のれんとは何か
M&Aの文脈では、純資産を超えて支払われる部分を指します。ブランド、技術、取引先との関係、人材、立地。帳簿には載らないが価値のあるものが、ここに含まれます。
ただし、実務上ののれんは「これらを個別に評価した合計」ではありません。調整後利益の数年分という形で、まとめて算定されるのが一般的です。3つの評価方法の使い分けをご覧ください。
つまり、ブランドは「利益として表れて初めて」評価される
ここが最も重要な点です。どれほど歴史があり、地域で知られていても、それが利益に結びついていなければ数字にはなりません。
逆に言えば、次のような形で利益に表れていれば、それはのれんとして評価されます。
- 同種の商品より高い単価で売れている
- 粗利率が業界平均より高い
- 指名で受注が来る(営業コストが低い)
- 値上げを受け入れてもらえる
- 取引が長期にわたり継続している
評価されやすいブランドの条件
1. 自社ブランドで売れている
PB・OEM中心の会社では、ブランド価値は取引先のものです。自社ブランドがあり、その粗利率が高ければ、それは明確な価値になります。自社ブランドの評価をご覧ください。
2. 権利が整理されている
商標が登録されており、会社名義になっていること。先代個人の名義のままだと、譲渡の対象に含まれず、別途の移転が必要になります。商標・レシピ・パッケージの権利整理を確認してください。
3. 再現できる形になっている
製法が特定の職人の頭の中にしかない場合、その人が抜ければ価値も消えます。文書化され、複数人が作れる状態になっていることが、価値の前提です。職人の技をどう引き継ぐかを参照してください。
レシピ・製法の評価
レシピそのものに独立した価格が付くことは、中小企業のM&Aではあまりありません。評価されるのは、そのレシピが生み出している利益です。
ただし、次の場合は個別に評価されることがあります。
- 特許として登録されている製法
- 買い手が自社では作れない技術(設備と組み合わさったノウハウ)
- 他社に技術供与している(ライセンス収入がある)
守り方と示し方はレシピ・製法の権利をどう守り、どう評価してもらうかにまとめました。
評価されにくいケース
1. 知名度はあるが利益が出ていない
地域で有名だが、価格競争に巻き込まれて粗利が薄い。この場合、知名度は評価に反映されにくくなります。
ただし、買い手が「自社なら利益化できる」と考えるなら話は別です。販路を持つ企業が、ブランドだけを目当てに買うケースはあります。
2. 経営者個人に紐づいている
社長の人柄と人脈で取引が続いている場合、社長が抜けたら続くか分かりません。会社の価値ではなく個人の価値と見られます。
3. 権利関係が曖昧
商標が未登録、類似商標が他社にある、パッケージデザインの著作権の所在が不明。これらは減点要因にもなります。
のれんを高めるには
結局のところ、粗利率を上げることに集約されます。
- 自社ブランドの比率を上げる
- 価格改定を実現する
- 指名で来る受注を増やす
- 権利を整理し、会社名義にする
- 製法を文書化し、複数人が作れる状態にする
1〜3は時間がかかりますが、4と5は数か月でできます。売る前の1年でできる企業価値の上げ方を参照してください。
買い手に伝えるときの資料
- 自社ブランド商品の売上と粗利率(PB・OEMとの比較)
- 主力商品の単価推移と、値上げの実績
- 商標の登録状況(登録番号・名義・区分)
- 受賞歴・メディア掲載(企業概要書の段階で)
- レシピ・製法の管理状況
数字で示せるものから並べるのが効果的です。思いや歴史は、その後で伝わります。