いちばん多いつまずき方
兄弟承継でよく見るのは、次の形です。株式を50%ずつ均等に分け、兄が代表、弟が専務。仲が良いうちは問題ありません。
しかし数年後、設備投資や価格戦略で意見が割れます。50%ずつでは決まりません。株主総会でも取締役会でも過半数が取れないため、会社が動かなくなります。そして意見の対立は、次第に感情の対立に変わっていきます。
この状態は、後から解くのが非常に難しくなります。だからこそ、始める前に決めることが重要です。
決めること1:代表を誰にするか
共同代表は避けてください。責任の所在が曖昧になり、従業員も取引先も迷います。代表は1人と決め、もう1人は明確な役割(製造統括、営業統括など)を持ちます。
食品製造業では、製造と営業で分担するケースが多く見られます。この分け方自体は機能しますが、最終決定権が誰にあるかは別途決めておく必要があります。
決めること2:株式の持分
均等分割は避けるのが原則です。代表になる側に、少なくとも過半数を持たせます。可能であれば3分の2以上が望ましく、定款変更や重要な決議も単独でできる形になります。
「不公平ではないか」という懸念は当然です。ここは会社の株式と、それ以外の財産を分けて考えることで調整します。株を多く持つ側には、他の財産を少なくする。この設計は遺言や生前贈与と一体で組む必要があります。遺言書の作り方と遺留分への配慮をご覧ください。
決めること3:意見が割れたときの決め方
持分で差をつけても、日常の意思決定を多数決でやるわけにはいきません。次のような取り決めを、先に文書にしておきます。
- 金額◯円以上の投資は、二人が合意しないと実行しない
- 人事(役員・管理職)は代表が決める
- 製造に関する日常判断は製造統括、営業条件は営業統括が決める
- 合意できない場合は、外部の顧問(税理士・コンサル等)を交えて協議する
この「決められないときの決め方」があるかどうかが、後の分かれ目になります。
決めること4:報酬の考え方
役員報酬を巡る不満は、兄弟間で必ず出ます。「自分のほうが働いている」という感覚は、どちらにもあるものです。
役職と責任に応じた差をつける、あるいは同額にする。どちらでも構いませんが、決め方のルールを先に共有することが大切です。業績連動を入れる場合は、その指標も決めておきます。
決めること5:将来の出口
いちばん忘れられがちで、いちばん効くのがここです。将来、片方が会社を離れることになったら、その株式をどうするか。
何も決めていないと、離れた側が株を持ったまま外部の株主になります。さらにその人に相続が発生すると、株はその配偶者や子どもへ渡ります。会社と関係のない人が株主になるという事態が起きます。
対策として、次のような取り決めを株主間契約や定款で入れておきます。
- 会社を離れる場合は、株式を会社または他方に譲渡する
- その際の価格の算定方法をあらかじめ定めておく
- 相続が発生した場合の売渡請求について定款に定める
分散した株式を後からまとめる大変さは分散した株式をまとめるで扱っています。事前に手当てするほうが、はるかに楽です。
決めるのは、仲が良いうちに
これらの取り決めは、関係が良好なうちにしかできません。揉め始めてから「株の比率を変えよう」と言っても、話は通りません。
先代が健在なうちに、先代の主導で決めてしまうのがいちばん円滑です。家族会議の開き方を参考に、場を設けてください。