなく、環境や仕事内容を書くのが適切です。
定着のための配慮
1. 孤立させない
一人目の女性ドライバーは孤立しやすい立場です。
- 相談できる相手を決めておく
- 定期的に面談する
- 可能なら複数名を同時期に採用する
2. 過剰な配慮をしない
「女性だから軽い荷物を」という配慮が、本人には物足りなさや疎外感になることもあります。本人に希望を聞くのが基本です。
3. ハラスメントへの対応
数が少ない属性は、声を上げにくい構造にあります。相談窓口を実効性のある形で用意してください。荷主先での被害も含めて、会社が対応する姿勢を示すことが重要です。ハラスメント対策をご覧ください。
4. 荷主先の設備
納品先にトイレがない、使わせてもらえないという問題は実際にあります。会社として荷主に申し入れることが必要です。個人に我慢させないでください。
既存社員への説明
設備投資や勤務条件の変更に、既存社員が反発することがあります。次のように伝えてください。
- 人が採れないと、今いる人の負担が増える
- 設備の改善は全員のためである
- 荷役の軽減は、体力的な負担を全員分減らす
- 特別扱いをするわけではない
「誰かを優遇する話ではなく、会社を続けるための話」という位置づけが、納得を得やすくなります。
取り組みを対外的に示す
- 求人原稿と自社サイトに、設備と実績を書く
- 荷主への提案時に、人材確保の取り組みとして説明する
- 働きやすい職場づくりに関する認定制度を活用する(要件・名称は変わることがあります)
承継・M&Aでの意味
買い手はドライバーの年齢構成と採用力を見ます。採用の間口が広い会社は、人員を維持できる会社として評価されます。
逆に、設備がなく男性・経験者しか採れない会社は、数年後の人員減が読まれます。評価を下げてしまう要因、ドライバー不足への対応をご覧ください。
設備投資の順序を決める
必須といえるものと、あると評価されるものを分けて挙げました。実際に整える順序を示します。
最初に手をつけるのは、男女別のトイレです。ここがなければ、応募の対象になりません。既存の設備を分けるだけで済む場合もあります。
次が、着替えられる場所です。専用の部屋を作る必要はありません。仕切りを設ける、時間帯を分ける。工夫で対応できる範囲があります。
鍵のかかるロッカーは、費用が小さく効果がある項目です。荷物を安心して置ける環境は、性別を問わず必要です。
シャワーや休憩室は、その次になります。費用が大きい分、効果も大きい設備です。
そして、整備の時期を分けてください。一度に全部をやろうとすると、費用の面で止まります。年に一つずつでも、数年で形になります。
短時間で働ける枠を作る
週三日、一日六時間といった働き方を挙げました。実際に運行の中に組み込む方法を示します。
まず、短時間で完結する運行があるかを確認してください。決まった区間の往復、午前だけの配送、特定の曜日の便。切り出せる仕事があるかどうかが出発点です。
切り出せない場合は、運行を分ける工夫を考えてください。一つの車両を午前と午後で分ける、二人で回す。ただし、車両の管理や記録の運用が複雑になります。
そして、賃金の設計も必要です。短時間で働く場合の時間あたりの水準、手当の扱い。フルタイムと同じ考え方では計算が合いません。
社会保険の扱いも確認してください。労働時間や日数によって、加入の要否が変わります。事前に整理しておく必要があります。
そして、この枠は女性のためだけではありません。高齢の人、家庭の事情がある人、他の仕事と組み合わせたい人。受け皿としての価値があります。
急な休みに対応できる体制
子どもの発熱などに代替が効く体制と書きました。この体制の作り方を具体的にします。
まず、その日の運行を誰かが代われる状態が必要です。特定の人しか担えない運行があると、対応できません。属人化の解消が前提になります。
そして、連絡の手順を決めてください。誰に、いつまでに、どう連絡するか。決まっていないと、本人が言い出しにくくなります。
代わりに入る人への配慮も必要です。急に頼まれる側の負担があります。順に回す、手当を付ける。何らかの形で報いてください。
あわせて、荷主への説明も準備しておいてください。担当が代わることを事前に伝えておけば、当日の混乱が減ります。
この体制は、急な休み以外にも効きます。体調不良、家族の事情、事故。誰にでも起こりうる事態への備えになります。
一人目をどう迎えるか
一人目の女性ドライバーは孤立しやすいと書きました。迎える側の準備を具体的にします。
まず、入る前に全員に伝えてください。誰が、いつから、どういう働き方で入るか。突然現れる形にしないでください。
そして、特別扱いをしないことを伝えてください。同時に、設備や運行の面で必要な配慮があることも伝えてください。この二つは矛盾しません。
相談できる相手を決めてください。指導する人とは別に、話せる相手がいることが重要です。同性がいない場合は、社外の窓口も検討してください。
そして、面談の機会を定期的に設けてください。困っていることは、聞かれなければ言い出せません。
