仕組み

基本形は次のとおりです。

  1. 後継者が新しい会社(持株会社)を設立する
  2. 持株会社が金融機関から借り入れる
  3. その資金で、先代から事業会社の株式を買い取る
  4. 事業会社からの配当などを原資に、持株会社が返済していく

ポイントは、後継者個人の返済能力ではなく、会社の収益力で返す構造になることです。個人で数千万円を借りるのは難しくても、会社の利益で返す形なら組める場合があります。

向いているケース

1. 社内承継で、後継者に資金がない

最も典型的な用途です。工場長や製造部長に承継したいが、株の買い取り資金がない。この壁を越える手段になります。社内承継(MBO)の設計で扱っています。

2. 株式が分散していて、集約したい

持株会社が少数株主からも買い取ることで、資本を一本化できます。分散が深刻な会社では有効な整理手段になります。分散した株式をまとめるとあわせて検討してください。

3. 複数の会社・事業がある

製造会社と販売会社が分かれている、不動産を別会社で持っている、といった場合、持株会社の下に並べることで管理しやすくなります。

向かないケース

1. 利益が薄く、返済原資が作れない

この形は、事業会社が生み出す利益で借入を返す構造です。安定した利益が出ていない会社では成立しません。食品製造業では、原材料高の影響で利益が圧縮されている会社も多く、ここは冷静に見る必要があります。

目安として、返済に回せる利益が毎年どれだけ確保できるかを試算してから検討してください。利益計画の立て方が出発点になります。

2. 会社の規模が小さい

設立費用、税務申告が2社分になること、専門家への報酬。これらの負担に対して、得られる効果が見合わない場合があります。

3. 近い将来に第三者への譲渡を考えている

持株会社を作った直後にM&Aとなると、かえって構造が複雑になります。譲渡を視野に入れているなら、素直な株式譲渡のほうが進めやすいことが多くあります。

食品製造業での注意点

営業許可の扱い

持株会社を作っても、事業会社そのものは変わらないため、食品衛生法に基づく営業許可は原則として継続します。株主が変わるだけだからです。

ただし、その後に組織再編(合併など)を行う場合は扱いが変わります。再編を検討する際は、先に保健所へ確認してください。食品衛生法の営業許可は引き継げる?を参照してください。

取引先との契約

OEM契約などにチェンジオブコントロール条項が入っている場合、株主の変更が該当する可能性があります。持株会社化の前に契約書を確認してください。契約書の棚卸しで扱っています。

金融機関との調整

既存の借入について、株主変更に関する通知や承諾が必要な場合があります。持株会社の設立前に、取引金融機関と協議しておく必要があります。

検討の順番

  1. 返済原資(毎年いくら返せるか)を試算する
  2. 必要な借入額(株式の評価額)を把握する
  3. 1と2が見合うかを確認する
  4. 見合うなら、税理士・金融機関と具体的な設計に入る

1と2を出す前に設計の相談に入ると、話が空回りします。数字が先、設計は後です。

※ 持株会社を用いた組織再編は、会社法・税務・金融取引の各面で個別の検討が必要です。実行にあたっては、税理士・弁護士および取引金融機関に必ずご相談ください。