この業態を買う側の動機

  • ブランドを持つ食品メーカー:製造を内製化してコストを下げたい
  • 量販店・PB事業者:プライベートブランドの生産拠点が欲しい
  • 同業のOEM工場:受けられる工程と品目を増やしたい
  • 異業種からの参入:許可と設備をまとめて手に入れたい

PB食品メーカーやプライベートブランドの製造会社は、「売り先を持つ会社」から見て買う価値がはっきりしているのが特徴です。

取引先集中という最大の論点

買い手は「1社抜けたあと」で見る

食品受託製造の会社は、売上の過半を1社が占めていることが珍しくありません。実績がいくら良くても、その1社が抜けたときの姿で評価されます

OEMの販売先依存は、この業態の構造そのものです。隠すのではなく、依存を認めたうえで手を打った記録を示すほうが説明になります。

OEM依存をどう解くか顧客構成が評価に与える影響を参照してください。

3年前から動く

  1. 既存の取引先のうち、2番手・3番手を伸ばす
  2. 新しい取引先を1〜2社増やす
  3. 自社品を小さく立ち上げる

いきなり自社ブランドに行くと、売る力がないまま在庫を抱えます。順番が大事です

チェンジオブコントロール条項

OEM契約には、支配権が変わったときに相手方が解除できる、あるいは事前の承諾を要する条項が入っていることがあります。いわゆるチェンジオブコントロール条項です。

これがあると、株式譲渡でも取引先の同意が必要になります。同意が得られない前提で価格が決まることもあります。

相手を探す前に、契約書を全部読んでください。ここは飛ばせません。契約の棚卸し取引先の同意が必要になる場面で扱っています。

レシピと権利の切り分け

受託製造をしていると、相手先が権利を持つ配合が社内にあります。自社のものと預かりものを分けておかないと、何を譲れるのかが曖昧になります。

レシピの権利をどう守るか知的財産の棚卸しを参照してください。

食品受託製造の企業価値をどう上げるか

集中を解く以外に、相手が替えられない工場になるという道があります。

  • 特殊な設備を持つ(他社では作れない)
  • 小ロット・多品種に対応できる
  • 認証を取り、相手の監査負担を減らす
  • 開発から関われる

「うちは○○を作っています」ではなく「うちはこの工程ができます」と説明できると、引き合いの幅が変わります。

認証の位置づけはJFS規格とフードディフェンスで。

OEM先の変更が起きたとき

譲渡の話が進んでいる最中に、OEM先から取引の見直しを告げられることがあります。売上構成が変われば、価格の前提も変わります

変動が予想されるなら、アーンアウト(譲渡後の業績に応じて代金の一部を後払いする仕組み)で調整する方法もあります。アーンアウトの使いどころを参照してください。

OEM工場の売却で先にやること

  1. 契約書を全部読み、支配権変更の条項を確認する
  2. 取引先別の売上と利益を3期分そろえる
  3. 自社品とOEM品の損益を分ける
  4. 工程でできることを1枚にまとめる

承継の視点はOEM・受託製造業の事業承継で扱っています。

食品OEMで後継者不在のとき

食品OEMの後継者不在は、他の業態より切実になりやすい。取引先が「この工場だから発注している」のではなく「この社長だから発注している」場合があるからです。

社長が窓口を一人で持っていると、代が替わった時点で発注が止まるおそれがあります。承継を考え始めたら、まず取引先ごとの窓口を社長以外にも作ってください。それだけで譲れる相手の幅が変わります。

※ 許可の区分や衛生管理・表示の求められ方は、業種や取扱品目、自治体の運用によって変わります。取引条件や契約の内容も個別に異なります。実際の判断にあたっては、所管の保健所や専門家にご相談ください。