可能なら、複数名を同じ時期に採用してください。一人だけの状況は、本人にとって負担が大きくなります。すぐには難しくても、続けて採用する方針を持ってください。
荷主先の設備をどう申し入れるか
納品先にトイレがない、使わせてもらえないという問題への対応を挙げました。申し入れの進め方を具体的にします。
まず、実態を把握してください。どの現場で、どういう状況か。乗務している人から聞き取り、記録してください。感覚ではなく、具体的な現場の話として整理します。
そのうえで、会社から申し入れてください。個人が現場で頼むと、断られたときに関係が悪くなります。会社の窓口から、担当者に相談する形にしてください。
伝え方は、要求ではなく相談にしてください。「使わせていただけないでしょうか」と、事情を添えて頼む。多くの場合、認識されていないだけです。
難しい場合は、代替の手段を確保してください。近隣で使える場所を調べ、共有する。時間の余裕を運行に見込む。
そして、改善されない現場については、担当を工夫する余地があります。ただし、個人に我慢させる形にはしないでください。会社として動く姿勢が伝わるかどうかが、定着に効きます。
既存社員への説明を丁寧に
会社を続けるための話という位置づけが納得を得やすいと書きました。説明の進め方を補足します。
まず、人が採れていない現状を数字で示してください。応募の件数、募集している期間、辞めた人数。抽象的な話より、事実のほうが伝わります。
そして、採れないことによる影響を伝えてください。受けられない仕事、残った人の負担、休みの取りにくさ。今いる人の問題として結びつけてください。
設備の改善が全員に効くことも伝えてください。トイレも休憩室も、全員が使います。荷役の軽減は、全員の負担を下げます。
そして、意見を聞く機会を作ってください。一方的に決めて通告すると、反発が残ります。設備について要望を聞けば、実際に必要なものが分かります。
あわせて、実際に採用が進んだら、その結果も共有してください。取り組みが実を結んだことが見えれば、次の投資も受け入れられます。
効果をどう確かめるか
取り組みの効果を測る方法を持っておいてください。続けるかどうかの判断ができます。
まず、応募の件数を追ってください。設備を整え、求人の内容を変えた前後で、応募がどう変わったか。ここが最も直接的な指標になります。
そして、応募してきた人の属性も記録してください。これまで来ていなかった層から応募があるなら、間口が広がっています。
入社した人が続いているかも見てください。採用できても定着しなければ、環境がまだ足りていません。
あわせて、既存の従業員の離職にも変化があるかを見てください。設備の改善は、全員に効きます。
そして、効果が出るまでには時間がかかります。半年や一年で判断せず、続けてください。設備は一度整えれば残ります。
配慮の程度を本人に聞く
過剰な配慮が物足りなさや疎外感になることもあると書きました。この見極めを具体的にします。
まず、本人の希望を聞いてください。どういう仕事を担いたいか、何が負担か。決めつけずに聞くことが出発点です。
そして、経験を積みたいという希望があるなら、その道を用意してください。軽い仕事だけを回されると、技能が伸びず、収入も上がりません。
一方で、体力的に難しい作業がある場合は、それを言い出せる関係が必要です。無理をして体を痛めると、本人にとっても会社にとっても損失です。
そして、時期によって希望が変わることもあります。家庭の事情、体調、経験の積み上がり。年に一度は確認する機会を作ってください。
あわせて、他の従業員にも同じように希望を聞いてください。特定の人にだけ配慮する形にすると、不公平として受け取られます。全員に対して、働き方の希望を聞く仕組みにしてください。
装備への投資をどう判断するか
荷役の負担軽減は高齢ドライバーにも効くため女性のためだけの投資ではないと書きました。判断の材料を整理します。
まず、どの運行で荷役の負担が大きいかを洗い出してください。手で積む量、重さ、回数。実際に担当している人が知っています。
そのうえで、装備で軽減できるかを検討してください。荷台の昇降装置、台車、ローラー。運ぶものによって、使えるかどうかが変わります。
費用の判断では、離職を防げる効果も入れてください。体を痛めて辞める人が出れば、その損失は装備の費用を上回ります。
そして、車両を更新する機会に、装備を選定の基準に入れてください。後から追加できるものと、そうでないものがあります。
導入を支援する制度が用意される場合もあります。名称や要件は年度によって変わるため、検討する時点で最新の情報を確認してください。
そして、導入した装備は実際に使われているかを確認してください。使い方が分からない、面倒だという理由で使われていないことがあります。
まとめ
男女別トイレと更衣室は出発点です。パワーゲートによる荷役軽減、日勤の便、短時間勤務の受け皿を整えると、結果として高齢者にも未経験者にも働きやすい職場になります。求人には設備と仕事内容を具体的に書き、既存社員には「会社を続けるための投資」として説明してください。