基本の順番

開示の順番は、原則として次のとおりです。

  1. 社内の中核メンバー(幹部・工場長)
  2. 金融機関
  3. 従業員全体
  4. 取引先

取引先が最後になるのは、社内が固まっていない段階で外に出ると、憶測が先に広がるからです。特に食品業界は横のつながりが強く、噂が回るのが早い業界です。

親族内・社内承継の場合

この場合は比較的シンプルで、代表交代の3〜6か月前を目安に、主要な取引先へ直接伝えます。書面よりも、先代と後継者が二人で訪問する形が最も効果的です。

伝えるべきは次の3点です。

  • いつ、誰が代表になるか
  • 供給体制・品質管理体制は変わらないこと(担当者も変わらないこと)
  • 先代がその後どう関わるか

後継者を「一緒に挨拶回りする人」として何年か前から連れて歩いていれば、この場面はずっと楽になります。取引先との関係を切らさない引き継ぎで扱っています。

第三者承継(M&A)の場合

M&Aでは、開示は最終契約の締結後、クロージング前後が原則です。それより前に伝えると、交渉がまとまらなかった場合に取引先の不安だけが残ります。

ただし例外があります。契約書にチェンジオブコントロール条項(支配権が変わる場合に相手方の承諾を要する、あるいは解除できるという定め)が入っている場合、事前の同意が必要です。OEM契約や大手量販店との取引では入っていることが多いので、契約書の棚卸しが欠かせません。取引先の同意契約書の棚卸しをご覧ください。

伝える順番は「取引額」ではなく「影響度」

取引先の中でどこから伝えるかは、売上規模ではなく切り替えられたときの影響度で決めます。

  • 売上構成比が高い先
  • 自社しか作れない品目を出している先
  • 工場監査を実施している先(体制変更の説明が必要になります)
  • 原料の仕入先(供給を止められると生産が止まります)

仕入先を忘れがちですが、原料の安定調達は食品製造業の生命線です。承継後も同じ条件で供給してもらえるかは、早めに確認しておく価値があります。

聞かれることに先回りする

取引先から実際によく出る質問は、ほぼ次の5つです。答えを用意してから訪問してください。

  • 品質管理の責任者は変わるのか
  • 工場・ラインはそのまま使い続けるのか
  • 価格や取引条件は変わるのか
  • 担当者は誰になるのか
  • 営業許可や認証はどうなるのか

最後の点は食品製造業特有です。承継スキームによって営業許可の扱いが変わるため、食品衛生法の営業許可は引き継げる?を踏まえて正確に説明してください。曖昧に答えると、かえって不安を与えます。

伝えた後のフォロー

一度伝えて終わりにせず、承継後の数か月は後継者が単独で顔を出すことをおすすめします。何も問題がなくても訪問する。この積み重ねが、供給の継続性への信頼をつくります。